著者
秋月 百合 藤村 一美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-39, 2007
被引用文献数
9

<B>目 的</B><br> 本研究の目的は,わが国における病院勤務助産師のバーンアウトの実態を明らかにすることである。<br><B>対象と方法</B><br> 全国の産科診療を行う72病院に勤務する839人を対象に,自記式質問紙を用いた量的横断的調査を実施した。バーンアウトの測定にはMaslach Burnout Inventry(MBI)尺度を用いた。MBI下位尺度と基本的属性,助産師特性,勤務特性,勤務施設特性,職務満足,仕事継続意向,勤務病棟での働きやすさの認識との関連をみるために,一元配置分散分析,t検定ならびに相関分析を行った。<br><B>結 果</B><br> 回収率は87.2%,有効回答数はn=708であった。対象者の平均年齢は35.2歳であった。各下位尺度の平均得点は,「情緒的消耗感」15.67±4.50,「脱人格化」11.89±4.32,「個人的達成感の後退」20.61±4.30であった。婚姻歴,助産・産科看護経験年数,1日勤務時間,月残業時間ならびに有休消化等と情緒的消耗感ならびに脱人格化との間に有意な関連が見られた。職位ならびに勤務形態と個人的達成感の後退との間に有意な関連が見られた。職務満足と個人的達成感の後退の間に,仕事継続意向と情緒的消耗感ならびに個人的達成感の後退との間に負の相関関係があることが明らかになった。<br><B>結 論</B><br> わが国における病院勤務助産師のバーンアウトは,看護師を対象とした先行研究と比較して情緒的消耗感,脱人格化は同様もしくは低い傾向に,個人的達成感の後退においては低い傾向にある可能性が示唆された。因果関係は明確ではないが,仕事満足ならびに仕事継続意向とバーンアウトとの間に関連があることが示唆された。今後,各医療機関において事業場内産業保健スタッフ等による病院勤務助産師へのサポート体制を整備すること,助産師の配置を拡大すること,新人助産師への卒後教育を充実させることの重要性が示唆された。
著者
秋月 百合
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.271-279, 2009
被引用文献数
2

<B>目 的</B><br> 本研究の目的は,不妊症夫婦において,夫のどのような側面を支援的・協力的と認識しているのか,不妊女性の視点から明らかにすることである。<br><B>方 法</B><br> 不妊治療を受ける関東圏内在住の女性患者24名を対象に,半構造化面接を実施した。不妊や治療に関連して,支援的・協力的と認識する夫の側面(言動・態度)について尋ね,口述内容を質的に分析した。<br><B>結 果</B><br> 分析の結果,以下の5つのカテゴリーが抽出された。1)治療過程への身体的参加;検査や治療のための精液採取,精液検査の受検,タイミングを合わせた性交,内服の励行など,治療上の不可欠な役割を夫が果たすこと,2)子どもや治療への関心;治療の結果を気にかけたり,気兼ねなく治療について話ができたり,夫が子どもや不妊治療に関心を示すこと,3)自主的な健康行動;生殖機能の向上を意識した行動を自主的にとること,4)精神的な支え;妻のストレスや苦悩を受け止めてくれること,妻の心身を気遣ってくれること,夫婦二人の生活の価値を承認してくれること,治療に対する妻の意向を尊重してくれること,5)家事の協力・身の回りの世話;妻の身体を思い遣って,日常的に家事に参加してくれること,入院中や体調が悪いとき,身の回りの世話をしてくれること等であった。<br><B>結 論</B><br> 不妊女性の視点から,夫の支援的・協力的側面として,5つのカテゴリーが明らかになった。「治療過程への身体的参加」,「子どもや治療への関心」,「自主的な健康行動」は,不妊という課題に対し協同的に取り組むべきパートナーである夫にしか果たせない役割であり,一方「精神的な支え」,「家事の協力・身の回りの世話」は,不妊に付随した問題に対する支援的なかかわりを意味しており,夫のみならず家族や友人にも期待できる役割であることが示唆された。