著者
中村 和彦 秋穂 裕唯 牟田 浩実
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症性腸疾患は腸に慢性の炎症を起こす難病で、腸での免疫応答の制御に異常があるとされる。制御性T細胞は免疫応答を抑制する細胞で炎症性腸疾患治療への応用が期待されている。近年、炎症性腸疾患ではT細胞を介した免疫応答の中でTh1型とTh17型反応の関与が示唆されている。制御性T細胞はTh1型大腸炎は抑制するが、Th17型大腸炎を抑制できるかどうか不明であった。本研究では、制御性T細胞がTh1型に加えてTh17型大腸炎を抑制できる事を示し、炎症性腸疾患にTh17型反応が関与していたとしても制御性T細胞が治療に応用できる事を示した。
著者
中村 和彦 秋穂 裕唯
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

CD4^+CD25^+制御性T細胞(Treg)のin vitroでの培養増殖・分化誘導が可能であれば、Tregの潰瘍性大腸炎(UC)治療への応用に有用である。UC患者に対する血球成分除去療法産物より臨床応用可能なグレードで分離されたTregを抗CD3/抗CD28抗体ビーズ、IL-2で刺激した。細胞数は10日間で約18倍に増加し、TregのマーカーであるFOXP3発現細胞の割合は保たれた。また、通常のCD4^+T細胞との共培養で細胞増殖を抑制した。次に、CD4^+CD25^-non-TregからTGF-β1存在下にTregの誘導を試みた。誘導後、TregのマーカーであるCD25^+FOXP3^+細胞が増加し、CD4^+T細胞との共培養で細胞増殖を抑制した。以上より、Tregがin vitroで培養増殖・分化誘導可能である事が示された。更にrapamycin(RAPA)によりCD4^+T細胞からTregがin vitroで誘導可能か、誘導Tregに大腸炎抑制能があるかどうかマウスモデルで検討した。Balb/cマウス脾臓よりCD4^+T細胞を分離し、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2にてRAPA存在下に刺激培養した。RAPA存在下で培養した細胞の17%がCD25^+FoxP3^+であったのに対して、RAPA非存在下で培養した細胞はほとんどCD25、FoxP3を発現していなかった。CB-17 ScidマウスにBalb/cマウス由来CD4^+CD62L^+CD25^-T細胞1x10^6を腹腔内投与して大腸炎を誘導し、同数の分離・培養Tregを同時移入した。RAPA存在下で培養したCD4^+T細胞は、マウス脾臓より分離したTregと同様に大腸炎の発症を抑制した。RAPA誘導Tregは分離Tregと同様に大腸炎抑制能を有する事が示された。
著者
秋穂 裕唯 中村 和彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.1353-1358, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
32

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)の薬物療法について概説した.薬物療法は食事と生活習慣を指導した後に,消化管主体の治療を行う.第1選択薬としてプロバイオティクス,高分子重合体,消化管機能調整薬を使用する.症状の改善が不十分な場合は,症例ごとに優勢な症状に対して止痢薬,抗コリン薬,下剤などの薬物を追加する.また5-HT4刺激薬,抗アレルギー薬,漢方薬,抗うつ薬,抗不安薬も治療効果を有する.近年有効性の高い男性下痢型IBSに対する5-HT3拮抗薬,便秘型IBSに対するCIC-2賦活剤が登場した.IBSの病態機序のさらなる解明と治療薬の開発が期待される.