著者
吉良 雄一 柴田 憲一 稲水 佐江子 中垣 英明 長野 祐久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.520-524, 2019 (Released:2019-08-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

症例は93歳の男性.意識障害で救急受診した.入院後に意識は改善したが,右上肢に振戦様の不随意運動を認めた.頭部magnetic resonance imaging(MRI)で左前頭頭頂葉のくも膜下腔はdiffusion weighted imaging(DWI)とfluid attenuated inversion recovery(FLAIR)で高信号を呈し,ガドリニウム(Gd)造影で軟膜を主体に増強効果がみられた.関節リウマチの既往はなく,関節痛や腫脹もないが,rheumatoid factor(RF),抗cyclic citrullinated peptides(CCP)抗体が高値だった.リウマチ性髄膜炎を疑い,ステロイドで加療したところ,不随意運動は改善し,MRIにおける髄膜病変の信号強度は低下した.関節症状を欠き,超高齢発症であることから,貴重な症例と考えられた.本症はMRI所見が特徴的で,ステロイドが有効であることから,早期の治療が可能と思われた.
著者
内藤 裕之 土井 光 稲水 佐江子 伊藤 聖 荒木 武尚
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.125-130, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は46 歳の男性である.感冒症状を契機に緊張性瞳孔,起立性低血圧,膀胱直腸障害,全身の発汗障害などの重度の自律神経障害を発症し,全身の温痛覚障害および脳神経系および四肢の運動障害を合併した.各種検査から節後性無髄線維の軸索変性が主体の急性自律性感覚性運動性ニューロパチーと診断した.免疫グロブリン療法およびステロイドパルス療法をおこなうも自律神経障害の改善は乏しく,予後不良な経過をたどった.頭部MRI 検査にて両側三叉神経の腫大および造影効果が確認され,表在覚の障害は著明であるにもかかわらず深部覚は保たれているといった,過去の報告にはない特徴的な所見をみとめた症例であった.