- 著者
-
福田 亜希子
- 出版者
- 芝浦工業大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
連続時間および離散時間可積分系がもつ著しい性質に由来する固有値計算等の優れた数値計算アルゴリズム:「可積分アルゴリズム」がこれまでに数多く報告されている。本研究では,超離散可積分系の数理構造に着目した新たな固有値計算アルゴリズムの導出を試みた。qd法の漸化式は離散戸田方程式と一致することが知られており,それを超離散化することで箱玉系の運動方程式に対応する超離散戸田方程式が得られる。本研究ではまず,超離散戸田方程式に関連するMin-Plus代数上の3重対角行列に着目し,トロピカル行列式を用いたMin-Plus代数上の固有多項式の根と超離散戸田方程式の変数との対応を明らかにした。また,3重対角行列を隣接行列とする重み付き有向グラフにおける平均閉路重みと固有多項式の根の関係についても明らかにした。さらに,超離散戸田方程式の解の挙動を調べることで,超離散戸田方程式の時間発展が,Min-Plus代数上の3重対角行列の固有値を計算していることが明らかとなった。このことは,グラフの観点からは,有向グラフにおける最小平均閉路重みを求めていることに対応する。一方,超離散ロトカ・ボルテラ系に対応するMin-Plus代数上の固有値計算アルゴリズムについても検討し,対称な3重対角行列を対象とする固有値計算アルゴリズムが得られた。付随して,超離散戸田方程式,超離散qd型ロトカ・ボルテラ系,超離散ロトカ・ボルテラ系を結ぶ変数変換が得られ,超離散qd型ロトカ・ボルテラ系が,従来知られていた箱玉系のラグランジュ表現に対する別表現を与えることを示した。