著者
竹下 克志 阿久根 徹 佐藤 和強 星 和人 川口 浩 中村 耕三 加藤 茂明 池川 志郎 竹下 克志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では骨・軟骨の形成、再生におけるcystatin10(Cst10)の役割と制御機構を解明し、Cst10の医療応用を実現することを目的として行われた。Cst10はマウス軟骨細胞からクローニングされ、cysteine protease inhibitorであるcystatin familyに属する分子で、形態学的、分子生物学的手法を用いた解析により、軟骨細胞の分化後期に発現し、軟骨細胞の後期分化・アポトーシスの誘導に働くことを見いだした。更にCst10の生体内における高次機能を解明する目的で、Cst10ノックアウトマウス(Cst10KO)を作製した。Cst10KOは、成長・外見ともに、野生型マウス(WT)との顕著な差は見出されなかったが、骨組織を各種画像検査、および組織形態計測によって解析した結果、骨成長や骨代謝の著しい障害は見られなかったものの、成長板での石灰化層および一次海綿骨の減少が見られた。Cst10KOの成長板から単離した軟骨細胞培養により、分化に障害がみられたことから、軟骨細胞に発現しているCst10の役割は、細胞の最終分化の促進と基質の石灰化であることが明らかとなった。また、内軟骨性骨化が関与すると考えられる骨折治癒、変形性関節症における骨棘形成や、高齢化に伴う異所性石灰化においても、Cst10KOではWTに比し石灰化の著明な低下が認められた。またWTでは、これらの病態における石灰化部位においてX型コラーゲンを発現している肥大化した細胞に、Cst10が強く発現していた。これらの所見から、Cst10は、軟骨細胞石灰化作用を有し、生理的な骨成長や骨代謝には影響を及ぼさないものの、変形性関節症や異所性石灰化の病態に関与している事が明らかとなった。

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