- 著者
-
福澤 めぐみ
植竹 勝治
田中 智夫
- 出版者
- 日本家畜管理学会
- 雑誌
- 日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.2, pp.61-68, 2010
- 参考文献数
- 8
訓練は、トレーナーから提示されたコマンドに対するイヌの反応と正しい行動で構成されている。本研究では、訓練におけるトレーナーのハンドシグナルやボディランゲージ、ならびにトレーナーとイヌとの距離がイヌの反応に与える影響について調査した。供試犬は、17から96ヵ月齢の計7頭(メス5頭、オス2頭)で、2つのコマンド("sit", "come")が女性トレーナーによって訓練された。トレーナーはイヌと向かい合った状態を維持して、イヌに対する自身の立ち位置を70cm(trial 1)から420cm(trial 6)へと段階的に変化させながら、コマンドの訓練を行なった。また、ハンドシグナル等の影響も調査するために、3つのトレーニングシリーズに分けその提示条件を変化(Training AとC,ハンドシグナルやボディランゲージあり:Training B,ハンドシグナルやボディランゲージなし)させた。各トレーニングシリーズはtrial 1から6で構成されていた。各コマンドのトレーニングセッション中におけるイヌの正しい反応率を記録し、85%の正しい反応が記録された時点でそのコマンドを学習したと判断した。1セッションでは、2つのコマンドをランダムに20回ずつ、計40回コマンドを提示した。コマンド"sit"において、各トレーニングシリーズにおける学習成立までのセッション数に有意な差(ANOVA:F[2,125]=11.02, P<0.001)が認められた。またTraining Aにおいて、Trial 1(トレーナーとイヌの距離は70cm)から2(トレーナーとイヌの距離は140cm)の移行時にエラー数が有意に増加した(W=27, P=0.02)。コマンドを提示するトレーナーとイヌの距離やハンドシグナル等の提示条件がイヌのコマンド学習に与える影響は、コマンドの特徴によって差が認められる。最初のトライアルは"sit"よりも"come"コマンドにおいて重要であることが示唆された。このことは、イヌがそのコマンドに反応した後のトレーナーとイヌの距離の違いに影響を受けているのではないかと考えられる。