著者
齊藤 寿大 笹沼 秀幸 飯島 裕生 竹下 克志
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.280-282, 2017

<p> 後方型野球肘障害は比較的稀な障害である.本研究の目的は当施設における後方型野球肘障害の治療成績を調査することである.対象は2013年8月より2016年8月の間に,肘痛を主訴に受診し,後方型野球肘と診断された8選手とした.全例男性で平均年齢は16.1(13~22)歳であった.評価項目はポジション,骨折型,治療内容,内側障害の合併,復帰状況である.ポジションは投手が5肘,内野手が3肘であった.骨折型は古島分類のphyseal typeが3肘,transitional typeが1肘,classic typeが2肘と,肘頭先端裂離骨折が2肘であった.再発例は8肘中3肘(physeal typeが1肘,classic typeが2肘)であった.内側障害の合併は2肘で,内側上顆裂離骨折が1肘,内側側副靱帯損傷が1肘であった.治療内容は4肘が保存療法であり,classic typeの2肘と肘頭先端裂離骨折の2肘が手術治療を行った.最終診察時に全例治癒し,受傷前のレベルでの競技復帰を果たした.後方型野球肘の治療は骨折型や選手背景を考慮する必要がある.</p>
著者
竹下 克志 阿久根 徹 佐藤 和強 星 和人 川口 浩 中村 耕三 加藤 茂明 池川 志郎 竹下 克志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では骨・軟骨の形成、再生におけるcystatin10(Cst10)の役割と制御機構を解明し、Cst10の医療応用を実現することを目的として行われた。Cst10はマウス軟骨細胞からクローニングされ、cysteine protease inhibitorであるcystatin familyに属する分子で、形態学的、分子生物学的手法を用いた解析により、軟骨細胞の分化後期に発現し、軟骨細胞の後期分化・アポトーシスの誘導に働くことを見いだした。更にCst10の生体内における高次機能を解明する目的で、Cst10ノックアウトマウス(Cst10KO)を作製した。Cst10KOは、成長・外見ともに、野生型マウス(WT)との顕著な差は見出されなかったが、骨組織を各種画像検査、および組織形態計測によって解析した結果、骨成長や骨代謝の著しい障害は見られなかったものの、成長板での石灰化層および一次海綿骨の減少が見られた。Cst10KOの成長板から単離した軟骨細胞培養により、分化に障害がみられたことから、軟骨細胞に発現しているCst10の役割は、細胞の最終分化の促進と基質の石灰化であることが明らかとなった。また、内軟骨性骨化が関与すると考えられる骨折治癒、変形性関節症における骨棘形成や、高齢化に伴う異所性石灰化においても、Cst10KOではWTに比し石灰化の著明な低下が認められた。またWTでは、これらの病態における石灰化部位においてX型コラーゲンを発現している肥大化した細胞に、Cst10が強く発現していた。これらの所見から、Cst10は、軟骨細胞石灰化作用を有し、生理的な骨成長や骨代謝には影響を及ぼさないものの、変形性関節症や異所性石灰化の病態に関与している事が明らかとなった。