著者
立石 渉 竹前 彰人 常川 勝彦
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.234-237, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
13

本邦での心臓血管外科領域におけるERASの報告が少ない中, われわれは積極的にERAS管理を行い, 術後早期回復の指標として早期食事開始, 離床, 退院の結果は得られた. しかし, Postoperative fatigueをいかになくすかという観点から見た際に, 現状ではどれくらいのを効果が得られたかの客観的な指標を示すことができていない. またさまざまな介入項目の効果などについての報告はあるものの, 一定の見解が得られていない項目が多い. 現状では以上のようなERASの問題点が存在しており, 今後は解剖し検証していることが必要になってくると考える.
著者
松井 祐介 松岡 宏晃 金本 匡史 渋谷 綾子 室岡 由紀恵 大高 麻衣子 竹前 彰人 高澤 知規 日野原 宏 齋藤 繁
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】HITは,血小板第 4 因子(PF4)とヘパリンとの複合体に対する抗体(抗PF4/H抗体)の産生が起こり,その中の一部で強い血小板活性化能を持つもの(HIT抗体)が,血小板,単核球,血管内皮の活性化を引き起こし,最終的にトロンビンの過剰産生が起こり,血小板減少,さらには血栓塞栓症を誘発する。治療には,まずはヘパリンの使用を中止することに加え,抗トロンビン作用を持つ代替抗凝固療法 (アルガトロバン) が必要である。今回我々は体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia , HIT)を発症し,回路内凝血により持続的腎代替療法の継続が困難であったが,透析膜の変更で治療を継続することができた1症例を経験したため報告する。【臨床経過】我々は,体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にHITを発症し,除水ならびに血液浄化目的に、持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)が必要となり,ポリスルホン,セルローストリアセテートの透析膜を用いても,血栓による閉塞を頻回に起こし、回路交換による中断をせざるを得なくなり,管理に難渋する症例を経験した。本例は,ヘパリン中止,アルガトロバンによる全身の抗凝固療法と,ナファモスタットを用いた回路内の抗凝固療法を併用し,活性化凝固時間を延長させたにもかかわらず,頻回な回路閉塞によりCHDFの継続は困難であった。しかし,高い親水性をもった厚い柔軟層を有するポリスルホン製の透析膜のダイアライザー (商品名:トレライトNV) を用いた持続的血液透析および体外式限外濾過療法より,比較的長時間の腎代替療法を行うことができ,除水を継続することができた。【結論】HIT患者においても,ダイアライザーの種類を変更することで,腎代替療法を継続することができた。水分管理が困難であった場合,酸素化不良による静脈返血での体外式膜型人工肺(V-V ECMO)が考慮されたが,本症例では導入を必要とするまでには至らず,重篤な合併症を回避することができた。