著者
中村 直樹 伊藤 一也 蒲田 和芳 秋山 寛治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AeOS3001, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 腰痛の生涯有症率は49-70%,時点有症率は12-30%とされる(van Tulder et al.2002)。その原因は十分解明されておらず、また予防法も未確立である。 Chest grippingは上部腹筋群の過緊張により下位胸郭の展開が制限される状態(下位胸郭横径拡張不全)のことである(Lee)。これは胸椎運動を制限し,腰椎運動への負荷の増大をもたらすことで腰痛の一因となり得ると考えられている。解剖学的にChest grippingに拮抗する作用を持つと考えられる筋として下後鋸筋(SPI)が挙げられる。SPIはT11-L2,3に起始し,下位肋骨に付着する。Vilensky et al.は上後鋸筋(SPS)とSPIに関する文献のレビューにより,SPSとSPIのどちらも呼吸機能がないと示唆すると結論付けた(Vilensky et al. 2001)。しかし,これらは解剖学的な見解であり,生体内で下後鋸筋がどのような役割を有しているのかは不明である。本研究では超音波と表面筋電図(SEMG)を用い,健常者における下後鋸筋の運動学的役割を調査すること,またSEMGとワイヤ電極による筋電図を比較してSEMGの妥当性を検証することを目的とした。【方法】 対象者の包含基準は,18-30歳,男性,健常者であり,除外基準は腰痛,医学的リスク,精神障害者とした。SEMGを用い,右側の下後鋸筋,広背筋,胸部脊柱起立筋,腰部脊柱起立筋,外腹斜筋の最大努力時の筋活動を測定した。検査試技は体幹右回旋,左回旋,伸展,側屈,胸椎伸展,プッシュアップとした。次に,超音波を用いて安静時と収縮時の右側下後鋸筋を撮像した。検査試技は安静,体幹右回旋,胸椎伸展,プッシュアップとした。測定肢位,筋力発揮の指示はSEMGと同様とした。最後にワイヤ電極を用い,一人の対象者において広背筋活動と分離した下後鋸筋の単独活動が可能かどうかを調査した。検査試技は単独収縮が可能と思われる四つ這い位での上肢挙上,側臥位での体幹回旋,ATM2 (Backproject corp.)の骨盤・胸椎ベルトを用いた最大下努力での体幹後屈動作とした。いずれも各試技5回測定し,休憩時間は各試技間30秒とした。統計は統計解析ソフトPASW statistics 18を用いた。各試技における下後鋸筋の作用を評価するために,%MVC,SPI筋厚の記述的統計量として平均値,95%信頼区間を算出した。また,%MVC,SPI筋厚調査の再現性を調べるために級内相関係数ICC(1,3)を算出した。【説明と同意】 ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した10名を対象とした。【結果】 筋活動,下後鋸筋筋厚のICC(1,3)はそれぞれ0.987(95%CI:0.962-0.996),0.947(95%CI:0.851-0.986)と高い再現性を示した。下後鋸筋は体幹回旋で筋活動の増加,筋厚の増大を示し,広背筋とほぼ同様のパターンであった。下後鋸筋の安静時,同側回旋時の筋厚はそれぞれ3.49mm(3.13-3.84mm),4.98mm(4.15-5.81mm)であった。下後鋸筋の同側回旋時の%MVCは75.1%(58.3-91.9%)であった。ワイヤ電極により,下後鋸筋単独収縮を呈した動作は、側臥位での体幹同側回旋,四つ這い位(脊椎伸展位)での上肢屈曲,ATM2伸展抵抗運動であった。SEMGとワイヤ電極は最初の2動作で一致した活動パターンを示した。【考察】 本研究では四つ這い位で脊柱過伸展位での上肢屈曲および側臥位での体幹回旋において,下後鋸筋の独立した活動が得られた。前者は,上肢屈曲により広背筋の活動を抑制し、脊柱過伸展位を保つことにより腹斜筋の活動を抑制したことから、下位胸郭の回旋の役割を持つ下後鋸筋の独立した活動が誘発されたためと考察される。後者は,上位胸郭に抵抗を加えたことにより、広背筋と腹斜筋の活動が抑制されたと解釈された。以上の結果より、下後鋸筋は同側下位肋骨を後方に引く作用を有し、片側性の活動は下位胸椎の回旋、両側性の活動は下位胸郭の横径拡張および胸椎伸展に貢献すると推測される。本研究では超音波画像の観察下で,ワイヤ電極を筋腹内に埋設した。導出された筋電図は,超音波画像における筋厚増大と一致した。また,その活動はSEMGにおいても検出することが可能であることが示された。一方,本研究の限界として,ワイヤ電極を用いた測定におけるサンプルサイズ不足が挙げられる。以上より,今後下後鋸筋に関する筋電図学的研究において表面電極を用いることが可能であると結論付けられる。また、下後鋸筋の両側性の活動は下位胸郭の横径拡張の主働筋になりうることが示唆され、これが下位胸郭の横径拡張制限であるchest grippingに対する拮抗的な作用を発揮することが期待される。【理学療法学研究としての意義】 下後鋸筋の片側性の活動は下位胸郭を後方に引く作用を有し,両側性の活動は下位胸郭の展開の主働筋となることが示唆された。今後,後屈時に増悪する腰痛への応用が期待される。
著者
西村 朋美 蒲田 和芳 横山 茂樹 杉野 伸治 一瀬 浩志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0897, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】肩関節挙上動作における肩甲上腕リズムについてはInman(1944)以降、それに付随する脊椎伸展運動についてはKapandji以降、数多くの文献に記載されている。しかしながら、肩甲上腕リズムと脊椎伸展の運動学的な連鎖については十分検証されていない。我々は「肩甲骨が胸郭上で安定した肢位を得るには接触面積を増大させる必要があり、脊椎伸展は肩甲骨の位置と安定性を最適化するための胸郭の形状変化に貢献する」という仮説を立てており、本研究では脊椎伸展運動の主要な貢献部位を特定することを目的とした。【方法】本研究は対照群のない縦断研究であり、対象の選択基準を脊柱及び肩関節に既往のない20代男性10名(平均年齢25.4±2.5歳、平均体重60.7±6.34kg、平均身長171.0±6.27cm、平均BMI 20.78±2.09)とした。測定項目は、肩関節屈曲肢位0°30°60°90°120°150°、最大屈曲位における脊柱矢状面弯曲とした。脊椎弯曲の計測にはインデックス社製スパイナルマウスを用い(文献1)、第1胸椎から第3仙椎間の各分節角度を2回計測して各セグメントの屈曲角の平均値を求めた。得られた結果から、上位胸椎、下位胸椎、および腰椎の3つのセグメントの屈曲角度の合計を算出し、肩関節の肢位による弯曲の変化を比較した。統計分析には分散分析およびTukey/Kramer法を用い、有意水準をp<0.05とした。【結果】下位胸椎後弯角では分散分析で有意(p<0.05)であり、屈曲0度と比較して最大屈曲位において有意な後弯角の減少(脊椎伸展)が認められた。上位胸椎および腰椎には有意な運動は認められなかった。【考察】肩関節最大挙上に伴う脊椎伸展の主要貢献部位は下位胸椎であることが示された。スパイナルマウスについては、後弯に対して信頼性高く、前弯を過小評価することが示された(文献1)。しかしながら、前弯部位であっても個人内の変化は十分検出できるため、我々は腰椎伸展が生じないという結果は信頼性のある結果であると解釈している。本研究の対象は、肩関節や脊椎に疾患のない健常者若年成人であり、この結果は正常な肩関節運動における脊椎・肩甲骨リズムを反映しているものと結論付けられる。今後、下位胸椎の伸展が胸郭の形状および胸郭と肩甲骨の接触面積への貢献について検証を進める必要がある。【臨床的意義】この研究の結果、肩関節疾患の治療においては、最大挙上位を獲得させるためには脊椎の中でも特に下位胸椎の伸展可動性および胸椎部の脊柱起立筋の機能改善が必要であることが示唆された。また下位胸椎伸展に伴う胸郭の可動性についても考慮が必要である。【引用文献】 文献1:松尾礼美ら(第41回日本理学療法学術大会、2006)
著者
濱田 孝喜 貞清 正史 坂 雅之 竹ノ内 洋 伊藤 一也 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】野球では外傷よりも野球肩などスポーツ障害の発生率が高いことが知られている。近年,肩後方タイトネス(PST)に起因する肩関節内旋可動域制限の存在が示され,PSTと投球障害肩発生との関連性が示唆されたが,高校野球においてPSTおよび肩関節可動域制限の予防策の実施状況は報告されていない。また,予防策実施と肩障害発生率との関係性は示されていない。そこで本研究の目的を高校野球において,肩関節可動域制限の予防策の実施状況および予防策実施と肩関節痛の存在率との関連性を解明することとした。【方法】長崎県高等学校野球連盟加盟校全58校へアンケート用紙を配布し,アンケート調査を高校野球指導者と選手に実施した。指導者には練習頻度・時間,投球数に関する指導者の意識調査,選手には肩障害の有無・既往歴,ストレッチ実施状況・種類などを調査した。調査期間は平成25年1月から3月であった。【倫理的配慮,説明と同意】アンケート調査は長崎県高校野球連盟の承諾を得た上で実施された。アンケートに係る全ての個人情報は調査者によって管理された。【結果】1.選手:対象58校中27校,673名から回答を得た。対象者は平均年齢16.5歳,平均身長170.1cm,平均体重66.1kgであった。アンケート実施時に肩痛を有していた者は全体の168/673名(24.9%)であり,肩痛の既往がある者は全体の367/673名(54.5%)と約半数にのぼった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は147/167名(88%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は422/490名(86%)であった。投手のみでは,肩痛を有する者が22/133名(16.2%),肩痛の既往は82/136名(60.3%)であった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は20/22名(90.9%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は107/111名(96.4%)であった。2.指導者:58校中24校,33名から回答を得た。練習頻度では,週7日が9/24校(38%),週6日が13/24校(54%),週5日が8%(2校)であった。練習時間(平日)では,4-3時間が14/24校(58%),2時間以下が9/24校(38%),回答なしが1校であった。練習時間(休日)では,9時間以上が2/24校(8%),7-8時間が8/24校(33%),5-6時間が9/24校(38%),4-3時間が5/24校(21%)であった。投球数(練習)では50球以下が3%,51-100球が24%,101-200球が24%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。投球数(試合)では50球以下が0%,51-100球が9%,101-200球が42%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。3.指導者意識と肩痛:投手の練習時全力投球数を制限している学校は12校,制限ない学校は12校であった。全力投球数制限ありの投手は45名で,肩痛を有する者は8/45名(18%),肩痛が無い者は37/45名(82%)であった。全力投球数制限なしの投手は60名で,肩痛を有する者は11/60名(24%),肩痛が無い者は49/60名(75%)であった。【考察】肩関節痛を有する者は全体の24.9%,投手のみでは16.2%であり,肩痛の既往歴が全体の51.5%であった。ストレッチ実施状況は肩痛の有無に関わらず約80%の選手が実施していた。肩関節可動域制限に対してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチによる肩関節可動域改善効果が報告されている。本研究ではストレッチ実施の有無を調査しているためストレッチ実施方法の正確性は明らかではないが,ストレッチのみでは投球障害肩予防への貢献度は低いことが考えられる。障害予防意識に関して練習時・試合時共に制限をしていない指導者が48%であった。高校生の全力投球数は1日100球以内と提言されているが,部員が少数である高校などの存在は考慮せざるを得ない。練習時全力投球数を制限している者のうち肩痛を有する者は18%,制限の無い者のうち肩痛を有する者は24%であった。1試合または1シーズンの投球数増加は肩障害リスクを増大させると報告されている。アンケート調査を実施した期間はオフシーズンであり,指導者の投球数に関する意識が選手の肩障害に関与する可能性があると考えられる。以上より,高校野球選手において一定の効果があるとされるストレッチを約8割の選手が実施していたにも関わらず肩痛の存在率は高かった。この原因としてストレッチ方法の正確性及びオーバーユースや投球動作など他因子との関連が考えられる。今後はこれらの関係性を明確にし,障害予防方法の確立が重要課題である。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場において障害予防は重要課題である。これまで障害予防方法の検証はされてきたが,現場ではその方法が浸透していないことが示唆された。医学的知識や動作指導が可能な理学療法士の活躍がスポーツ現場での障害予防に必要である。
著者
生田 太 出口 広紀 岡本 貢一 名古屋 幸司 佐藤 史也 水沼 由貴 金子 礁 新井 恵実 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.339-344, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)を有する高齢者の膝内転モーメントや活動性に対するRRR(膝回旋エクササイズ)プログラムの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕膝OAを有する女性高齢者を無作為に割り付け,被検者数は慣習エクササイズ群12名,RRRプログラム群9名であった.〔方法〕介入前後で歩行時の膝内転モーメントとKOOS,SF-36の計測を実施した.〔結果〕SF-36はRRRプログラム群の方が有意に向上した.KOOSと膝内転モーメントに群間差は認められなかったが,膝内転モーメントはRRR群にて減少傾向であった.〔結語〕RRRプログラムは膝OA患者の生活向上に効果的であることが示された.
著者
坂本 飛鳥 星 賢治 岸川 由紀 田中 真一 蒲田 和芳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 2020-04-30 (Released:2020-05-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

[目的]妊娠・出産に関連する骨盤痛が妊娠中・産後女性の歩行に及ぼす影響を,文献レビューにより明らかにすることを目的とした。[方法]6つの文献データベースとハンドサーチにて検索した論文について,採択基準(妊娠期または産後の骨盤痛を有する女性の歩容の特徴)をもとに,該当論文を1)歩行速度,2)歩隔・歩幅・歩行周期,3)骨盤-胸郭,体幹,股関節,COP の3つの項目について整理した。文献の評価にはRisk of Bias Assessment Tool for Nonrandomized Studies (RoBANS)を使用した。[結果]採択論文は6編であった。6編より,妊娠中に骨盤痛があると歩行速度は低下し,歩幅は短く,両脚支持期の延長を認めたが,歩隔には有意差を認めなかった。胸郭・骨盤回旋の動きは増大し,骨盤の前後傾と股関節伸展可動域は減少した。[結論]妊娠中に骨盤痛があると顕著な歩容の変化が生じる。一方,産後における骨盤痛の歩容への影響は不明である。
著者
蒲田 和芳 外間 源亮 三田 和広 生田 太 米田 佳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.15-19, 2013 (Released:2013-09-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2

変形性膝関節症(膝OA)では下腿が外旋位にあり,下腿内旋位でのエクササイズは即時的に膝OA における膝内反アライメント,膝関節屈曲および伸展可動域,歩行時痛を改善したと報告された。この効果発現のメカニズムの検証を進める上で,膝OA と健常膝の類似点と相違点を明らかにする必要がある。本研究では,下腿内旋位でのレッグプレス運動が,若年健常女性の歩行時足圧中心(COP)軌跡および下腿回旋可動域に及ぼす効果を解明することを目的とした。健常女性20名20膝を,無作為に下腿内旋エクササイズ群と下腿外旋エクササイズ群に割り付けた。それぞれ,下腿内旋位または外旋位でのレッグプレス運動を2週間実施した。介入前後に下腿回旋可動域,歩行時COP を測定した。下腿内旋エクササイズ群では下腿内旋可動域が拡大し,歩行立脚後期におけるCOP は内側へ偏位した。下腿内旋位でのレッグプレス運動は,若年女性の健常膝において下腿内旋可動域拡大と歩行中のCOP 内側偏位をもたらす可能性が示唆された。今後,膝OA を対象とした同様の研究を実施する。
著者
渡邉 五郎 藤平 知佳音 星 賢治 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.593-599, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
31

〔目的〕ハイヒール着用での歩行は,しばしば歩容の変化や足部・足関節の疼痛,捻挫などの外傷を引き起こす.本研究の目的を,ハイヒール用インソール(IHS)が,ハイヒール着用中の立位バランス能力向上に及ぼす効果を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象者は若年健常女性20名で,ハイヒール着用下で,①開眼片脚立位,②開眼片脚スクワット,③開眼足踏み動作の3試技を重心動揺計上で行った.各試技での総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,前後・左右の位置ベクトルを記録し,IHSの有無で比較した.〔結果〕IHSの使用により,開眼片脚スクワットと開眼足踏み動作で重心動揺が有意に減少した.〔結語〕IHSの使用はハイヒール着用下での階段降段,歩行の安定性向上につながる可能性が示唆された.
著者
吉田 健太 小林 匠 窪田 智史 坂 雅之 蒲田 和芳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.175-182, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

距腿関節は背屈位で骨性の安定性が得られるとされるが,生体にて骨性の安定性を検証した報告は存在しない。本研究では,距腿関節最大背屈位において,回旋方向の骨性の安定性が不完全な状態を『足関節背屈位動揺性(AUM)』と定義し,若年アスリートを対象とした存在率の調査を行い,足関節背屈内旋エクササイズが動揺性に及ぼす効果を検証した。他動背屈内旋テスト・荷重位内旋テストにより,足関節背屈位動揺性は高い存在率を示した。エクササイズにより足関節背屈位動揺性の軽減傾向は認められたが,パフォーマンスに有意な改善は認めなかった。若年アスリートの多くにAUM が存在し,足関節背屈内旋エクササイズが動揺性を軽減させる可能性が示唆された。
著者
濱田 孝喜 貞清 正史 坂 雅之 竹ノ内 洋 伊藤 一也 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】野球では外傷よりも野球肩などスポーツ障害の発生率が高いことが知られている。近年,肩後方タイトネス(PST)に起因する肩関節内旋可動域制限の存在が示され,PSTと投球障害肩発生との関連性が示唆されたが,高校野球においてPSTおよび肩関節可動域制限の予防策の実施状況は報告されていない。また,予防策実施と肩障害発生率との関係性は示されていない。そこで本研究の目的を高校野球において,肩関節可動域制限の予防策の実施状況および予防策実施と肩関節痛の存在率との関連性を解明することとした。【方法】長崎県高等学校野球連盟加盟校全58校へアンケート用紙を配布し,アンケート調査を高校野球指導者と選手に実施した。指導者には練習頻度・時間,投球数に関する指導者の意識調査,選手には肩障害の有無・既往歴,ストレッチ実施状況・種類などを調査した。調査期間は平成25年1月から3月であった。【倫理的配慮,説明と同意】アンケート調査は長崎県高校野球連盟の承諾を得た上で実施された。アンケートに係る全ての個人情報は調査者によって管理された。【結果】1.選手:対象58校中27校,673名から回答を得た。対象者は平均年齢16.5歳,平均身長170.1cm,平均体重66.1kgであった。アンケート実施時に肩痛を有していた者は全体の168/673名(24.9%)であり,肩痛の既往がある者は全体の367/673名(54.5%)と約半数にのぼった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は147/167名(88%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は422/490名(86%)であった。投手のみでは,肩痛を有する者が22/133名(16.2%),肩痛の既往は82/136名(60.3%)であった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は20/22名(90.9%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は107/111名(96.4%)であった。2.指導者:58校中24校,33名から回答を得た。練習頻度では,週7日が9/24校(38%),週6日が13/24校(54%),週5日が8%(2校)であった。練習時間(平日)では,4-3時間が14/24校(58%),2時間以下が9/24校(38%),回答なしが1校であった。練習時間(休日)では,9時間以上が2/24校(8%),7-8時間が8/24校(33%),5-6時間が9/24校(38%),4-3時間が5/24校(21%)であった。投球数(練習)では50球以下が3%,51-100球が24%,101-200球が24%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。投球数(試合)では50球以下が0%,51-100球が9%,101-200球が42%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。3.指導者意識と肩痛:投手の練習時全力投球数を制限している学校は12校,制限ない学校は12校であった。全力投球数制限ありの投手は45名で,肩痛を有する者は8/45名(18%),肩痛が無い者は37/45名(82%)であった。全力投球数制限なしの投手は60名で,肩痛を有する者は11/60名(24%),肩痛が無い者は49/60名(75%)であった。【考察】肩関節痛を有する者は全体の24.9%,投手のみでは16.2%であり,肩痛の既往歴が全体の51.5%であった。ストレッチ実施状況は肩痛の有無に関わらず約80%の選手が実施していた。肩関節可動域制限に対してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチによる肩関節可動域改善効果が報告されている。本研究ではストレッチ実施の有無を調査しているためストレッチ実施方法の正確性は明らかではないが,ストレッチのみでは投球障害肩予防への貢献度は低いことが考えられる。障害予防意識に関して練習時・試合時共に制限をしていない指導者が48%であった。高校生の全力投球数は1日100球以内と提言されているが,部員が少数である高校などの存在は考慮せざるを得ない。練習時全力投球数を制限している者のうち肩痛を有する者は18%,制限の無い者のうち肩痛を有する者は24%であった。1試合または1シーズンの投球数増加は肩障害リスクを増大させると報告されている。アンケート調査を実施した期間はオフシーズンであり,指導者の投球数に関する意識が選手の肩障害に関与する可能性があると考えられる。以上より,高校野球選手において一定の効果があるとされるストレッチを約8割の選手が実施していたにも関わらず肩痛の存在率は高かった。この原因としてストレッチ方法の正確性及びオーバーユースや投球動作など他因子との関連が考えられる。今後はこれらの関係性を明確にし,障害予防方法の確立が重要課題である。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場において障害予防は重要課題である。これまで障害予防方法の検証はされてきたが,現場ではその方法が浸透していないことが示唆された。医学的知識や動作指導が可能な理学療法士の活躍がスポーツ現場での障害予防に必要である。
著者
大場 裕之 馬場 孝祐 橋岡 恵子 伊藤 一也 森本 将司 朝日 大介 貞松 俊弘 久我 哲也 秋山 寛治 蒲田 和芳
出版者
Japan Society of Health Promotion and Physical Therapy
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.113-117, 2013

要旨:ハイヒール用インソールの使用が,ハイヒール着用時の前足部荷重圧と運動機能へ与える影響を解明することを目的とした。ハイヒールを常用しない健常女性8名を対象とし,ヒール高9㎝のハイヒールに対して,ハイヒール用インソール(リアライン<sup>Ⓡ</sup>・インソール・フェム,以下フェム)の有無で片脚立位時間,片脚連続ジャンプ回数,片脚立位時における前足部最大圧および前足部平均圧,階段昇降時間を比較した。片脚立位持前足部最大圧が統計学的有意に減少した。フェム使用による主観的な不快感を訴えたものはいなかった。フェムの使用がハイヒール着用時の前足部の疼痛減少につながる可能性を示した。
著者
西中 直也 近 良明 Banks Scott A 三原 研一 鈴木 一秀 大田 勝弘 牧内 大輔 松久 孝行 筒井 廣明 杉本 英治 蒲田 和芳
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.509-512, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16

The glenoid bare spot commonly is observed in the adult shoulder. Carter et al. proposed that cartilage thickness was affected by normal homeostatic loads. The purpose of this study was to measure glenohumeral translation during shoulder abduction in order to explore development of the glenoid bare spot. 10 healthy shoulders (average 31.1 years old) were studied. 3D models of the scapula and humerus were created from CT scans. Motions were recorded with fluoroscopy during active abduction in neutral rotation for unloaded and a 3kg loaded trial. 3D motions were determined using model-based 3D-to-2D registration. Humeral translation was referenced in the superior/inferior direction to the assumed location of the bare spot (center of the circle described by the bony margins of the inferior glenoid). The bare spot location averaged 4.3mm inferior to the superior/inferior midpoint of the glenoid. Glenohumeral contact was 2.6 and 3.1mm superior to the bare spot for unloaded and loaded conditions with the arm at the side. The humeral head moved upward gradually with abduction to 4mm above the bare spot above 70° abduction (p>0.05, 0 vs 3kg). The glenoid surface stabilizes humeral head translation. Carter et al. suggested that cartilage grew thickest with high mechanical demands (compression and sliding) and thinner where demands were low. Humeral translation away from the bare spot with abduction suggests that lower loads were experienced when the humeral head was near the bare spot and larger loads were experienced with humeral translation away from the bare spot. These kinematic observations were consistent with Carter's framework for cartilage growth and provided a plausible explanation for the development of the glenoid bare spot.
著者
中村 直樹 伊藤 一也 蒲田 和芳 秋山 寛治
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.91-95, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的:“チェストグリッピング”は上部腹筋群の緊張による下位胸郭拡張制限を指し,腰痛の一因とされている。本研究はチェストグリッピングの拮抗筋と考えられる下後鋸筋に関して,健常者の体幹運動中における筋活動を検証することを目的とした。対象:健常男性1名を対象とした。方法:①端座位でのプッシュアップ,②端座位での体幹右回旋,③端座位での体幹左回旋,④端座位での胸椎伸展,⑤腹臥位での体幹伸展,⑥左下側臥位での体幹右側屈,⑦左下側臥位での体幹右回旋,⑧四つ這い位での右上肢挙上,の8試技における右下後鋸筋の筋活動を表面電極およびワイヤー電極を用いた筋電計にて測定した。結果:端座位での体幹右回旋,四つ這い位での右上肢挙上,左下側臥位での体幹右回旋時において右下後鋸筋は高い活動を生じた。結語:下後鋸筋は体幹回旋時に片側性の活動を示すことから,下位肋骨を後方へ引く能力を有すると推測される。
著者
渡邉 五郎 藤平 知佳音 星 賢治 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.593-599, 2019

<p>〔目的〕ハイヒール着用での歩行は,しばしば歩容の変化や足部・足関節の疼痛,捻挫などの外傷を引き起こす.本研究の目的を,ハイヒール用インソール(IHS)が,ハイヒール着用中の立位バランス能力向上に及ぼす効果を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象者は若年健常女性20名で,ハイヒール着用下で,①開眼片脚立位,②開眼片脚スクワット,③開眼足踏み動作の3試技を重心動揺計上で行った.各試技での総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,前後・左右の位置ベクトルを記録し,IHSの有無で比較した.〔結果〕IHSの使用により,開眼片脚スクワットと開眼足踏み動作で重心動揺が有意に減少した.〔結語〕IHSの使用はハイヒール着用下での階段降段,歩行の安定性向上につながる可能性が示唆された.</p>
著者
増田 圭太 谷増 優 今村 亮太 浦田 侑加 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P2351, 2010

【目的】<BR>腰痛症は、人類の80%が生涯に1度は経験するとされ、我々が最も身近にする症状のひとつである。腰痛症全体に占める割合が多い非特異的慢性腰痛に対して、効果的かつ再現性の高い治療方法の確立が望まれている。慢性腰痛症の原因の一つとして骨盤の非対称的なアライメントが指摘されてきた(Subotnick1985、DonTigny1990)が、現在まで十分なコンセンサスは得られていない。<BR>骨盤リアライメントを目的としたエクササイズプログラムとして、ストレッチポール(LPN社)を用いた骨盤コンディショニングプログラム(PelCon)(平沼2008)がある。これまでストレッチポールの効果として、脊椎のリアライメント効果(杉野2006)、胸郭拡張機能改善(秋山2007)、肩関節の柔軟性(森内2007)、胸郭スティッフネス低下(伊藤2007)などの報告がある。一方、骨盤帯への効果に関して下肢発揮筋力の左右差減少(増田2008)の報告があるが、骨盤リアライメント効果について、定量的評価はなされていない。<BR>本研究の目的は、PelConが骨盤アライメントに及ぼす効果を検証することであった。研究仮説は、「PelConは骨盤非対称アライメントを対称化させる」とした。<BR>【方法】<BR>取込基準は、健常な成人男女20-65歳であり、除外基準は、急性腰痛、手術歴、内科的リスク、脳障害、精神障害、コミュニケーション障害がある者とした。同意書に署名した105名(男性103名、女性2名)を対象者とした。<BR>本研究は無比較介入研究であり、介入は骨盤アライメント対称化を目的とするPelConとした。観察因子である骨盤の圧分布の計測には、Win-Pod足底圧分布測定装置(フィンガルリンク社)を用いた。計測は、介入直前と介入直後に実施した。約10分間の介入終了後、アウトカム測定までは安静状態を保ち、全員が介入後30分以内に計測を終了した。<BR>測定肢位は、(1)股関節45度屈曲・膝関節90度屈曲の背臥位において測定者が両膝を左右方向へ操作して行う骨盤ローリング運動、(2)膝屈曲位の長座(体育座り)にて測定者誘導のもとで行う骨盤前後傾運動、の2種類とした。各運動を5回連続して行う間、骨盤圧分布を継続測定した。(2)において仙骨遠位部が特定可能であった74名を対象に、両坐骨および仙骨のピーク圧から描かれる三角形に基づき、両坐骨中心に対する仙骨位置の偏位割合を介入前後で比較した。測定結果は、圧力解析プログラム(フィンガルリンク社)により解析し、左右の骨盤圧分布から、左右の寛骨のピーク圧を介入前後で比較した。<BR>統計学的検定には対応のあるt検定を用い、有意水準はP<0.05とした。<BR>【説明と同意】<BR>研究の内容について事前説明を行ない、ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した者を対象者とした。<BR>【結果】<BR>対象者全員が非対称的な圧分布を示していた。寛骨の最大圧の左右差は、(1)骨盤ローリング運動については介入前84.9 ± 63.0 g/cm<SUP>2</SUP>、介入後57.8 ± 50.0 g/cm<SUP>2</SUP>であり、介入前後で有意な減少が認められた(P<0.001)、(2)骨盤前後傾運動については、介入前57.4 ± 58.8 g/cm<SUP>2</SUP>、介入後52.6 ± 44.4 g/cm<SUP>2</SUP>で、有意差は認められなかった(P=0.41)。また、(2)において両坐骨中心に対する仙骨位置の偏位割合は介入前10.3 ± 13.1 %、介入後9.5 ± 15.1 %であり、有意差は認められなかった(P=0.61)。<BR>【考察】<BR>本研究の結果、骨盤コンディショニングプログラム(PelCon)は骨盤後面のピーク圧の左右差を減少させた。このことは、骨盤アライメントの対称化を示唆する結果といえる。円柱形状のストレッチポール上にて背臥位で行うPelConは、骨盤後傾側の上後腸骨棘(PSIS)に荷重することにより後傾位にある寛骨を前傾させる効果があると推測される。本研究において、初めてこの骨盤リアライメント効果が客観的に示された。<BR>本研究の問題点として、男女割合が不均等であり一般化に制限がある点が挙げられる。またコントロール群がないため、他の運動プログラムとの比較がなされなかった。また、腰痛患者は含まれていなかったため、腰痛の治療効果は不明である。しかしながら、十分なサンプルサイズによる定量的なデータが得られたことから、信頼できる結果であると解釈される。以上より、研究仮説は支持されたと結論付けられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>ストレッチポールを用いた骨盤リアライメントエクササイズ(PelCon)は、健常者の非対称位にある骨盤を対称化させる効果が確認された。今後、骨盤マルアライメントに由来する腰痛の予防等に応用されることが期待される。
著者
伊藤 一也 増田 圭太 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3419, 2009

【目的】ATM2(BackProject社)は機械的腰痛において、疼痛軽減の即時効果が得られる運動療法機器としてアメリカで普及している.ATM2の有効性については、腰痛患者の疼痛軽減効果(Lewis 2006)、腰痛患者の腰部筋活動の低下(backproject.com)、脊椎屈曲可動域の改善(増田 2008)などが報告されてきた.しかし、その効果発現機序については未知の点が多い.本研究では、ATM2のベルトによる固定下での等尺性筋力発揮が、骨盤アライメント対称化および下位胸郭横径拡張可動性に及ぼす効果を解明することを目的とした.研究仮説は、(1)ATM2は即時的に骨盤のアライメントを改善させる、(2)ATM2は即時的に下位胸郭横径拡張可動域を増加させる、であった.<BR><BR>【方法】対象者の取込基準は健常者、18-34 歳の男女で、下肢自動伸展挙上(ASLR)にて主観的に左右差を有する者であり、除外基準は医学的問題として下肢に外傷の既往歴を有する者、運動制限、内科的リスク、精神障害、コミュニケーション障害のある者、とした.ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した9名の被検者が研究に参加した.<BR>介入としてATM2を用いた体幹後屈運動(10秒間の最大等尺性筋力発揮を10回反復)を実施した.観察因子は下位胸郭横径拡張可動性(ノギスにより測定)と骨盤アライメントの対称性(他動骨盤ローリングによる骨盤傾斜角の左右差)であり、その測定は介入直前と介入直後に実施した.統計学的検定には対応のあるt 検定を用い、有意水準をp<0.05とした.<BR><BR>【結果】介入前後の下位胸郭横径拡張可動域の変化量は、安静立位にて0.9±2.1cm(p=0.259)と有意差を認めなかったが、最大吸気時で2.1±1.4cm(p=0.004)、最大後屈位で2.7±3.4cm(p=0.02)と有意な増加が見られた.骨盤アライメントに関しては、介入前に2度以上の傾斜角の左右差を認めた7名に関して、介入前3.9±1.8°、介入後1.6±0.8°と有意な対称化を認めた(p=0.015)<BR><BR>【考察】ATM2による体幹後屈運動は、即自的に下位胸郭横径拡張可動域改善および骨盤アライメント対称化を導くことが示唆された.これはATM2のベルトによる骨盤・胸郭の圧迫および等尺性筋力発揮が、骨盤の対称化と下位胸郭の横径拡張を促す力学環境を作り出したためと推測される.本研究の問題点として、統計学的パワーの不足、コントロール群がないことが挙げられる.しかしながら、胸郭可動性および骨盤リアライメントの変化量が本研究によって得られ、今後の同様の研究におけるパワー分析に用いることができる.今後は腰痛の臨床効果および胸郭・骨盤のリアライメント効果について、十分な統計学的パワーを得た盲検化無作為化対照研究を行なう必要がある.
著者
伊藤 一也 増田 圭太 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.829-832, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

〔目的〕ストレッチポールを用いたベーシックセブンの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕若年健常男性20名を対象とし,介入群とコントロール群に無作為に割りつけた.〔方法〕介入群はストレッチポールを用いたベーシックセブンを実施し,コントロール群はストレッチポールを使用せず,同様の運動を床上にて実施した.介入前後で体幹後屈可動域,体幹背面の床接地面圧分布を測定し,各群で変化量を比較した.〔結果〕介入前後での体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧はともに,介入群で有意に増大した.〔結語〕ベーシックセブンは,体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧の増加に効果的である.