著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.183-192, 2006

地震が起こる数日前から地震発生地域を中心に動物の異常行動が見られることがある。この行動を前兆行動と呼び,1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震を始めとする大地震では,「地震の前夜,鳥が一晩中鳴いていた」,「ネズミがいなくなった」,「地震数日前よりいなくなっていた猫が地震後に帰ってきた」など多数報告されている。特に犬において,地震前に見られる行動を挙げてみると,「普段吠えることのない犬が吠え続ける(遠吠えする)」,「飼い主を突然咬む」,「餌を食べなくなる」,「体を震わせ怯える」,「しきりに外へ出たがる」など様々である。前兆行動が起こる原因としては,電磁波電場,帯電エアロゾル噴出,地震発光などの地震前兆現象によるためであり,どの現象が原因であってもそれぞれの現象に曝露されることが,動物にとってストレスとなり異常な行動で表わされると考えられる。つまり,前兆行動は動物が物理的な地震前兆現象を感じ取って起こす行動である。しかし,全ての動物が地震を感知し,前兆行動を示す訳ではない。兵庫県南部地震では犬の前兆行動が調査個体の約20%に見られたが,この犬たちは他の犬たちと比較したとき,ストレス感受あるいは行動発現に関する何かに違いが見られると考えられる。そこで本研究は,地震感知できる犬とできない犬との違いが,ストレス反応の最上位ホルモンであるCRHに見られる可能性があると考え,CRH遺伝子多型の存在を検証することを目的とした。しかし,33犬種37頭を解析した結果CRH遺伝子多型は検出されなかった。地震感知遺伝子を持つ犬を発見するためには,地震を感知できる犬が持つ特異性の発見が必要である。よって今後はCRH遺伝子以外にもグルココルチコイドを始めとするストレス因子での遺伝子学的解析を行なうことが有効である。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.110-123, 2007

宏観異常現象というのは,「特別な機器を利用せずに観察できる異常現象」である。この言葉は地震前の前兆として起こる様々な異常現象に対して使われ,古今東西を問わず,様々な形で世の中に知れ渡っている現象である。兵庫県南部地震以降,この異常現象は注目され様々な形で取り上げられている。特に,動物の行動異常に関する情報は多く,この異常現象の情報をうまく収集することができれば,短期予測が可能なのではないか,と考えられる。そのことから,麻布大学動物人間関係学研究室(現:介在動物学研究室)では,NTTドコモの第三次携帯端末FOMAを利用して,イヌとネコの飼い主から普段見受けられない異常行動を発現したときにその行動を写した動画を同研究室に送信し,その行動は地震前兆前の異常なのかどうかを客観的に分析し,異常行動を起こすメカニズムや異常行動に関するデータを収集する,というシステムを始動している。この研究は,このFOMAを利用したモニターの説明を受けた人々が,宏観異常現象(特に動物の異常行動)や,このようなシステムに関してどのように受け止めたのかなどを,アンケート形式で答えていただいて,システムや地震,宏観異常現象の研究についてどのように考えているのかを分析していくものである。アンケートの結果から,ほとんどの人が大学の研究内容について知る機会がないとの回答であった。また,アンケートに回答していただいた方のうち,動物を飼っている人が過半数であるにもかかわらず,モニター参加をしてもよいと答えていただいた人は17%ほどしかいなかった。自由回答の欄では宏観現象について興味があると答えていた人でも実際には自ら「モニターになりたい」と答えていた人はほとんどいなかった。臨震情報を作り上げる上で,動物の異常行動の小さな情報を積み上げていくことは,とても重要なことである。臨震情報によって,多くの命を救うことができることが,被害想定でもしっかりと予測されている。地震の被害を最小におさえるために,各専門家や企業,個人が自分には何ができるのかをしっかりと考えて行動し,「差し迫る危険」に対してどう対処すべきなのかをじっくり考える機会を待つべきである。このシステムに参加することにより,日ごろから地震に対する防災意識が芽生えるとともに,ペットとのよりよい関係を築くことができれば,よりよいペットとの住空間を作り上げることができると考える。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂 大谷 伸代
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17/18, pp.167-172, 2009-03-31

1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生した。神戸市など震源地周辺で飼育されていたイヌのうち約20%が地震発生前に異常行動を示したことが地震発生後の調査によって報告された。本研究では,イヌの示した異常行動の原因は地震前に発生する電磁波を感知したためではないかとの仮説のもと,人工的に発生させた電磁波をイヌに照射し,照射後の行動および神経内分泌学的な変化を観察した。
著者
太田 光明 塩田 邦郎 政岡 俊夫 和久井 信 田中 智夫 植竹 勝治
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

地震前の動物の異常行動は、電磁波など地震前兆を感知した動物のストレス反応の一つであろうとの仮説のもとに研究を重ねてきた。しかし、ラット、ビーグル犬など「実験動物」に対して電磁波照射を繰り返しても、明確な異常行動は見られない。一方、ヒトと日常的に生活している「家庭犬」を用いたところ、6頭のうち、少なくとも2頭に顕著な異常行動を認めた。すなわち、1)マウスやラットのように「実験動物」として用いられる犬種は、ほとんどビーグル犬である。個体による違いを含め、犬の特性のいくつかを喪失しているとしても不思議はない。人による改良が進めば進むほど、電磁波異常など非日常的な物理現象を感じる必要性もなくなる。実際、本研究において電磁波の影響は見られなかった。この研究成果を遺伝子解析に応用した。2)遺伝子解析を進めるためには、プライマーが必要であり、犬遺伝子では、CRH、DRD2、DRD4など極めて少数しか判明していない。本研究では、はじめにCRH遺伝子の多型について検討した。しかし、33犬種37頭を解析した結果、遺伝子多型は検出されなかった。つまり、CRH遺伝子が「地震感知遺伝子」の可能性は低い。一方、兵庫県南部地震の直後、一般市民から集められた前兆情報のなかには、古来からの地震前兆情報であると考えられてきた夥しい数の報告が含まれていた。特に、動物の前兆的異常行動に顕著であった。また、阪神・淡路大震災の前兆情報として、犬で約20%、猫で約30%が異常行動を示したという。こうしたことから、3)本研究では、富士通株式会社ならびに株式会社NTTドコモ関西との産学協同体制でこの「動物の異常行動」の情報収集システムの構築に取組み、プロトタイプのシステムを完成させた。モニター登録者が暫時増加し、平成16年3月1日現在で、50人を数えた。
著者
佐藤 亜紀 中野 庸子 田頭 美春 加藤 有一 大谷 優子 太田 光明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.457, 2010 (Released:2010-12-01)

<はじめに> 近年、検査室の役割として、診療現場においてそれぞれの専門性を発揮し、より診療効果、治療成績に貢献できる検査技師の【チーム医療への参加】が求められている。当検査科でもこれまで各診療のニーズに応え、 循環器部門、整形外科・脳外科の術中モニタリング、さらにNST、ICT、糖尿病教室など、多くの部門に参画してきた。当院の新生児センター(以下NICU)は、平均入院患者数が常時定床の1.5倍と極めて高い診療需要に対し、スタッフは日々多忙な業務に追われている。このいつ破綻してもおかしくない状況を改善していくためには、医師・看護師の業務軽減が主たる課題の一つであった。そんな折、総合周産期医療センターの提案がなされ、小児科医から「検体検査測定」の充実が望まれた。また、業務軽減の対策として専任技師派遣の要望が出された。そこで検査科としても全面的な協力をする時期であると判断し「業務の効率化」と「仕事の合理化」を推し進め、小児科部門と検査業務見直しを行い、平成20年5月よりNICUへ専任検査技師を常駐させることとした。その勤務状況と効果、今後の展望について報告する。 <勤務状況>平成22年5月現在 【検体検査】検体測定(血液ガス分析、血清総ビリルビン、CRP) 【生理検査】脳波検査、A-ABR(ABRスクリーニング) 【管理業務】各検査機器メンテナンス、精度管理、検体検査データ入力及び成績管理 以上の検査業務を技師1名で行っている。 <効果> 専任技師の常駐前と比べ多くの改善がみられ、各職種がそれぞれの専門分野に集中できるようになった。改善点として、1)迅速な検査実施により診療の質が向上、2)午前の医師診療量軽減、3)機器トラブル時などのストレス軽減、4)検査領域への疑問を迅速かつ容易に解消できる、5)脳波、A・ABRのタイミングを調整しやすくなった、6)当日緊急の検査に柔軟に対応できるなどが挙げられる。 また検査科と病棟間の交流増進という意見が医師・看護師から得られた。技師も臨床の状況を把握しながら効率よく検査業務をこなすことができるようになり、相互の連携強化となった。 <まとめ> 平成18年4月に小児科より専任技師派遣の要望が出され、技師の育成及び業務の効率化、技師確保に25ヶ月(2年1ヶ月)を要した。現在の検査業務に加え、休日対応、新たな検査項目導入、検査情報の提供、看護師や研修医への勉強会開催等、臨床側からの要望や期待はまだ大きい状況にある。現在専任技師業務の土台は完成され、今後は検査科が目的意識を明確にして、当院が目指す総合周産期医療の一翼を担うよう努力していきたいと考えている。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.15, pp.110-123, 2008-03-31

宏観異常現象というのは,「特別な機器を利用せずに観察できる異常現象」である。この言葉は地震前の前兆として起こる様々な異常現象に対して使われ,古今東西を問わず,様々な形で世の中に知れ渡っている現象である。兵庫県南部地震以降,この異常現象は注目され様々な形で取り上げられている。特に,動物の行動異常に関する情報は多く,この異常現象の情報をうまく収集することができれば,短期予測が可能なのではないか,と考えられる。そのことから,麻布大学動物人間関係学研究室(現:介在動物学研究室)では,NTTドコモの第三次携帯端末FOMAを利用して,イヌとネコの飼い主から普段見受けられない異常行動を発現したときにその行動を写した動画を同研究室に送信し,その行動は地震前兆前の異常なのかどうかを客観的に分析し,異常行動を起こすメカニズムや異常行動に関するデータを収集する,というシステムを始動している。この研究は,このFOMAを利用したモニターの説明を受けた人々が,宏観異常現象(特に動物の異常行動)や,このようなシステムに関してどのように受け止めたのかなどを,アンケート形式で答えていただいて,システムや地震,宏観異常現象の研究についてどのように考えているのかを分析していくものである。アンケートの結果から,ほとんどの人が大学の研究内容について知る機会がないとの回答であった。また,アンケートに回答していただいた方のうち,動物を飼っている人が過半数であるにもかかわらず,モニター参加をしてもよいと答えていただいた人は17%ほどしかいなかった。自由回答の欄では宏観現象について興味があると答えていた人でも実際には自ら「モニターになりたい」と答えていた人はほとんどいなかった。臨震情報を作り上げる上で,動物の異常行動の小さな情報を積み上げていくことは,とても重要なことである。臨震情報によって,多くの命を救うことができることが,被害想定でもしっかりと予測されている。地震の被害を最小におさえるために,各専門家や企業,個人が自分には何ができるのかをしっかりと考えて行動し,「差し迫る危険」に対してどう対処すべきなのかをじっくり考える機会を待つべきである。このシステムに参加することにより,日ごろから地震に対する防災意識が芽生えるとともに,ペットとのよりよい関係を築くことができれば,よりよいペットとの住空間を作り上げることができると考える。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂 大谷 伸代
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.17, pp.167-172, 2009-03-31

1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生した。神戸市など震源地周辺で飼育されていたイヌのうち約20%が地震発生前に異常行動を示したことが地震発生後の調査によって報告された。本研究では,イヌの示した異常行動の原因は地震前に発生する電磁波を感知したためではないかとの仮説のもと,人工的に発生させた電磁波をイヌに照射し,照射後の行動および神経内分泌学的な変化を観察した。
著者
植竹 勝治 大塚 野奈 長田 佐知子 金田 京子 宮本 さとみ 堀井 隆行 福澤 めぐみ 江口 祐輔 太田 光明 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.192-198, 2007
参考文献数
20

動物介在活動(AAA)に飼い主と共に参加する飼い犬(Canis familiaris)のストレス反応を、尿中カテコールアミン濃度を測定することにより調べた。イヌの覚醒状態に影響すると考えられる次の2要因について検討した: 特別養護老人ホームでのAAAへの参加日数(現地調査1)および対面式での活動時における老人の座席配置(車座と並列)(現地調査2)。現地調査1では、新規参加犬8頭の活動前から活動後にかけた尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量が、参加日数が経過するにつれて直線的に低下した(尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量に対する参加日数(毎月1回の参加で計9日間)の回帰係数-1.213,R^2=050,P<0.05)。その一方で、活動中の各セッションにおいて、姿勢や行動を相対的に長く抑制された場合には、アドレナリン(長い抑制15.03±9.72ng/mL vs.短い抑制4.53±2.94ng/mL)とノルアドレナリン(長い抑制12.26±8.80ng/mL vs.短い抑制3.62±3.62ng/mL)の濃度上昇は、相対的に短い抑制の場合に比べていずれも有意に大きかった(共にP<0.05)。現地調査2では、尿中カテコールアミン濃度の上昇は、老人の座席配置、すなわち車座(12頭,アドレナリン10.73±9.77ng/mL;ノルアドレナリン7.13±8.01ng/mL)と並列(11頭,アドレナリン13.37±10.63ng/mL;ノルアドレナリン5.70±5.19ng/mL)間で差がみられなかった。これらの結果から、月1回の参加でも、飼い主と一緒であれば、特別養護老人ホームという新規な環境とAAAの雰囲気に、イヌは容易に順応することができ、また見知らぬ老人に囲まれたとしても、特に緊張を感じていないことが示唆された。
著者
田中 智夫 太田 光明 植竹 勝治 江口 祐輔 タナカ トシオ オオタ ミツアキ ウエタケ カツジ エグチ ユウスケ Toshio Tanaka Mitsuaki Ota Katsuji Uetake Yusuke Eguchi
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University
巻号頁・発行日
vol.11/12, pp.126-129, 2005 (Released:2012-09-12)

動物介在療法AATや動物介在活動AAAにに参加するイヌには,何らかのストレスが負荷されていることが知られていることから,本研究では,AAAにおける活動形態の違い及び活動経験に伴う慣れと,イヌのストレスとの関係について調査することを目的としたが,初年度はまず1つの施設において,慣れについて検討した。都内の特別養護老人ホームで活動するボランティア団体を調査対象とし,1年間にわたり毎月1回の活動時におけるイヌの行動と,活動前後の尿中カテコールアミン濃度を測定した。その結果,A及びNAの活動前後の濃度差は,活動回数を重ねるごとに直線的に有意に減少し,介在活動に参加するイヌは,活動への参加初期には少なからずストレスを感じていることがうかがわれた。また,介在活動に参加するイヌのストレスは,ヒトとの直接的な触れ合いというよりは,高齢者施設などの新奇刺激のほうが大きく影響しており,ハンドラーによる日常と異なる場面での行動・姿勢の制御も大きく関わってきていることが示唆された。2年目には,活動形態の異なる施設(高齢者が円状に位置し,その中を活動スペースとする「イヌが囲まれる」方法と,高齢者が向かい合って2列に並び,その間を活動スペースとする「イヌが囲まれない」方法)において,同様の活動を行うボランティア団体を調査対象として,原則として1年間毎月1回の調査を行った。いずれの施設においても,供試犬の尿中カテコールアミン濃度は,活動日の朝に比べて活動後に有意に上昇した。しかし,活動形態の違いによる差は認められず,高齢者の並び方といった要因は,「触れられる」,「行動を制御される」などの負荷がかけられる中では,大きな影響は認められなかった。各行動形の生起頻度や時間にも,活動形態による違いは認められなかった。なお,イヌの体格によって,ふれあい活動の内容や状況が異なることから,今後,犬種や活動内容とストレス強度との関係についても検討が必要であろう。 Stress states of dogs under an animal-assisted activity (AAA) in a nursing home were assessed by observing the dogs' behavior and urinary catecholamine concentration. In the first year, data collection was done every month in order to study the effects of habituation to AAA on the stress level changes of dogs. The results showed that even the dogs with AAA experience might feel some degree of psychological stress during AAA especially in the novel environment. Behavior of dogs was not affected by the AAA experience. In the second year, the similar program was conducted in the other three nursing homes, and the effects of contents of AAA were studied. In the two homes, the elder people sat in a circle around the dogs and their owners (C). In another home, the elder people sat in a double rank (R). Twenty-four dogs aged 2.3-7.7 years were used in total. Urine was gathered on the previous day of AAA (T1), in the morning of AAA (T2) and just after AAA (T3). Catecholamine concentrations of T1 and T2 urine were significantly different (p<0.01). Therefore, T2 urine was used as a baseline, and the difference of catecholamine concentrations between T2 and T3 urine was compared between C and R. Adrenaline (A) and noradrenaline (NA) concentrations of T3 urine were significantly higher than those of T2 urine in both C and R conditions (all : p<0.05). Dopamine concentrations of T3 and T2 urine were almost the same. These results showed that the dogs might feel some degree of psychological stress during AAA program. But the contents of AAA especially the position of elder people did not affect the stress level of the dogs.
著者
田中 智夫 太田 光明
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.230-234, 2002

平成14年4月より行っている動物介在活動・療法(AAT/AAA)教育プログラムは,行動学者,人と動物の関係学の研究者,動物福祉の研究者,獣医師,心理学者,精神科医,心理療法士,ソーシャルワーカー,教育学者らが集まって,AAT/AAAに関わる人材を育てるための継続的な教育カリキュラムで,2年間で修了する。このプログラムは,Dennis C.Turner博士(institute for applied Ethology and Animal Psychology所長,スイス,本学客員教授)によって開発されたもので, 1998年に行われたプラハでのIAHAIO(international Association of Human and Animal Interaction Organi-zations)国際会議で発表され,1999年の4月に第1期生をスイスで迎え,現在はアメリカはじめ国際的に認知されている。本学では,Turner博士を含む欧米の教育・研究者6名と本学教員からなる講師陣を構成し,獣医学部ならびに獣医学研究科の研究教育カリキュラムヘの導入を図った。講義(英語)は,心理学,人と動物の関係学,人と動物に関する行動学,動物の心理学,AAT/AAAに携わる動物の適切なケア,AAT/AAAに関する倫理や危機管理,患者自身の安全管理,人獣共通感染症,動物のトレーニング方法,産業動物や野生動物を用いた作業療法など多岐にわたる。また,精神科病院や刑務所(アメリカ,カナダなど)の見学,学校への訪問など学外実習も含まれている。2年間の間に,課題レポート(英語)の提出があり,また最終試験は口答試問(英語)によってなされる。このプログラムを修了することによって得た認定書は,日本はもちろん,ヨーロッパ各国および北米でも通用するものであり,2004年3月に修了する第一期生への期待は極めて大きい。この4月より,第二期生に対するプログラムが開始された。