著者
田中 愛子 伊藤 賀敏 鶴岡 歩 波多野 麻衣 吉永 雄一 重光 胤明 澤野 宏隆 一柳 裕司 西野 正人 林 靖之 甲斐 達朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.88-92, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
9

近年,心臓震盪は子どもが突然死する原因の1つとして徐々に認識されてきた.輿水らの報告では,心臓震盪は胸郭のコンプライアンスが大きい若年者に多く,Maronらの報告や国内例ともに18歳以下に多くみられる.当施設では最近3年間で3例の心臓震盪を経験した.症例1:41歳,男性.日本拳法練習中に胸部打撲を受け,心肺停止となった.初期波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF)であり,電気的除細動を含む蘇生処置を施行された.心肺停止17分後に心拍再開し,当施設に救急搬送された.搬送後も意識障害が遷延したため,脳低温療法を施行し,社会復帰を果たした.症例2:18歳,男性.フットサルの練習中,ボールを前胸部でトラップした際に倒れ,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置された.心肺停止6分後に心拍再開し,社会復帰した.症例3:27歳,男性.柔道の試合中,相手ともつれ合い倒れて,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置にて,心肺停止8分後に心拍再開し,社会復帰した.院外心肺停止のうち,心室細動に対しては,早期の電気的除細動が良好な神経学的転帰と関連しているといわれている.上記3症例からも,特にスポーツを行う場には自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の普及が急務と考えられる.
著者
小林 誠人 甲斐 達朗 中山 伸一 小澤 修一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.652-658, 2007-09-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

JR福知山線列車脱線事故における初動期の現場医療活動について報告し, 災害医療の観点から検証する。事故概要 : 2005年4月25日9時18分JR福知山線で列車脱線事故が発生した。死者107名, 負傷者549名 (重症139名) の多数傷病者発生事案であった。現場活動 : 我々は事故発生から約40分後の10時01分に現場到着した。先着医療チームとして2次トリアージと応急救護所における緊急処置に従事した。また医療チームが順次現着した後は医療チームのcommanderを担当し, 現場医療活動の統括にあたった。検証 : ドクターカーシステムが整備, 認知されており発災早期に医療チームの現場派遣が可能であった。また医療チームは統制がとられ適切にトリアージ, 現場治療がなされたと評価される。その結果, 科学的に証明することは種々の理由により困難ではあるが, preventable deathが回避できたと推測している。しかし, 初動期において各機関は十分な情報収集と共有化が行えなかった。その結果, 詳細な事故状況, 通信手段, 患者搬出の動線, 搬送手段 (救急車, ヘリなど) の状況, 搬送医療機関の選定, 医療チームの要請状況などの把握, 整備, 確立に時間を要した。今後は現場指揮本部を通じて消防, 警察と早期から十分に情報共有を行い, トリアージ, 処置, 搬送の一連の連鎖が途切れることなく行われることが期待される。まとめ : 災害医療は日常業務の延長にあり, 本事案で明らかとなった課題を検証し, 本邦における災害医療システムの構築, 整備, 啓蒙が望まれる。
著者
澤野 宏隆 重光 胤明 甲斐 達朗
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.52, no.March, pp.147-154, 2012-03-10 (Released:2012-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
11 4

要 旨:出血性ショックを伴った腹部内臓動脈瘤破裂12症例の治療について検討した。破裂動脈瘤部位は膵十二指腸動脈6例,結腸動脈2例,脾動脈2例,腎動脈1例,胃十二指腸動脈1例であった。輸液や輸血を含めた初期治療を行い,全例で造影CTと血管造影を施行した。治療はIVR(interventional radiology)を10例で,緊急開腹手術を2例で施行して全例を救命しえた。IVRは低侵襲でショック症例に対しても有効であるが,治療困難な症例では時期を逸せずに外科手術を検討することが必要である。
著者
甲斐達朗
雑誌
治療学
巻号頁・発行日
vol.36, pp.85-88, 2002
被引用文献数
1
著者
稲葉 基高 澤野 宏隆 林 靖之 甲斐 達朗
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.561-566, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

【目的】我が国の高齢化は急速に進行しており,救命救急センターに搬送される超高齢者も増加している。ADL(activities of daily living)不良や認知症も多く,ICUでの治療の適応を迷う場合もある。今回,集中治療を要した超高齢者の転帰と予後因子について検討した。【方法】2009年1月~2011年12月に救命救急センターICUに入院した90歳以上の非外傷性疾患の患者66人を対象に,患者背景,入院後の手術・処置,転帰を後方視的に調査した。【結果】年齢の中央値は92歳で,来院時にliving willを確認できた例は皆無であった。転帰は在院死19人,退院19人,転院28人であり,転退院した47人の6か月後,1年後の生存率はそれぞれ74.3%,54.7%と不良であった。単変量解析では男性,認知症,ADL不良,施設入所者が,多変量解析では男性とADL不良が予後規定因子であった。【結論】超高齢者の集中治療の適応に関しては年齢のみで判断することはできず,患者本人と家族の意思および患者背景を汲みながら症例ごとに慎重に方針を決定する必要がある。