著者
古土井 光昭 小林 正樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.998-1017, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
22

関西国際空港は大阪湾南東部の泉州沖に,世界初の本格的な海上空港として建設された.建設予定地は水深が大きく,海底下には軟弱な沖積粘土層が20m以上堆積し,その下には数百mにわたって洪積粘土層が堆積している.したがって当初から沖積粘土層に対する地盤改良の実施や,洪積粘土層の圧密沈下が生じる深度方向の範囲やその大きさを見通すことが重要な課題であった.そのため事前に大深度のボーリング調査を行うなど,地盤工学的問題への対応に取り組んできた.本文は,関西国際空港の建設にかかる事前の調査や,事前予測に対する沈下の実態を記しつつ,沈下予測手法の変遷および現場における地盤挙動への対応について述べるものである.
著者
稲盛 真人 土井 光 立石 貴久 松岡 健 岩城 徹 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-31, 2009 (Released:2009-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は59歳の女性である.数年にわたる右側頭部痛のため当科を受診した.右側頭部に分枝状の圧痛をともなう索状腫瘤を触知し側頭動脈炎をうたがった.しかし,頭部MRIでは右側頭部皮下に多発性の結節を,超音波では低エコー域をともなう血流のない分枝状,索状腫瘤をみとめた.最終的に,腫瘤生検にて右耳介側頭神経に発症した孤発性神経線維腫と診断した.腫瘍は経過観察とし,疼痛は薬物療法にて著明に改善した.頭蓋外皮下組織に孤発性に発生した神経線維腫はまれであり,側頭動脈炎との鑑別や,三叉神経痛様の疼痛の原因として考慮する必要がある.
著者
土井 光則 岩城 久弥 柴田 尚明 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.522-526, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
3

和歌山県立医科大学附属病院では2003年1月からドクターヘリを運行しており,一般的な救急医薬品のみを携行し,現場で処置を行った後に医療機関へ搬送していた。しかし出動先で,迅速な気管挿管や救急処置を要する場合,麻薬や筋弛緩薬の投与ができればより効率的な救急診療が可能であるとのフライトドクターの要望により,救急担当薬剤師という立場でこれらの薬剤の管理方法や運用方法を考えた。薬剤の特性に基づいて携帯ケースを用意したり,持ち出し管理表を作成するなど,救急医療の現場において救急に特化した薬剤師が関与することで,救急医療の質の向上につながったと考える。
著者
内藤 裕之 土井 光 稲水 佐江子 伊藤 聖 荒木 武尚
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.125-130, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は46 歳の男性である.感冒症状を契機に緊張性瞳孔,起立性低血圧,膀胱直腸障害,全身の発汗障害などの重度の自律神経障害を発症し,全身の温痛覚障害および脳神経系および四肢の運動障害を合併した.各種検査から節後性無髄線維の軸索変性が主体の急性自律性感覚性運動性ニューロパチーと診断した.免疫グロブリン療法およびステロイドパルス療法をおこなうも自律神経障害の改善は乏しく,予後不良な経過をたどった.頭部MRI 検査にて両側三叉神経の腫大および造影効果が確認され,表在覚の障害は著明であるにもかかわらず深部覚は保たれているといった,過去の報告にはない特徴的な所見をみとめた症例であった.
著者
土井 光暢 石田 寿昌
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.120-126, 1990-05-25 (Released:2010-01-07)
参考文献数
20

Enkephalin is a morphine-like pentapeptide: Tyr-Gly-Gly-Phe-Xxx, Xxx=Met or Leu. To consider the relationship between the enkephalin conformation and the opioid receptor, the crystal structures of enkephalin analogues were analyzed by the X-ray diffraction method, and two characteristic forms were observed as the fundamental conformation of enkephalin, One is the β-turn structllre and the other the antiparallelly extended dimer (ED) structure. From the NMR and CD spectral studies, it was suggested that the β-turn and ED structures of enkephalin are the most probable conformations for the binding to μ-and δ-receptors, respectively. Further, the molecular-dynamics simulations indicated that these conformation are both advantageous in energetical term. Based on the insight of the enkephalin conformation, it was attempted to convert the μ-selective morphine toward δ-affinitive ligand by the dimerization.
著者
山本 秀人 月本 雅幸 松本 光隆 山本 真吾 土井 光祐 矢田 勉
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、和歌山県紀の川市の真言宗寺院興山寺所蔵文献の調査・研究を中核とする、和歌山県における真言宗寺院所蔵文献の実地調査と、それに基づく国語史的立場の考察・研究を主要目的とする。以下の調査研究活動を実施し、各成果があった。1.紀の川市興山寺の調査は、研究代表者・研究分担者・研究協力者の総勢13名で興山寺聖教調査団を組織し、経箱全94箱を分担して、文献毎(総計約6千点)の調書(書名、時代、装幀、寸法、訓点、奥書等調査)を作成する作業を行った。具体的には、15〜18年度に、原則4〜7日間の調査を計11回実施し(本科研支弁以前の14年度実施予備調査1回、15年度4月実施1回を含める)、18年度7月までに全94箱の調査を完了した。並行して、主要文献のデジタルカメラ撮影も行った(計129点)。これらに基づく、パソコンデータベースも18年度9月までに完成し、その冊子版文献目録も同10月に刊行した(私家版)。2.紀の川市興山寺のほか、田辺市高山寺、高野山(高野山大学図書館等)における調査も重点的に実施し、田辺市高山寺については主に主要文献の撮影を行い(計67点)、更に冊子版文献目録(本科研以前に一応の調査了、全73箱)を再調製して刊行した(私家版)。高野山においては注目される文献の実地調査を行った。ほか、京都(栂尾高山寺、仁和寺等)や東京(尊経閣文庫等)などにおける真言宗関係文献の調査も適宜実施した。3.以上の調査に基づく研究・考察は今後の課題とすべき点も多いが、例えば、平安時代書写を含む興山寺蔵大般若経写本六百帖は、仏教史上極めて貴重であることが判明した。国語学上重要な文献は高野山に多く、特にその数点について国語学上の研究を行い成果があった。更には和歌山県相互間の比較、京都地域等との比較の一層の進展も必要であり、今後の課題であるが、その基盤の構築は完了したと言って良い。
著者
土井 光祐
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

国語史資料として利用し得る新たな密教関係伝授聞書類を発掘すべく関西を中心とする古社寺、各所蔵機関の実地調査を行い、書誌調書の作成、写真撮影、本文転写を行って、資料の成立背景についての基礎的な分析を行い、国語史資料としての性格を考察した。主な調査機関は、東大寺図書館、仁和寺、神奈川県立金沢文庫、随心院、高山寺である。密教関係伝授聞書類は、密教の師資相承の中で成立するものなので、この観点から成立背景を確認することは不可欠の作業となる。特に、高山寺、仁和寺については、これまで相当に研究が進められてきており、その成果を参照しつつ個々の調査資料をその中に位置付けていくことを並行させつつ考察を進めた。この為には同一の教学環境で成立する関連諸資料との関係を確認することが必要であって、「金剛界念誦次第」「胎蔵界念誦次第」等の「次第」類や、諸尊法の類の加点本も併せて調査した。この過程でいくつかの重要資料を発掘することができたが、中でも仁和寺蔵「金剛界注」鎌倉時代初期写本は金剛界念誦次第の注釈書であって、仁和寺中興の祖である守覚法親王の自筆になるものであり、特に注目される。注釈には片仮名交り文も使用され、非常に詳細な墨点(仮名、ヲコト点(円堂点)、返点、声点、合符)が加えられている。一般に密教事相関係書で字句の訓詁注釈を行うものは極めて稀であるが、本資料によって従来確認の困難であった事相上の術語の鎌倉時代初期における確実な訓法が初めて確認される場合も多く、又、片仮名交り文の中には「ドコ」「デ(格助詞)」等、平安時代には一般に稀な新語の使用も認められる。本資料については、『訓点語と訓点資料』第99輯(平成8年3月発行)に全文の影印、翻字及び解題を掲載した。
著者
ホサイン モハヤド・アムザド 松浦 新吾郎 土井 光弘 仲村 一郎 石嶺 行男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.145-149, 2004-12-01
被引用文献数
1

万田31号は,作物の収量と品質を高める発酵自然植物凝集物である.万田31号がウコンの生育および収量に効果的であるかを調べるために,1999年5月から2000年2月にかけて琉球大学の亜熱帯フィールド科学教育研究センターの実験圃場で試験した.試験区を葉,土壌,葉と上壌の3つに分け. 100ppmの万田31号を15日間隔で10回施用した.ところが,1999年9月22日に強い台風が発生し,すべての圃場のウコンが大きな被害を受けた.しかしながら,台風後のウコンの回復力に万田31号施用区と無施用区では大きな違いが見られ,興味深い結果を示した.万田31号施用区と無施用区における台風後のウコンの被害の回復,生育および収量について調査した.その結果,万田31号施用区では,新しい分けつの発生と新芽が台風後15日目に確認でき,約70%の植物体は,万田31号の施用を続けることでウコンは順調に回復し,台風後,12月まで生育は良好であった.一方,万田31号施用区に隣接している無施用区においては,施用区から4〜11m離れた畝のウコン収量は,11m以上離れたウコンの収量よりも有意に高く,18m以上離れた畝の植物体は,台風後40日以内に枯死した.総じてウコンの収量は,万田31号施用区が無施用区に比べて約3倍高かった.これらの結果は,万田31号は台風によるストレスに効果的で,しかも,万田施用区近隣の植物体にまで有利に働くと考えられる.万田31号の効用は,激しい降雨による流水によって隣接する圃場へ移動すると推察された.