著者
吉田 健太 小林 匠 窪田 智史 坂 雅之 蒲田 和芳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.175-182, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

距腿関節は背屈位で骨性の安定性が得られるとされるが,生体にて骨性の安定性を検証した報告は存在しない。本研究では,距腿関節最大背屈位において,回旋方向の骨性の安定性が不完全な状態を『足関節背屈位動揺性(AUM)』と定義し,若年アスリートを対象とした存在率の調査を行い,足関節背屈内旋エクササイズが動揺性に及ぼす効果を検証した。他動背屈内旋テスト・荷重位内旋テストにより,足関節背屈位動揺性は高い存在率を示した。エクササイズにより足関節背屈位動揺性の軽減傾向は認められたが,パフォーマンスに有意な改善は認めなかった。若年アスリートの多くにAUM が存在し,足関節背屈内旋エクササイズが動揺性を軽減させる可能性が示唆された。
著者
新井 真 清水 洋治 吉田 匡志 窪田 智史 竹井 仁
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3447, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】スポーツ動作中のジャンプ着地における、膝伸展機構への過剰な牽引力や脛骨前方移動による靭帯のストレスを誘引する要因の一つとして、着地時の大腿四頭筋の過活動がある.大腿四頭筋の過活動の抑制にはハムストリングスの筋活動が重要であり、両筋のバランスを評価する指標として大腿四頭筋とハムストリングスの筋力比(H/Q比)がよく用いられる.H/Q比と着地動作の研究では、筋電図や床反力を比較したものは多いが、着地時の矢状面での関節角度について言及したものは少ない.そこで本研究では、膝屈曲・伸展筋力の測定からH/Q比を求め、その値とジャンプ着地時の矢状面における下肢・体幹の屈曲角度との関係を検討することを目的とした.【方法】対象は、健常男性15名(平均年齢21.8歳)とした.ヘルシンキ宣言に基づき、実験の趣旨を説明し書面にて同意を得た.着地課題は30cmと40cm台からの右下肢片脚跳び後の左下肢片脚着地とした.上肢の影響を取り除くため、両手で体幹側部を把持させた.また、飛び降り動作の滞空時間を統一するため、台上での片脚踏切から着地までを0.5秒に規定した.この動作を側方からビデオカメラで撮影し、Frame-DIASIV(DKH社製)を用いて着地時の足・膝・股・体幹の角度を解析した.膝関節の最大屈曲時の各関節角度を着地時の角度とし、静止立位時の角度との変化量を求めた.等速性膝屈曲・伸展筋力は等速性筋力測定装置(BIODEX SYSTEM3)を用いて測定し、角速度は60°にて求心性収縮と遠心性収縮を各5回測定した.この値からH/Q比を算出し、関節角度との相関をSPSS16.0Jを用いて検定した.【結果】着地時の関節平均角度[°]は30cm、40cm台でそれぞれ足関節背屈27.0±7.7、29.8±6.0、膝関節屈曲99.6±13.8、92.8±12.5、股関節屈曲56.1±17.0、65.0±18.7、体幹前傾17.3±13.8、22.2±13.9であった.また、H/Q比[%]はジャンプ着地時の収縮様式を用い、膝屈筋の求心性筋力、伸筋の遠心性筋力の値を用いたところ平均40.9±9.8であった.H/Q比(x)と各関節角度(y)の関係は、30cm台における足関節背屈(y=1.42x+33.81,R2=0.60,p=0.03)、40cm台における股関節屈曲(y=0.96x+25.07,R2=0.40,p=0.01)、体幹前傾(y=0.59x-1.39,R2=0.30,p=0.04)にそれぞれ正の相関がみられた.【考察】30cm台においてH/Q比と足関節背屈角度との間に正の相関があることからH/Q比が低値なほど、背屈が小さくなることが示唆された.また40cm台での着地において、H/Q比と体幹前傾・股関節屈曲角度に正の相関がみられた.このことからH/Q比が低値なほど、体幹がuprightな姿勢で着地動作を行うために後方重心になり、膝伸展モーメントが増大し、大腿四頭筋に過負荷がかかる可能性が示唆された.よって、低い台からの着地における外力吸収は足関節が主であり、高い台では股関節屈曲・体幹前傾が参加することで姿勢を制御していると考える.