著者
稲上 毅
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.365-371, 1995

中心が崩れ落ち, 周辺への意志が増幅されている。ディシプリンが曖昧でそれだけ個人芸に頼りがちな社会学がこの時代のモメンタムから自由でいられるわけもなかった。いくつかの「イズム」が虚空に舞い, 個体性のドキュメンテーションに拍車がかかった。いたるところで音信不通と立枯れが生じた。日本に限ったことではないが, この四半世紀ほどのうちに浮き彫りにされた現代的な風景である。病理ばかりが封印されているわけではないだろうこの中心喪失とパラレルな断片化 (Fragmentation) は, いったいどこまで進むのか。<BR>そんな捉えどころのない思いに駆られていたとき, 『都市社会学のフロンティア』 (全3巻) に出会った。何人かの友人が寄稿していることも手伝って, 一遍に喉の乾きを覚えた。それがいけなかった。まったくの門外漢であることも忘れて書評まで引き受けることになってしまった。それでも, 私の大きな期待は, 壁頭におかれた倉沢進の「都市社会学のフロンティア」を読んで一層膨らんだ。彼を含む「第 2世代」の「ミクロな世界がその主題であった」都市社会学を超えて, 「都市そのものの発展を説明する巨視的な新しい理論図式がいまや都市社会学に課せられており」, その課題を担って立つだろう「都市社会学の第3 世代のマニフェスト」が本シリーズにほかならない, と明記されていたからである。
著者
森 淳二朗 鈴木 不二一 小池 和男 稲上 毅
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度・14年度の研究で得られた成果は、以下のごとくである。1 従来、企業理論は、経済学において展開されてきたが、森論文は、法理論として、すなわち、株式会社制度の法解釈論として、新たな企業理論を展開できることを論証している。これまでの企業理論は、「所有と経営の分離」に株式会社の特徴があるとみており、会社法もその考えを前提にして組み立てられている。これに対して、森論文は、株式会社には、「所有と経営の分離」だけでなく、「所有と経営の協働」の側面もあることを明らかにし、その両面を前提にして会社法を組み立てる必要があることを指摘している。この新たな企業理論を前提にして、森論文は、ドイツの共同決定制度とはまったく異なる論理で、従業員がコーポレート・ガバナンスに関わることの正当性と積極的意義を明らかにしたのである。2 新たなコーポレートガバナンス・モデルは、米国型のように株主利益のみを重視するのでなぐ、株主利益重視と従業員利益重視の両立を目指している。稲上論文は、このような両立性を志向する試みは、決して特異なものではなく、国際的な理論潮流においても、そうした方向を目指す流れが強まっている状況を分析している。3 従業員は具体的にどのような意味において企業の効率性に寄与しているのか。小池論文は、従業員の技能形成がどのように形成され、またその技能の特殊性のもつ意味を、企業、業種、職種の三つに区別しながら、明らかにしている。4 鈴木論文は、これまでわが国の労働組合・従業員が企業において現実にどのような役割を果たしてきたか、またその役割がどのように変化しているかを分析している。