著者
高橋 達也 藤盛 啓成 山下 俊一 齋藤 寛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid DiseaseStudy)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。マーシャル諸島住民では、甲状腺結節性病変の有病率が高かった。甲状腺結節の最も一般的な形態は、腺腫様甲状腺腫(adenomatous goiter)であった。しかしながら、本研究で発見された腺腫様甲状腺腫の患者の多くは、医学的治療を必要としなかった。幾多の他の研究と同じように、女性では、男性と比較して甲状腺結節の有病率が高かった。また、有病率は、年齢とともに高くなり、50歳代の女性で最も高率(約50%)であった。甲状腺結節例の約半数は、触診で診断できたが、残りの半数は、超音波診断によってのみ診断し得た(触診できなかった)。甲状腺機能低下症や甲状腺亢進症(バセドウ病)の様な甲状腺機能の異常は、マーシャル諸島では、比較的まれで、有病率は他国と比較して同程度、もしくは、低かった。太平洋地域(日本を含む)などに多く見られる橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、マーシャル諸島では、まれであった。甲状腺癌の疑いで43人の患者が、現地のマジェロ病院において、マーシャル諸島甲状腺研究の医療チームによってなされた手術を受けた。この43人中、25人については、病理学的に癌が確認された。外科手術で重篤な合併症は、1人も発生しなかった。マーシャル諸島全体での、一般住民の甲状腺結節や甲状腺癌の頻度は、従来報告されているよりもかなり高かった。しかし、我々は、ハミルトン博士(Dr.Hamilton)の仮説、すなわち、「甲状腺結節の頻度は、ブラボー実験の時に住んでいた場所とビキニ環礁からの距離に反比例する(ビキニから遠くなると、結節は減る)」、を確認できなかった。この点に関して、ブラボー実験で被曝した住民における甲状腺癌の頻度に関する予備的な分析では、概算した甲状腺放射線被曝量と甲状腺癌有病率は正の相関(被曝量が増えると甲状腺癌も増える)が有意に示された。
著者
江口 昭彦 齋藤 寛 田中 静恵 田中 恵子 中野 篤浩 有澤 孝吉 小林 誠
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.177-182, 1999-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

種々の食品中の硫黄含量を明らかにすることにより, 硫黄の摂取量また硫黄の人体に対する生理的意義や健康状態との関連を知るための基礎資料の作成を目的とし, 予備的な回収実験の後, ICP発光分析法により12群77種 (各5検体) の食品について硫黄含量を測定した。この結果に基づいて, たんぱく質, 含硫アミノ酸と硫黄含量との相関を解析した。1) システイン溶液を用いた回収実験の結果, 過酸化水素水, 硝酸, 過塩素酸を加える操作法が, 最も高い回収率 (97.8±2.1%) を示した。2) 魚介類, 卵類, 豆類, 獣鳥肉類, 藻類 (あまのりのみ) 等の食品は, 硫黄含量が多かった。3) いも類, 野菜類 (にんにくを除く), 果実類, きのこ類などの食品は, 硫黄含量が少なかった。4) 今回測定した食品の硫黄含量とイギリスで発表されているもの20種 (24品目) との比較を行ったところ, 数値に若干の開きがあるものもあったが, 相関係数はr=0.89 (p<0.001) と極めて強い有意な正相関が認められた。5) たんぱく質及び含硫アミノ酸含量と硫黄含量との間には, 有意な正の相関が認められた。6) いいだこ・いか・ほたてがい・あまのり等の硫黄含量が特に多いのは, タウリンが多く含まれている食品であったり, 含硫アミノ酸以外に酸性ムコ多糖類似物質等も含まれている食品であるためと考えられる。7) にんにく, あさつき, グリーンアスパラガスの硫黄含量が比較的高いのは, 硫化アリルを含んでいるためと考えられる。
著者
佐々木 猛智 齋藤 寛
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.191-194, 2005-12-31

溝腹類は世界中から240種が知られているが,その生態についての情報は乏しい。溝腹類は少数の例外を除いて刺胞動物を食物としていることが知られているが,摂餌の様子が直接観察された例は大型で細長い体をもつカセミミズ属Epimeniaのみで,他の多くは消化管内容物に見られる刺胞から判断されたものである。また刺胞動物の種類も宿主であるヒドロ虫類やヤギ類などに絡みついて採集されもの以外は殆ど分かっていない。著者の1人佐々木は淡青丸による遠州灘沖の生物調査において,イソギンチャクに付着した溝腹類を採集した。溝腹類がイソギンチャクを摂餌する様子を直接観察した例はこれまでないと思われるのでここに報告する。採集された個体はトロール網曳網の刺激によって急激に強く収縮したため,イソギンチャクをくわえたまま引揚げられたと思われる(図1)。採集された種は太短く,体表に中実の針状小棘と,樋状の小棘(図2)をもつことからサンゴノフトヒモ属Neomeniaの種であることは間違いなく,体の大きさや採集された位置,深度(水深763〜796m)からおそらくサンゴノフトヒモNeomenia yamamotoi Baba, 1975と同定される。またイソギンチャクは千葉県立中央博物館の柳研介博士に同定を依頼し,クビカザリイソギンチャク科Hormathiidaeの種であることがわかった。イソギンチャクは海底では上部口盤側は海底から上方に伸びていたと考えられる。したがってサンゴノフトヒモは海底から口盤まで体を起こした状態あるいは這い上がって,摂餌していたと思われる。さらに付着している様子を観察すると,サンゴノフトヒモはイソギンチャクの口盤の縁,触手の密生する部分を吻ではさんでいる。サンゴノフトヒモ属は歯舌や顎板のような食物を切り取る硬い組織を欠いているが,口から突出可能な吻(前腸)をもち,これには種類によって数の異なる複数の括約筋が附属する。また,対になった腹部前腸腺を欠くものの,吻部には多数の単細胞腺が附属する。このようなことから,サンゴノフトヒモ属はSalvini-Plawen(1985)が歯舌を欠く溝腹類の摂餌様式として推測した方法,すなわち餌を消化酵素で溶かしながら吸引する方法によってイソギンチャクを摂餌することが想像される。サンゴノフトヒモ属は外套膜のクチクラ層が薄いがその下にsubepidermal matrix又はground substanceと呼ばれる厚い層をもっている。この組織の性質については知られていないが,今回の観察から,イソギンチャクの触手や槍糸などの刺胞に対する防御機能があることが考えられる。
著者
齋藤 寛
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.3_64-3_70, 2010-01-01 (Released:2010-10-01)
参考文献数
25

ローカルなハンドシェーク信号で回路を制御する非同期式回路は,グローバルなクロック信号で回路を制御する同期式回路と比べ,低消費電力,低電磁放射といった特徴がある.しかしながら,同期式回路と比べ設計が難しい.本稿では,非同期式回路設計の基礎となる,遅延モデル,制御方式,データエンコーディング方式を解説し,代表的な非同期式回路モデルを解説する.次に,合成技術を中心に解説を行い,こうした技術を実装したCAD ツールを紹介する.
著者
齋藤 寛 柴田 義貞 高村 昇 渡辺 孝男 中野 篤浩 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故において、事故時に乳幼児であった世代から甲状腺がんが多発したことはよく知られているが、この詳細なメカニズムについてはまだ明らかになっていない。一方で、事故直後に放射能の除染を目的として鉛をはじめとする重金属類が空中から散布されたことが明らかになっており、すでに鉛の汚染状況についての地図も作成されている。しかしながら、これによる住民の健康影響については、これまで全く調査が行われていない。近年、in vitroにおいて、カドミウムやニッケルといった金属に曝露したcell lineにおける遺伝子不安定性が報告されており、放射線被ばくと同様、金属曝露も遺伝子不安定性の原因となることが示唆されてきている。そのため我々は、主にウクライナ放射線医学研究所との共同研究で、チェルノブイリ原発事故のもう一つの側面として、同地区における金属汚染の実態を明らかにし、さらにこれによる染色体レベルでの変異解明を目的としている。本年度は、昨年度までの解析結果に加えて毛髪を用いた微量金属の再評価を行ったが、毛髪と金属汚染レベルでは相関関係はみられなかった。その一方で血液中の微量元素については有意に上昇しているものがみられ、今後さらなる評価が必要であると考えられた。7月にはこれまでの研究成果の総括を行うために、研究代表者、分担者に加えてウクライナの海外共同研究者、さらに国内や中国、ベラルーシ共和国などからも専門家を招聘しての国際会議を開催し、グローバルな視点からの金属汚染の現状についての報告と今後の取り組みについて協議した。
著者
方波見 英基 齋藤 寛
雑誌
研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.2, pp.1-6, 2013-01-09

本稿ではアルテラ社の Field Programmable Gate Array (FPGA) を対象とした Globally-Asynchronous Locally Synchronous Network-on-Chip (GALS-NoC) のアーキテクチャとその設計手法を提案する. GALS-NoC では,マイクロプロセッサ等からなる各ノードは,独自のクロック信号によって制御することができる.ノード間の通信は要求・応答信号による非同期通信である.そのため, GALS-NoC は高性能,低消費電力を実現することが期待できる.実験では, GALS-NoC,マルチクロック NoC,シングルクロックNoC の 3 種類の NoC を実装し,面積,性能,消費電力,消費エネルギーを評価し比較することで, GALS-NoC の優位性や問題点を明らかにする.This paper proposes a design method for a Globally-Asynchronous Locally-Synchronous Net work-on-Chip (GALS-NoC) on Altera field programmable gate array (FPGA). In GALS-NoC, each NoC node such as a processor can be operated with independent clock signal. The communication is performed asynchronously without using a global clock signal. Hence, GALS-NoC is potentially high performance and low power. In the experiments, this paper evaluates the area, performance, power consumption, and energy consumption of the designed GALS-NoC comparing with a single clock NoC and a multi clock NoC.
著者
塩野 宏之 齋藤 寛 今野 陽一 熊谷 勝巳 永田 修
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.101-109, 2016-04-05 (Released:2017-06-17)
参考文献数
33
被引用文献数
4

In cold regions of Japan, rice straw residues cut and scattered in late autumn are often incorporated into paddy soils the next spring. Generally, emissions of methane (CH4) from such paddy fields are very high owing to rapid anaerobic decomposition of the straw under flooding. We investigated the effects of incorporating straw by shallow tillage in autumn to decompose under aerobic conditions for reducing emissions of the greenhouse gases CH4 and nitrous oxide (N2O). Three plots were prepared: shallow tillage in autumn by plowing at 5–8 cm depth (STA), conventional tillage in autumn by plowing at 18–20 cm depth (CTA), and conventional tillage in the next spring by plowing at 18–20 cm depth (CTS). The study was conducted from 2010 to 2013. In the STA and CTA plots, the straw was incorporated in October, and the plots were plowed the next April. In the CTS plot, the straw was incorporated at plowing in April. All plots were irrigated and rice seedlings were transplanted in late May. CH4 and N2O fluxes were measured by the closed chamber method throughout the cropping period. Tiller number, grain yield, and brown rice quality were also measured. The cumulative CH4 emissions increased in the order of STA (19.9–85.6 g CH4 m-2) < CTA (24.8–107.6 g CH4 m-2) < CTS (45.6–134.1 g CH4 m-2). N2O emissions in all plots were negligible. Tiller number was higher in the STA plot than in the other plots. There were no significant differences in grain yield or brown rice quality. From the time of snowmelt in March to plowing in April, the soil moisture and the concentration of ferrous iron (Fe2+) in soil were lower in the STA plot than in the CTA plot. Consequently, shallow tillage in autumn by plowing at 5–8 cm was the most effective technique for reducing emissions of greenhouse gases from paddy fields with incorporated rice straw in a cold region of Japan.
著者
齋藤 寛子 平尾 和子 佐藤 恵美子 宮地 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】山形県は三世代同居率が国内で最も高く(厚労省 平成30年報告)、生産年齢人口の有業率が女性は84.9%で全国2位(総務省 平成29年就業構造基本調査)である。そのため共働きが多く、食事作り担当者は祖父母という家庭も示唆され、地域や家庭における行事食が伝承されやすいと推察される。本報告では山形県内の4つの地方(庄内、最上、村山、置賜)に伝わる行事や食がどのように伝承されているかを検討した。</p><p>【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」で行った聞き書き調査、山形県の郷土料理に関する出版物および継続中の調査結果から、特徴的な行事と料理並びに食文化の背景について分析した。</p><p>【結果】山形県は4つの地方毎に伝承された行事や食があり、年中行事では年越し、正月、農作業に関する四季の行事など、また通過儀礼では冠婚葬祭のしきたりに関わる料理が伝わっている。正月の雑煮に入れる餅は県内でも地方によって異なり、最上・村山・置賜地方は四角の焼いた餅、海に面した庄内地方は丸餅を焼かずに用いるが、丸い形は北前船の影響があると考えられる。また、庄内地方では12月の大黒様の御歳夜に黒豆を用いた料理などを準備し、ごま豆腐やうどんのあんかけなどを作る祭りも伝わっている。一方、内陸部の最上、村山、置賜地方では「ひょっとして良いことがありますように」と願いを込め、正月にひょう干しの煮物を準備する。村山地方の人日の節句には、積雪のため七草など青物が調達できないことから、芋がらを入れた納豆汁を作る。また置賜地方ではお歳取りや祝儀の膳には祝い魚として鯉の甘煮を準備する。いずれの地方でも特徴ある行事食が伝承されていることがわかった。</p>
著者
今井 正 齋藤 寛 秋山 信彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.349-351, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
5

Larvae of freshwater prawn Macrobrachium nipponense reared in tap water dechlorinated with sodium thiosulfate (STS) have reduced survival time and retarded development, compared with other dechlorination methods. We examined the effects of STS and sodium tetrathionate (STT), which is produced by residual chlorine and STS, on survival and molts of larvae. STT had the same effect on larvae as the positive control (aerated tap water), however, larvae were susceptible to STS, onset of death was rapid at STS concentrations of >2 mg/l. Therefore, further clarification of appropriate concentration of STS for dechlorination is necessary.
著者
亀長 洋子 飯田 巳貴 西村 道也 宮崎 和夫 黒田 祐我 櫻井 康人 堀井 優 佐藤 健太郎 高田 良太 澤井 一彰 齋藤 寛海
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多文化が交錯する世界である中近世の地中海世界を、東洋史・西洋史の共同研究として再考した。中近世のグローバリゼーションのなかで、アラブ、マグリブ、トルコのイスラーム諸勢力、ビザンツ、西洋カトリック諸勢力、ユダヤ教徒などが地中海世界の各地で政治、経済、宗教、社会の様々な面において対峙する様相を各研究者は個人研究として進め、その成果を海外研究者の協力も得つつ互いに共有した。それにより研究者たちは西洋史・東洋史のいずれにも偏らない視野を育くみ、一国史観を超えた歴史叙述を充実させた。その成果を含んだ研究報告書を作成し多くの研究者に配布し、また共同研究の成果を公開シンポジウムの形で広く人々に公開した。
著者
齋藤 寛 吉永 馨 塩路 隆治 古川 洋太郎 有川 卓 齋藤 喬雄 永井 謙一 道又 勇一 佐々木 康彦 古山 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1371-1383, 1975
被引用文献数
4

明治初年以来高度のカドミウム環境汚染をうけてきた秋田県小坂町細越地域の35才以上の住民137人(男58人,女79人)の健康調査を行なつた.昭和47年1月から昭和49年10月にいたる期間の4回の検尿において尿蛋白,尿糖同時陽性者の検出率は常時13%以上であり,対照地域の同時陽性率2.5%に比し著しい高率であつた.この4回の検尿により尿蛋白・尿糖同時陽性者33例(男18例,女15例)を見出し,かつこのなかから腎機能検査の結果10例(男5例,女5例)の多発性近位尿細管機能異常症(multiple proximal tubular dysfunctions)を診断した.この10例についてその原因疾患を検討した.特発性,遺伝性疾患,ならびに慢性重金属中毒以外の後天性疾患はいずれも否定された.多発性近位尿細管機能異常症を含む尿蛋白・尿糖同時陽性者の大部分が尿中カドミウム排泄の異常高値(10.0~45.0&mu;g/d)を示した.小坂町細越地域の土壌,産米などにはこれまでくりかえし高濃度のカドミウムが検出されており,また同地域住民の多数が尿中カドミウムの異常高濃度(10.0&mu;g/<i>l</i>以上)を示すことが秋田県の調査により明らかにされている.すなわち同地域住民は長年にわたり異常カドミウム曝露をうけてきたことが確実であつた.以上により同地域住民の多数に認めた蛋白尿,糖尿の多発,さらには多発性近位尿細管機能異常症にまでいたる一連の腎障害は長年にわたり,主に食物を介して体内に異常大量摂取されたカドミウムによる慢性カドミウム中毒であると結論した.
著者
斎藤 俊郎 堀口 新吾 齋藤 寛 舞田 正志
出版者
東海大学海洋学部
雑誌
東海大学紀要 海洋学部 (ISSN:03753271)
巻号頁・発行日
no.55, pp.79-87, 2003-03
被引用文献数
1

現行のトラフグ養殖を見てみると、餌料にはフグ毒が含まれない無毒のものが使用されている。上記観点からすれば、トラフグの養殖は"必要物質"としてのフグ毒がない状態で行われていることになる。トラフグ養殖における重要な飼育上の問題にトラフグ同士の噛み合いがある。従来、毒であるフグ毒を養殖トラフグに投与するという発想は無く、むしろ、養殖トラフグは無毒故に付加価値が高いとの考えもある。よって、フグ毒投与が養殖トラフグの噛み合いに及ぼす影響については全く検討されて来なかった。以上の状況を踏まえ、本研究ではトラフグにおけるフグ毒の機能解明の一環として、フグ毒投与が養殖トラフグの噛み合いに与える影響を検討した。その結果、フグ毒投与が養殖トラフグの噛み合いを著しく減少させることが明らかになったので報告する。
著者
齋藤 寛子 平尾 和子 佐藤 恵美子 宮地 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】山形県は昔から米作りが盛んであり、農作業の合間の小昼や一服のおやつは、疲れた身体を癒し、生産性の向上も担う大切な食であった。また、学校を終えて帰宅した子どもたちにとって、おやつは昔も今も楽しみであり、大切な栄養補給である。加えて、歴史的背景から、西廻り航路の港であった酒田市は、早くから京の和菓子が伝えられ、隣接する城下町であった鶴岡市は、雛菓子、お盆菓子、正月の祝い菓子など現在も昔と変わらずに食べられている。そこで本報告では、山形県の家庭におけるおやつについて、その実態を調査し、伝承された食べ方などをまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」に於いて行った聞き書き調査及び山形県の郷土料理に関する出版物からの料理の抽出、さらに継続して行っている調査結果などから、季節、行事及び県内の地域区分等でおやつを分類し、その特徴について分析した。<br />【結果】山形県の家庭料理におけるおやつは約50品集録された。「ケ」の食のおやつには、うるち米やもち米を材料とするものが多く、きな粉餅、味噌餅、白餅もおやつとして認識されており、硬くなった餅は油であげたり、炒ったりして味付けし、あられとして食べられている。醤油で煎り煮した玉こんにゃくや寒天を用いた寄せものは、おかずだけではなくおやつにもなる料理である。「ハレ」の食のおやつには、上巳の節句のくじら餅、草餅、鶴岡の練り切り等で作るお雛菓子、端午の節句には灰汁巻きと灰汁を用いない笹巻2種と笹団子及び小正月の団子などが分類された。昔からのおやつは、食材は限られるものの、調理法や味付けに工夫が見られ、山形のおやつは豊かであったことが推察された。
著者
菅原 久美子 和泉 眞喜子 宮下 ひろみ 中村 恵子 會田 久仁子 村上 知子 菊地 和美 北山 育子 真野 由紀子 松本 祥子 大野 智子 高橋 秀子 齋藤 寛子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.129, 2010

【目的】米利用の地域性および米消費減少の要因を探るために、東北・北海道地方における米の摂取・調理状況に関する調査を実施し、前報<SUP>1)</SUP>では米の嗜好、摂取頻度、米に対する意識等について報告した。本研究では、米飯と代表的な米料理の摂取・調理状況について、東北・北海道地方における特徴と地域性について比較検討した。【方法】前報<SUP>1)</SUP>、同様である。<BR>【結果】三食とも米飯を摂取する割合は、全体で46.6%であるが、各県・道別にみると山形県71.4%、北海道29.9%となり、一日の米飯回数には地域差がみられた。山形県では黒米、宮城県では五穀米の使用が多い特徴がある。また無洗米の使用経験は各県道ともに多く、認知度や利便性等が広く浸透していることが窺われた。残りご飯は炒飯、雑炊としての利用が最多であるが、焼きおにぎりへの利用には地域差がみられた。おにぎりの具材はいずれも鮭、梅干しが上位であるが、たらこは秋田・青森県、こんぶは青森・岩手・宮城県、かつおぶしは北海道で多かった。炊き込みご飯、混ぜご飯、ちらし寿司を作る割合は各々88.4%、75.7%、62.6%であり、炊き込みご飯は秋田県、混ぜご飯は福島県、ちらし寿司は岩手県で作る割合が多く、いずれの米料理も、具の調理状況と盛りつけ時の具の飾り方には地域的特徴がみられた。具材を種類別にみると、炊き込みご飯では山形県のいも類(しらたき、こんにゃく)ときのこ類、北海道の藻類(ひじき、海苔)と魚介類(ほたて貝、ほっき貝)、混ぜご飯では宮城県の鮭の出現率が高く、地域の特産物が多く利用されている状況が窺われた。<SUP>1)</SUP>日本調理科学会平成21年度大会研究発表要旨集、p.47(2009)
著者
西原 純 齋藤 寛
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.109-130, 2002-04-30 (Released:2009-04-28)
参考文献数
136
被引用文献数
2

With the restructuring of the Japanese economy during the 1980s, many large enterprises were obliged to downsize or shut down mines and industrial plants. In this paper, we explore the closure of the Takashima coal mine in 1986 by its owner Mitsubishi, one of Japan's largest corporations, as a typical example of industrial decline in one of Japan's peripheral regions. This coal mine had been operating on the small island of Takashima for 118 years. In particular, the authors examine the difficulties experienced by redundant workers in different hierarchically-defined classes in reacting to the closure and the need to reorganize their lives.The results of the research are as follows:(1) During the mining era, there existed a three-tiered social structure, organized by Mitsubishi's mining company, consisting of three differentiated classes of workers: the managerial staff, Mitsubishi's own miners, and miners working for subcontractors. The workers in each class had quite different backgrounds, particularly with regard to educational attainment and occupational skill.(2) When the mine closed, the managerial staff were not retrenched, but instead were relocated from Takashima island to other establishments owned by Mitsubishi. All of the miners, however, whether employed by Mitsubishi or by subcontractors, lost their jobs, and had to seek new jobs and new lives outside of Takashima island.(3) In comparison with workers made redundant by other restructuring industries, such as steel and shipbuilding, Mitsubishi's former miners received a great deal of economic support from both the government and the company. Miners previously employed by subcontractors received little help, however, from their former employers.(4) Former miners, whether previously employed by Mitsubishi or by one of its subcontractors, experienced much greater difficulty in finding new jobs than workers made redundant by other industries. There were also big differences between former Mitsubishi miners and those previously employed by subcontractors in terms of the locations where new jobs were found, the size of their new employers and the salaries they received.(5) During the six months following the closure, out-migration was highly selective: those most likely to leave Takashima island were people of comparatively high social status, such as managerial staff, Mitsubishi's former miners, and younger heads of households. Since then, the municipality of Takashima has failed to revitalize its local economy and has suffered from severe depopulation and a rapid ageing of the community.(6) Miners made redundant by the closure of other Japanese coal mines in the 1980s experienced similar difficulties to those experienced by Takashima's miners in finding new jobs and rebuilding their lives, reflecting the common characteristics of miners everywhere.
著者
滝澤 恵多郎 齋藤 寛
雑誌
研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.2013-SLDM-163, no.13, pp.1-6, 2013-11-20

本稿では,束データ方式による非同期式回路を FPGA に実装するための設計支援ツールセットを提案する.始めに面積や静的タイミング解析のしやすさを考慮し,プリミティブを用いて制御モジュールを定義する.これらを用いて制御回路を実現する.次に設計制約コマンド生成の自動化,タイミング検証の自動化,タイミング違反時の遅延調整の自動化を行うツールセットを提案する.提案するツールセットと商用の FPGA 設計ツールを使用することにより,FPGA を対象にレイテンシ制約を考慮した束データ方式による非同期式回路設計が容易に行える.実験ではいくつかのベンチマークに対し提案するツールセットを適用し,回路面積,実行時間,消費電力,消費エネルギーの観点から同期式回路との比較を行う.
著者
花森 功仁子 石川 智士 齋藤 寛 田中 克典 佐藤 洋一郎 岡田 喜裕
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.19-25, 2012-03-20

14カ国に由来する温帯型と熱帯型を含むジャポニカ型イネ31系統と,11カ国に由来するインディカ型イネ23系統,合わせて54系統を用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の遺伝的相異点を調べた。その結果,第6染色体上に221塩基の欠失/挿入領域(DJ6領域)を発見した。この領域では温帯ジャポニカ型は欠失を示し,熱帯ジャポニカ型とインディカ型は非欠失を示す。このDJ6領域にPCRプライマーを10個設計し,これらを用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の識別手法を開発した。また,このプライマーを用いて,弥生時代後期の登呂遺跡第1期の地層から出土したイネ種子の型判別をおこなった。その結果,温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型のDNAを持つ雑種1点と温帯ジャポニカ型2点が検出された。このことから,弥生時代後期には温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型が栽培されており、両者のイネが自然交雑していたことが示唆された。
著者
齋藤 寛 前田 隆浩 青柳 潔 高村 昇 中里 未央 野村 亜由美
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

長崎大学では、平成16年度から医学部医学科5年-6年次学生を対象として「離島医療・保健実習」を開始した。これは、病院実習の一環として、1学年100名を7-8名ずつのグループに分け、それぞれ1週間ずつ長崎県五島市において地域医療、地域保健を学ぶものであり、地域に根ざした包括的医療についての実習を行うプログラムとして全国的にも注目されている。その一方、これまでこのような形での地域密着型医学教育プログラムを実施するという試みは日本でほとんど行われていないため、実施するにあたっての教育ソフトに乏しいのが現状である。そこで本申請では、今後の離島・へき地医療実習、さらには地域医療実習に応用可能な教育ソフトの開発を行う目的とした。研究代表者らは、各分野における教育ソフトの作成を行い、その成果は7月に全国の医学生を対象として行われた「家庭医療セミナー」において公開した。「家庭医療セミナー」は、全国の医学生を対象に、長崎県五島において家庭医療についてのセミナーを集中的に行うもので、研究代表者、研究分担者に加えて欧米の家庭医療の専門家を招聘しての特別講義・実習を行い、その成果はマスコミ等で大きく取り上げられた。さらに研究代表者らはこの成果を世界に発信すべく、長崎大学と学術交流協定を締結している旧ソ連邦のベラルーシ共和国の医科大学(ベラルーシ医科大学、ゴメリ医科大学)を訪問して、インターネット等を用いた遠隔教育(e-learning)システムの整備を行った。これに対して研究代表者がゴメリ医科大学の名誉教授号をうけるなど、ベラルーシ国内でも高い評価を得た。