著者
野﨑 哲 稲葉 基高
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.409-413, 2023-11-30 (Released:2023-12-08)

症例は70代男性。来院3年前, 右冠動脈病変, 左前下行枝病変に対し経皮的冠動脈ステント留置を施行された。ムカデ咬症後, 全身の紅斑と掻痒及び呼吸困難感を自覚し救急搬送された。ムカデ咬症によるアナフィラキシーと診断された。アドレナリン投与後も呼吸困難感持続し, モニター心電図上 II 誘導でST上昇認めた。12誘導心電図で II,III,aVf のST上昇を認め急性冠症候群を疑った。緊急冠動脈造影直前に心停止となったが心肺蘇生術で心拍再開した。冠動脈造影で右冠動脈の完全閉塞を認めた。以前に留置されたステント部に透亮像を認め,ステント留置処置を行った。本症例は虫咬症,アレルギー反応を契機にステント内血栓,いわゆるKounis症候群Type3を発症したと考えられた。虫咬症という比較的頻度の高い傷病でも,アレルギーからアナフィラキシー,急性冠症群を合併する可能性を十分に念頭に置き診療することが肝要である。
著者
稲葉 基高 澤野 宏隆 林 靖之 甲斐 達朗
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.561-566, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

【目的】我が国の高齢化は急速に進行しており,救命救急センターに搬送される超高齢者も増加している。ADL(activities of daily living)不良や認知症も多く,ICUでの治療の適応を迷う場合もある。今回,集中治療を要した超高齢者の転帰と予後因子について検討した。【方法】2009年1月~2011年12月に救命救急センターICUに入院した90歳以上の非外傷性疾患の患者66人を対象に,患者背景,入院後の手術・処置,転帰を後方視的に調査した。【結果】年齢の中央値は92歳で,来院時にliving willを確認できた例は皆無であった。転帰は在院死19人,退院19人,転院28人であり,転退院した47人の6か月後,1年後の生存率はそれぞれ74.3%,54.7%と不良であった。単変量解析では男性,認知症,ADL不良,施設入所者が,多変量解析では男性とADL不良が予後規定因子であった。【結論】超高齢者の集中治療の適応に関しては年齢のみで判断することはできず,患者本人と家族の意思および患者背景を汲みながら症例ごとに慎重に方針を決定する必要がある。