著者
柴田 憲一 向井 達也 中垣 英明 長野 祐久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.486-490, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
13

63歳男性.1か月前から発熱があり,左上肢の麻痺で入院した.MRIで右前頭葉,右頭頂葉,両側後頭葉に拡散強調像で高信号があり,急性期脳梗塞と診断した.左後頭葉病変はT2強調像で高信号だった.右中大脳動脈M1に狭窄が疑われた.塞栓症と考えられたが原因不明だった.胸部CTですりガラス影と,polymerase chain reaction(PCR)で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性だった.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による凝固異常が原因の可能性があった.
著者
柴田 憲一 山下 泰治 長野 祐久 由村 健夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.179-184, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
15

症例は40歳,男性で,頭痛,嘔吐を主訴に救急搬送された.性転換術による精巣摘出の既往があり,来院1カ月前から女性化目的に経口避妊薬を内服していた.来院時の神経学的所見では,軽度の意識障害のみで局所徴候はなかった.血液検査では凝固系の亢進があり,頭部CTでは直静脈洞,上矢状静脈洞,左横静脈洞に高吸収域を認めた.MRVでは左横静脈洞の信号消失と右横静脈洞の信号低下があり,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法を開始し,経過中に出血性梗塞を来したものの,再開通を得た.静脈血栓症の原因として経口避妊薬は知られているが,今回はさらにアンドロゲン低下による線維素溶解能の低下が素地にあったものと考えられた.
著者
倉田 賢生 井上 昇 近藤 聡子 斧沢 京子 谷 直樹 南 順也 大石 涼 長野 祐久 荒木 弘 桑野 博行 福岡市民病院COVID-19ワクチンワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.65-73, 2022-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本研究は,トジナメラン被接種者に出現した副反応の経日的な調査,および副反応の出現率に影響する共変量の探索を目的とした.2021年3月から4月において,福岡市民病院にて本ワクチンが接種された職員を対象に,注射部位および全身の副反応(13項目)を接種当日(day 1),day 2,day 3,day 4,およびday 5以降ごとに調査した.副反応の出現率は,ほとんどがday2において最高値を認めた.1回目接種後(および2回目接種後)のday2での出現率は,注射部位の疼痛が86.0%(86.9%),倦怠感が33.2%(76.9%),頭痛が14.3%(56.9%),筋肉痛が37.0%(57.2%),発熱が5.2%(51.1%),および関節痛が9.3%(43.9%)であった.2回目接種後は1回目と比較して副反応が遷延する頻度,および中等度以上の副反応(疼痛,腫脹,皮疹を除く)が出現した被接種者の割合がそれぞれ有意に高かった.各副反応の出現率に性差,年齢差,および接種回数による差のいずれかが存在することが認められた.特に全身倦怠感および頭痛の出現率は,女性,55歳以下の年齢および2回目接種のすべてにおいて有意に増加した.女性および2回目接種は,影響する副反応の出現率の上昇のみをもたらす共変量であった.本ワクチンの副反応の出現率は,2回目接種翌日における女性および55歳以下の被接種者において高いことが示された.本研究結果は,本ワクチン被接種者の副反応の予測,および接種日の設定の際に有用であると考えられる.
著者
吉良 雄一 柴田 憲一 稲水 佐江子 中垣 英明 長野 祐久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.520-524, 2019 (Released:2019-08-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

症例は93歳の男性.意識障害で救急受診した.入院後に意識は改善したが,右上肢に振戦様の不随意運動を認めた.頭部magnetic resonance imaging(MRI)で左前頭頭頂葉のくも膜下腔はdiffusion weighted imaging(DWI)とfluid attenuated inversion recovery(FLAIR)で高信号を呈し,ガドリニウム(Gd)造影で軟膜を主体に増強効果がみられた.関節リウマチの既往はなく,関節痛や腫脹もないが,rheumatoid factor(RF),抗cyclic citrullinated peptides(CCP)抗体が高値だった.リウマチ性髄膜炎を疑い,ステロイドで加療したところ,不随意運動は改善し,MRIにおける髄膜病変の信号強度は低下した.関節症状を欠き,超高齢発症であることから,貴重な症例と考えられた.本症はMRI所見が特徴的で,ステロイドが有効であることから,早期の治療が可能と思われた.