著者
竹内 瑞穂
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.45-56, 2009-11-10

本論は、井東憲『上海夜話』(一九二九)における、探偵小説とプロレタリア文学の<交通>の試みを扱う。井東のプロレタリア探偵小説の構想は、芸術大衆化論争が目指す大衆化とは、似て非なるものだった。その構想自体は成功したとはいえないが、井東の作品は、探偵的(興味本位)な眼差しの導入により、既存のプロ文が捉えられなかった、上海という国際的空間における、民族主義(ナショナリズム)依存の問題に触れ得たのである。
著者
竹内 瑞穂
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.53-64, 2007-09-10 (Released:2017-08-01)

大正期文壇人たちは、「変態」概念を同時期に流行していた天才論と接続させるかたちで消費してゆく。そうした解釈により、「変態」概念は「芸術家」の特権性を絶対化し、彼らの社会・文化的ヘゲモニーを強化する<装飾具>へと再構築されていった。文壇人を取り巻く「民衆」の台頭という時代潮流と併せて考えれば、彼らの「変態」概念消費とは、そこで揺らぐ「芸術家」の象徴的地位を巡る闘争の一端を担っていたと考えられよう。
著者
竹内 瑞穂
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.53-64, 2007-09

大正期文壇人たちは、「変態」概念を同時期に流行していた天才論と接続させるかたちで消費してゆく。そうした解釈により、「変態」概念は「芸術家」の特権性を絶対化し、彼らの社会・文化的ヘゲモニーを強化する<装飾具>へと再構築されていった。文壇人を取り巻く「民衆」の台頭という時代潮流と併せて考えれば、彼らの「変態」概念消費とは、そこで揺らぐ「芸術家」の象徴的地位を巡る闘争の一端を担っていたと考えられよう。