著者
渡邊 裕子 秋山 晴代 大澤 伸彦 井村 香織 伊関 直美 植田 壽美子 政岡 智佳 赤星 千絵
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.193-202, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3

大豆の調理・加工によるタンパク質定量への影響を検討した.リン酸緩衝食塩水抽出画分はビシンコニン酸法で測定し,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と2-メルカプトエタノール(ME)含有緩衝液抽出画分は2-D Quant Kitで測定し,各画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動分析を行い,さらに各種ELISAで測定を行った.豆腐調理過程では浸漬大豆と生呉でタンパク質濃度が変動し,試料均一化時の水分量によるタンパク質溶解性の変動が要因と考えられた.豆乳作製時の生呉の加熱でのタンパク質濃度の低下は熱変性を表すと考えられた.豆腐ではSDS,ME抽出による測定系への影響が考えられた.加熱調理では炒り豆を除き50 kDa付近以上と20 kDa付近のタンパク質が変性し,2度揚げ豆腐で40 kDa付近のタンパク質が変性したが,煮豆を除いたタンパク質濃度は低下しなかった.さらに炒り豆,ゆば,炒りおから,揚げ豆腐では調理時間に伴いタンパク質濃度が増加したことから,水分の低下に伴いタンパク質の変性温度が高温にシフトしたと考えられた.食品表示法に準拠した2種のELISAは大豆調理加工品や納豆を除いた発酵食品,健康食品中のタンパク質とペプチドを検出し,大豆タンパク質の検出に有用であった.
著者
中村 亮介 岡本 美孝 秋山 晴代 岡本 好海
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アレルゲン舌下免疫療法(SLIT)は、スギ花粉症等のアレルギー疾患の根治が期待できる非常に有望な治療法であるが、治療が長期に渡る一方、必ずしも全例が奏効するとは限らないことが問題となっている。そこで本研究では、SLITのメカニズムの解明に取り組むとともに、患者血清中からSLITによる治療の奏効性を早期に予測するバイオマーカーを探索することを目的としている。申請者は近年、培養細胞を用いる独自のアレルギー試験法「EXiLE法」を開発した。この手法は、特異的アレルゲンに対する血清中IgEの架橋活性だけでなく、血清中の中和活性を評価することも可能である。そこで今年度では、2シーズン以上に渡ってスギ花粉症のSLITを実施した患者38名における、血清中特異的IgE抗体価、血清中IgEによるEXiLE応答性および中和活性を経時的に評価し、患者の治療スコア(TNSMS)と比較することで、SLITの奏効性と相関するバイオマーカーを探索した。その結果、SLIT実施患者の血清中中和活性は治療開始2シーズン後に顕著に増加した。TNSMSの差(ΔTNSMS)をSLITの奏効性と定義すると、治療開始前のEXiLE応答性及びスギ花粉特異的IgE抗体価で患者群を層別化したときに、奏効性はカットオフの上下群間で有意に異なることが分かった。カットオフはそれぞれ2.0倍と10 UA/mLで、P値はそれぞれ0.00048と0.0021であった。この結果は、SLIT開始時の特異的IgE抗体価およびその架橋能はSLIT奏効性を予測するよいバイオマーカー候補であることを示唆している。症状発現へのIgEの寄与率が低い症例ほどSLITが効きにくい、というメカニズムが想定される。