著者
福留 惟行 駄場中 研 横田 啓一郎 石田 信子 上村 直 並川 努 井口 みつこ 戸井 慎 花﨑 和弘
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.703-711, 2019-12-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
41

症例は59歳の女性で,神経性食思不振症に対して精神科入院中,経鼻胃管による栄養投与を受けていた.胃管挿入後8日目に生じた腹痛に対して撮影したCTで胃壁全体の浮腫,胃壁内気腫と門脈ガス血症(hepatic portal venous gas;以下,HPVGと略記),縦隔気腫,皮下気腫を認めた.上部消化管内視鏡検査で,胃体上部大彎に限局性粘膜壊死を認めた.縦隔気腫,皮下気腫に関しては原因の特定はできないものの気腫性胃炎からのHPVGの診断で胃全摘術を施行した.BMI 10 kg/m2と低栄養状態であったが,術後経過は良好であった.本症例は,胃管留置による胃粘膜傷害からの感染が原因で気腫性胃炎を発症,それに伴いHPVGを生じ,同時に低栄養状態による組織の脆弱性を背景として,胃管挿入の刺激で気道内圧の上昇,肺胞の破裂が起こり,縦隔気腫と皮下気腫が発生したと考えられた.このような二つの病態が同時に起こったと推測されるまれな症例を経験したため報告する.
著者
味村 俊樹 福留 惟行
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-31, 2012-04-25 (Released:2017-05-23)

【目的】便秘症のうち骨盤底筋協調運動障害に起因する便排出障害に対しては,バイオフィードバック(以下,BF)療法が有効とされ,本学会誌38号1巻において,この病態に対する直腸バルーン排出訓練単独によるBF療法の有用性を報告した.それ以降,肛門筋電計を用いた真の意味でのBF療法を併用することによって更に良好な成績を得たので報告する.【方法】2010年8月〜2011年5月に,骨盤底筋協調運動障害に起因する便排出障害型便秘症に対して直腸バルーン排出訓練に加えて肛門筋電計を用いてBF療法を施行した19例を対象に,その臨床背景と治療効果を検討した.治療効果は,便秘症状をmodified Constipation Scoring System (mCSS : 症状なしO点〜最重症26点)で,生活の質をPatient Assessment of Constipation Quality of Life Questionnaire (PAC-QOL : 最善1点〜最悪5点)で評価するとともに,BF療法における怒責時の肛門筋電計活動度の変化も評価した.また,受けた治療に対する満足度を5段階で評価した.【結果】19例の年齢中央値は73歳(範囲:62〜85歳),男性13例で,BFセッション回数は中央値3回(1〜5)であった.4例は初回のBF療法後に来院しなかったため,BF療法後に治療効果を評価出来たのは15例であった.mCSS中央値(範囲)は,初診時12点(6〜18)からBF療法直前10点(4〜14)と有意に改善し(P=0.0005),BF療法後には5点(3〜12)と更に有意に改善した(P=0.004).PAC-QOLも,初診時3.3点(1.7〜4.6)から2.7点(1.7〜3.8)と有意に改善し(P=0.009),BF療法後には1.5点(1.0〜2.7)と更に有意に改善した(P<0.0001).BF療法における怒責時の肛門筋電計活動度を評価出来た10例では,BF療法初回の中央値9μVが,最終回には4μVと有意に低下した(p =0.0156).BF療法後に評価出来た15例での治療に対する満足度は,「非常に満足」7例,「かなり満足」4例,「満足でも不満でもない」2例,「あまり満足していない」1例,「全く満足していない」O例,無回答1例で,「満足」と回答したのは11例(73%)であった.【結論】骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害型便秘症に対するBF療法において,直腸バルーン排出訓練に加えて肛門筋電計を使用すると治療成績が向上し,便秘症状も便秘特異的な生活の質も有意に改善した.