著者
福田 耕佑
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

今年度の研究では、現代ギリシアを代表する作家ニコス・カザンザキスの文学において、第一次世界大戦前後に難民としてギリシアに流入したポントス人表象を主に取り上げた。この研究において、ポントス人とカザンザキスとの接触がカザンザキスの「ギリシア性」探求におけるモチーフのきっかけを与えたこと、そして彼の主著群を成す『その男ゾルバ』と『キリストは再び十字架に』、そして自伝的小説『エル・グレコへの報告』において「ギリシア性」を表象する際の中心的な登場人物として取り上げられていることを明らかにした。ここで挙げらた研究はギリシアの新聞であるPontosnewsにおいて取り上げられる等、国外においても一定の評価を得たと言えよう(http://www.pontos-news.gr/article/168983/o-iaponas-poy-agapise-ton-kazantzaki-kai-vrike-toys-pontioys 最終閲覧日;1917年9月13日)また、1920年までの、カザンザキスが政治的にナショナリストとして中央で活動した時期の作品について分析し、イオン・ドラグミス等の先行する作家や「メガリ・イデア」等の政治思想から大きな影響を受けていたことを明らかにし、ここでの成果を主に、「福田耕佑、二十世紀初頭のカザンザキスの政治活動とナショナリズム : ディモティキ運動とドラグミスからの影響、プロピレアー日本ギリシア語ギリシア文学会、(23) 12-30、2017年」として論文化した。
著者
福田 耕佑
出版者
東方キリスト教圏研究会
雑誌
東方キリスト教世界研究 = Journal for area studies on Eastern Christianity (ISSN:24321338)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-34, 2019-05-01

本稿はニコス・カザンザキス (1883-1957) がロシア期 (1925-1930) に執筆した諸作品を分析し,該当期に見られる彼の「東方」に関する思想を明らかにする。この「東方」に関する分析の中で,カザンザキスがロシアの起源を同じく「東方」に属しているギリシア・ビザンツと密接に関係づけながら描いたこと,そしてカザンザキスの理解におけるロシアの「東方性」として哲学的な側面と政治的な側面の二つが挙げられることを指摘する。加えて,カザンザキスはこのロシア期においても,思想的な主著『禁欲』の思想を根底として執筆活動を行っており,またロシア文学史の探求から彼の「ギリシア性」における重要な役割を果たすことになる「民衆」 (ο λαός) と「大地」 (η γη) の主要な概念を得たことを明らかにする。
著者
福田 耕佑
出版者
東方キリスト教圏研究会
雑誌
東方キリスト教世界研究 = Journal for area studies on Eastern Christianity (ISSN:24321338)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-45, 2017-05-01

Cet article s'occupe de l'idéé de théologico-métaphysique de Nikos Kazantzaki (1883-1957) et analyse son oeuvre « Ascèse » avec pour objectif de démontrer que son concept le plus important 'la Salvation de Dieu' est dérivée de la théologie orthodoxe. D'abord nous exposerons une courte biographie de Kazantzaki ainsi que le contexte historique en Grèce à cette période. Ensuite, après avoir vérifié les études pour Kazantzaki, nous analyserons « Ascèse » en nous aidant de ses autres oeuvres et comparerons l'idéé kazantzakienne avec les trois notions de la théologie orthodoxe, 'Synergie' et 'Ascension' et 'Liberté'. Cela mettra clairement en exergue la relation entre Kazantzaki , la théologie orthodoxe ainsi que le motif de la 'Salvation de Dieu'.