著者
秋山 信彦 小笠原 義光
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.577-584, 1994-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
29
被引用文献数
3

シロウオLeucopsarion petersiの繁殖行動を水槽内で観察した。その結果, 本種の雄は巣を作った後, 雌を巣内へ誘引する行動を行うが, 巣に入ると求愛行動をとらずに, ほとんどの時間を巣の入口付近で行う水送り行動に費やすことが明らかになった。雌が巣に入ってから産卵するまでの日数は14から22日で, 雌は産卵後ただちに巣外に出るが, 雄は巣内に留まり, 水送り行動や卵清掃を行う。卵が孵化する1~2日前に雄は巣の入口を開き, 仔魚は孵化後ただちに巣外に出る。孵化後, ほとんどの雄は巣外に出て死亡するが, 稀に再び雌を誘引する行動をとる個体がいた。24回の観察中6例で2から3回雌に産卵させ, 孵化まで卵の保護行動をとった。また, 本種の巣にポリエステル樹脂を流し込み巣の大きさを測定した結果, 入口から最奥部までが50.4~111.6mm, 横幅が12.1~128.5mmの範囲であり, 高さは6.7~7.7mmであった。
著者
今井 正 豊田 惠聖 秋山 信彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.133-138, 2004-06 (Released:2011-03-05)

淡水飼育条件下において異なるアルテミアの給餌頻度でテナガエビ幼生を飼育することにより、幼生の摂餌機会数の違いと生残の関係を調べた。淡水湖の諏訪湖、汽水湖の佐鳴湖および河川の太田川に生息するテナガエビの幼生を淡水中でアルテミアを1日1回、2回、4回の3条件の給餌頻度で飼育した。諏訪湖産と佐鳴湖産では1日2回までの給餌ではポストラーバに到達できても20個体中1個体だけであったが、1日4回の給餌にすると繰り返した3回の実験それぞれで20個体中1~5個体がポストラーバに到達した。これに対し、太田川産では給餌頻度にかかわらず、第2ゾエア期へ脱皮する個体すらなかった。淡水湖と汽水湖に生息するテナガエビの幼生は、給餌頻度を増やすことで摂餌機会が増大し、淡水中でもポストラーバまで生残可能となることが明らかとなった。
著者
今井 正 齋藤 寛 秋山 信彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.349-351, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
5

Larvae of freshwater prawn Macrobrachium nipponense reared in tap water dechlorinated with sodium thiosulfate (STS) have reduced survival time and retarded development, compared with other dechlorination methods. We examined the effects of STS and sodium tetrathionate (STT), which is produced by residual chlorine and STS, on survival and molts of larvae. STT had the same effect on larvae as the positive control (aerated tap water), however, larvae were susceptible to STS, onset of death was rapid at STS concentrations of >2 mg/l. Therefore, further clarification of appropriate concentration of STS for dechlorination is necessary.
著者
大貫 貴清 田中 彰 鈴木 伸洋 秋山 信彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-66, 2008-03-20 (Released:2012-09-04)
参考文献数
30

静岡県におけるスジエビの生殖活動を調べるために2002年12月から2004年10月にかけて,静岡県静岡市三保半島の水路におけるスジエビの雌の生殖周期を調べた。また,この結果を基に本種の成熟と水温および日長時間との関係を飼育実験により検討した。生殖腺の組織学的観察により,卵巣卵の発達過程を6期に分類した。さらに卵巣卵の発達過程や卵巣の内部構造,生鮮時の色調やGSIから,増殖相,卵黄蓄積相,成熟相,排卵相の4相の成熟段階に分類した。静岡県三保半島におけるスジエビの生殖周期は,産卵開始1~2カ月前である11~1月に雌の卵巣卵に卵黄蓄積がおこり,1~6月のおよそ4カ月間に産卵を数回行うことが明らかとなった。さらに小型個体の出現や大型個体の減少から,本種は産卵期の終了後に多くの個体が死亡するが一部は生残することが示唆された。また,本種の雌の生殖腺の成熟には秋分点以降の降温,短日化が関与しており,水温17~20℃,日長時間9~12時間の範囲内に雌の成熟を開始する要因があると考えられた。また,短日条件においても高水温では成熟に至らないことや,長日条件でも低水温で卵黄蓄積が確認されたことから,本種の雌の成熟は日長時間よりも水温に強く依存していることが示唆された。
著者
秋山 信彦 今井 秀行 小笠原 義光
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.231-238, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

ミヤコタナゴの繁殖用産卵基質として用いるカワシンジュガイの有効性を調べ, ほかに6種の淡水産二枚貝と比較検討した。7種の二枚貝をミヤコタナゴの産卵用水槽に入れた場合, ミヤコタナゴは, カワシンジュガイに対して最も多く繁殖行動を行い, 産卵した卵・仔魚数もカワシンジュガイが最も多かった。しかし, カワシンジュガイを除くと, ミヤコタナゴは特定の種だけに繁殖行動を多く行うことはなく, 産卵した卵・仔魚数も極少数であった。実際にカワシンジュガイを用いて, ミヤコタナゴを繁殖した結果, 雌1個体・1か月あたりの浮出仔魚数は6.65と6.81個体であり, 従来用いられてきた産卵基質二枚貝で繁殖した場合より多かった。以上の結果から, カワシンジュガイは, ミヤコタナゴを増殖させるための産卵基質として有効であると, 考えられる。