著者
小巻 泰之 地主 敏樹 竹田 陽介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,2つのデータベースを新規に作成し,以下のような分析結果を得た.1)ドル円為替レートの予測に関するサーベイ・データ(世界経済情報サービスによる「為替レート予測レポート」(以下,WEISサーベイ))2)1980年代後半の外国為替市場の相場状況に関する新聞報道(日本経済新聞,日経金融新聞)を基に,為替介入(以下,観測介入)と通貨当局者の発言(以下,口先介入)1)為替相場の市場参加者の期待形成について日本での従来の先行研究の多くが利用してきた「国際金融情報センター(JCIF)」のサーベイ・データではなく,世界経済情報サービス(ワイス)によるサーベイ)を用いると,必ずしもJCIFサーベイから得られる結果が追認される訳ではない.2つのサーベイの結果の違いは,その作成方法が電話などによるアンケート調査なのか,各人の予測形成の段階で他者の情報に影響されることにあると考えられるが,市場への影響を考慮する場合,利用するデータ属性の違いも考慮すべきであることが示される.2)為替介入の効果為替介入の市場への影響については,データが開示された1991年7月以降については分析が可能であるものの,それ以前の介入動向の影響について十分な分析は難しい.そこで,外国為替相場の場況に関する新聞報道(日本経済新聞,日経金融新聞)ベースの情報を収集し,加えて当時の市場コンセンサスについても,日次ベースにて,1980年から2000年まで21年(約7700日分)のデータ(全133系列)の収集を行い,データベースを作成した.これにより,1980年代後半の為替介入の影響をみると,東京市場で伝えられた介入情報は多いにも関わらず,その効果は当局の意図とは異なり,一方向の大きな変動を引き起こすことが示される.この中で,為替市場へ影響を与えたとみられるのは,為替介入,経済指標及び経済指標に関する市場の予測(コンセンサスともいうべきもの)などの定量的な情報だけでなく,通貨当局者の発言,市場での噂など質的な情報も大きな影響を与えていると考えられる.