- 著者
-
小元 敬男
文字 信貴
平田 尚美
梶川 正弘
竹内 利雄
吉野 正敏
- 出版者
- 大阪府立大学
- 雑誌
- 自然災害特別研究
- 巻号頁・発行日
- 1985
本年度は、降ひょうと突風の実態の把握及び基礎研究に必要なデータを得る目的で、分担者のほゞ全員が群馬県で観測を行った。6月前半には、レーダー観測、突風観測、ひょう粒の分析の実験を実施、7月15日〜8月15日の期間には上記の他に高層気象観測、気圧分布観測、短期間ではあるがドプラーソーダによる観測を行った。更ル、5月15日〜8月15日の期間、記録計による100地点での降ひょう観測を行うなど、北関東夏季の積乱雲対象としてかつてない充実した研究観測を実施したのであるが、昨夏は群馬県における雷雨は異常に少なく予期したほどのデータは得られなかった。しかし、この観測期間中に観測本部のある群馬県農業総合試験場にひょうが降り、また地元の協力者から分析用の大きなひょう粒が提供されるなど、ひょうの基礎研究に役立つ資料が得られた。更に同地域における下層大気の昇温が積乱雲発達に及ぼす影響の研究に必要なデータも得られた。例年より少なかったが、上記期間中に発生したひょう害及び突風(災)害の現地調査も行った。その他の分担研究課題の成果として、ひょう害の変遷に関する研究では、関東甲信地域のひょう害は1950年頃までは5月下旬を中心とするピークが一つあっただけであるが、その後7月下旬を中心とするピークが現れ顕著になりつつあることなど幾つかの新らたな気候学的事実が明らかにされた。また、防ひょうネットの研究では、千葉県の実験地に激しい降ひょうがあり、実際の場合について、種々の網目のネットの被害防止効果を測定できた。無被害地の実験データと併せて、防ひょうネットの最適網目は10mmであることが確められた。激しい雷雨の常習地域で長期にわたって連続観測を行ったにも拘ず、異常年に当ってしまい、充分データを得ることができなかった。この種の研究は根気よく続ける必要がある。