著者
竹内 久弥
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.522, 1972-06-10

胎児の副腎が陣痛発来になんらかの関係を持つているらしいことは,すでに幾つかの動物実験結果から類推されていた。たとえばホルスタイン種の牛で劣性常染色体遺伝子の異常による過熱産がおこり,その子牛の副腎は小さく,下垂体は正常の2分の1であるという(Holmら)。また,羊を使つた実験では,下垂体を破壊された胎仔の在胎期間が異常に延長し,成長も遅れるが,ACTHをその胎仔の腹腔内に注射すると陣痛が発来することから,陣痛に対する副腎の2次的効果が推測され(Lig—ginsら),副腎剔除胎仔でやはり,有意に在胎期間の延長が見られた(Drostら)という。 ヒトでも同様に下垂体一副腎系の機能低下が予定日超過を起こすことは,たとえば無脳児や先天性副腎発育不全の児の例で知られていることである。