- 著者
-
稲上 毅
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.3, pp.365-371, 1995
中心が崩れ落ち, 周辺への意志が増幅されている。ディシプリンが曖昧でそれだけ個人芸に頼りがちな社会学がこの時代のモメンタムから自由でいられるわけもなかった。いくつかの「イズム」が虚空に舞い, 個体性のドキュメンテーションに拍車がかかった。いたるところで音信不通と立枯れが生じた。日本に限ったことではないが, この四半世紀ほどのうちに浮き彫りにされた現代的な風景である。病理ばかりが封印されているわけではないだろうこの中心喪失とパラレルな断片化 (Fragmentation) は, いったいどこまで進むのか。<BR>そんな捉えどころのない思いに駆られていたとき, 『都市社会学のフロンティア』 (全3巻) に出会った。何人かの友人が寄稿していることも手伝って, 一遍に喉の乾きを覚えた。それがいけなかった。まったくの門外漢であることも忘れて書評まで引き受けることになってしまった。それでも, 私の大きな期待は, 壁頭におかれた倉沢進の「都市社会学のフロンティア」を読んで一層膨らんだ。彼を含む「第 2世代」の「ミクロな世界がその主題であった」都市社会学を超えて, 「都市そのものの発展を説明する巨視的な新しい理論図式がいまや都市社会学に課せられており」, その課題を担って立つだろう「都市社会学の第3 世代のマニフェスト」が本シリーズにほかならない, と明記されていたからである。