著者
稲毛 富士郎 古濱 和久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.335-340, 1997-05-25
被引用文献数
1 2

肝障害時における肝臓残存予備能を推定する指標として, ヒト臨床ではICGの最大除去速度(Rmax)が繁用されている. しかし, ICG Rmaxの測定には短時間内に異なる用量での血漿中消失率(R)を求める必要があるため, 頻回採血の煩雑さや, 侵襲という点から, 覚醒ラットへの応用はこれまで殆ど試みられていなかった. 今回, ラット尾静脈からの微量採血法を用いて, ICG Rmaxの測定を可能にし, 肝障害モデルでその有用性を検討した. 実験には雄SD系ラットを用いた. その結果, ICGの投与量は2.5, 5, 10あるいは20 mg/kgの3-4用量が適切であり, 採血時間は, 投与前, 投与4, 7および10分後が最適であった. また, 各ICGの負荷は4時間以上間隔をあければ残留はなく, 必要全採血量は0.5 ml前後であった. 本条件下で2種の部分肝切除ラットで残存肝重量とICG Rmaxの関係を調べたところ, 得られた残存値はほぼ一致していた. 次に, 四塩化炭素(CCl_4: 0.1および0.25 ml/kg)をラットに17週間(3回/週)皮下投与し, 同一個体でICG Rmaxと血清生化学パラメータの推移を検討したところ, CCl_4投与50日以降, ICG Rmaxの低下と血清アルブミンおよびコリンエステアーゼの低下に有意な相関性が認められた. 以上のことより, ラットにおいてもICG Rmax測定は肝臓残存予備能の推定に有意であると結論した.