著者
佐藤 伊織 戸村 ひかり 藤村 一美 清水 準一 清水 陽一 竹内 文乃 山崎 喜比古
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-49, 2004

我々は、不妊治療と出生前診断について、一般市民の知識・信念・態度を、自記式調査票により調査した。東京都N区の住民基本台帳から30代〜50代の者179名を無作為抽出し、そのうち住所の明らかな169名を対象とし、99の有効回答を得た。各調査項目と属性間、一部項目間の二変量の関係についてPearsonのx2検定を行った。不妊治療の知識やそれへの態度については、男女に明確な差は認められなかった。しかし、女性の方が不妊治療をよりシビアにとらえる傾向が見られた。市民の中には、不妊を夫婦双方の問題として取り組む姿勢も見られ、これからは実際に男性からも積極的に不妊治療に参加できる環境を整えることが望まれる。出生前診断や中絶に関する態度は、その人の年代・子どもの有無によって違いが見られた。出生前診断が必ずしも優生思想や障害者差別に結びつくものではないという点について特に、認識の普及が必要である。
著者
秋月 百合 藤村 一美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-39, 2007
被引用文献数
7

<B>目 的</B><br> 本研究の目的は,わが国における病院勤務助産師のバーンアウトの実態を明らかにすることである。<br><B>対象と方法</B><br> 全国の産科診療を行う72病院に勤務する839人を対象に,自記式質問紙を用いた量的横断的調査を実施した。バーンアウトの測定にはMaslach Burnout Inventry(MBI)尺度を用いた。MBI下位尺度と基本的属性,助産師特性,勤務特性,勤務施設特性,職務満足,仕事継続意向,勤務病棟での働きやすさの認識との関連をみるために,一元配置分散分析,t検定ならびに相関分析を行った。<br><B>結 果</B><br> 回収率は87.2%,有効回答数はn=708であった。対象者の平均年齢は35.2歳であった。各下位尺度の平均得点は,「情緒的消耗感」15.67±4.50,「脱人格化」11.89±4.32,「個人的達成感の後退」20.61±4.30であった。婚姻歴,助産・産科看護経験年数,1日勤務時間,月残業時間ならびに有休消化等と情緒的消耗感ならびに脱人格化との間に有意な関連が見られた。職位ならびに勤務形態と個人的達成感の後退との間に有意な関連が見られた。職務満足と個人的達成感の後退の間に,仕事継続意向と情緒的消耗感ならびに個人的達成感の後退との間に負の相関関係があることが明らかになった。<br><B>結 論</B><br> わが国における病院勤務助産師のバーンアウトは,看護師を対象とした先行研究と比較して情緒的消耗感,脱人格化は同様もしくは低い傾向に,個人的達成感の後退においては低い傾向にある可能性が示唆された。因果関係は明確ではないが,仕事満足ならびに仕事継続意向とバーンアウトとの間に関連があることが示唆された。今後,各医療機関において事業場内産業保健スタッフ等による病院勤務助産師へのサポート体制を整備すること,助産師の配置を拡大すること,新人助産師への卒後教育を充実させることの重要性が示唆された。