著者
秦泉寺 雅夫
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

今年度は、申請課題の2つのテーマにおいて進展があった。第一のものは、K3曲面上のN=4超対称位相的ゲージ理論についてのもので、前年度に引き続き、この理論の分配関数と、アフィンリー環の理論との関連を追及した。この方針の研究を進める事により、ADE型のアフィンリー環の分母公式に現れる式が、K3曲面上のADE型のゲージ理論の分配関数の満たすべきS-双対性の性質を満足している事を発見した。この発見をもとに、ADE型のゲージ群をもつK3曲面上のN=4超対称ゲージ理論の分配関数を構成した。また、これらの結果が、弦理論双対性の一種であるTypeIIA弦理論と、Heterotic弦理論の間の双対性を用いて、簡明に解釈できる事を示した。第二のものは、一般型の超曲面の量子コモホロジーに関する研究で、今年度は、この量子コモホロジー環を、それに付随するガウス-マニン系と呼ばれる微分方程式を用いて決定するという方針のもとに研究を行った。大きな進展は、この量子コモホロジー環が、カラビーヤウ超極面の量子コモホロジー環を導出する際に用いられるミラー変換と呼ばれる座標変換を拡張した一般ミラー変換を用いる事によって決定できる事を発見した事である。現在の所このやり方によって、次数5までの有理曲線に関するGromov-Witten不変量を予言する公式を導出する事に成功している。また、一般の次数の有理曲線に対して、一般ミラー変換をどう定義すべきかが明らかにはなっていないので論文の形で発表はしていないが、近日中に理論を完成させ、発表する予定である。
著者
小野 薫 泉屋 周一 秦泉寺 雅夫 松下 大介 石川 剛郎 山口 佳三 高倉 樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

symplectic 構造は、古典力学における Hamilton の運動方程式の定式化などで重要な幾何構造である。近年は、symplectic 構造そのものの幾何学的研究が進展し、ミラー対称性の数学的研究と相俟って多くの研究者が関心を持つ対象となっている。研究代表者は、symplectic 幾何学で特に重要な Floer 理論とその応用の研究を続けている。今研究計画においては、Floer 理論をトーリック多様体とその Lagrange トーラスファイバーに対して、具体的な研究をし、いくつもの興味ある結果を得た。