著者
笠井 俊輔 富田 幸代 深谷 千絵 井原 雄一郎 齋藤 淳 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.39-48, 2014-04-11 (Released:2015-02-18)
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

急性症状を呈している慢性歯周炎患者にシタフロキサシンを経口投与し,その臨床効果と細菌学的効果を検討した。慢性歯周炎患者30 名の急性症状部位を実験群とし,慢性部位を対照群とした。シタフロキサシン投与前と投与後6~8 日に臨床所見の診査と歯肉縁下プラークを採取し,PCR-Invader 法で歯周病原細菌4 菌種の検出を試みた。その結果,シタフロキサシンの投与により,臨床所見の評点評価において,急性部位では動揺度以外のすべての項目で有意に改善した。効果判定では疼痛と排膿の項目で「著効」の判定だった。投与前,急性部位からはTannerella forsythia やTreponema denticola が,慢性部位ではT. forsythia,Porphyromonas gingivalis が多く検出された。投与後P. gingivalis,T. forsythia は有意に減少した。急性部位(A),慢性部位(C) ともに除菌率はP. gingivalis の値(A 群:72.2%,C 群:100%)が最も高かった。ついでT. forsythia , T. denticola の順であった。以上の結果より,シタフロキサシンの経口投与は慢性歯周炎の急性症状に対し高い効果があることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):39-48,2014
著者
井原 雄一郎 深谷 千絵 笠井 俊輔 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.25-32, 2016-03-28 (Released:2016-04-15)
参考文献数
15

本研究は,毛先が歯間部に届きやすくするために,長さの異なる毛束を植毛したブラシヘッド(インターケアブラシ)と,毛束の密度を高くしたブラシヘッド(ダイヤモンドクリーン)を使用した音波式電動歯ブラシのプラーク除去率を比較検討した。被験者は,補綴物がなく,歯肉退縮や小帯の付着異常を認めない歯科医19名とした。実験2日前に全顎的にスケーリングを実施し,プラークフリーとした。その後2日間ブラッシングを停止させ,PCR100%として実験を行った。インタケーケアスタンダードブラシ(IS群),インターケアミニブラシ(IM群),ダイヤモンドクリーンスタンダードブラシ(DS群),ダイヤモンドクリーンミニブラシ(DM群)の4群を設定し,刷掃時間は2分間とした。プラーク除去率はO'LearyのPCRの改良法6点計測を用いて評価した。4群間において全顎,部位別に比較した結果,統計学的に有意なプラーク除去率の差は認めなかったが,平均値,中央値においてIS群,IM群はDS群,DM群と比較して高い傾向にあった。
著者
大石 匠 深谷 千絵 笠井 俊輔 太田 淳也 国分 栄仁 齋藤 淳 石原 和幸 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.406-413, 2015-01-30 (Released:2015-02-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究は,in vitro バイオフィルムに対するシタフロキサシン(STFX)の効果を検討することを目的とした。歯周病においてバイオフィルムは複数菌で構成され,抗菌薬に耐性を示すことが知られている。 STFX はニューキノロン系経口抗菌薬であり嫌気性口腔細菌を含む幅広い抗菌スペクトラムを示す。我々は微量流体デバイス BioFlux を採用した。BioFlux は嫌気条件下で自動的に培地を排出可能であり,本研究に有用と考えた。Porphyromonas gingivalis ATCC33277 および Streptococcus gordonii ATCC35105 の 2 菌種混合液を用い,37℃,2 時間かけバイオフィルムを形成させ,顕微鏡にて確認した。STFX または対照薬アジスロマイシン(AZM)を添加後,嫌気条件下で 5 日間作用させた。薬剤濃度は経口常用量投与時の歯肉組織および歯肉溝滲出液中濃度に基づき,STFX は 0.65 および 1.30 μg/ml,AZM は 2.92,3.95 および 7.90 μg/ml とした。薬剤作用後の生存率は,染色後の画像解析にて定量した。 その結果,抗菌薬作用群すべてにおいて,生存率の減少を認めた。STFX 作用後の生存率は,AZM 各群と比較して有意(p<0.05)に少なかった。以上の結果より,STFX はバイオフィルム中の歯周病原細菌に対して破壊効果を有することが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):406-413,2014
著者
太田 淳也 深谷 千絵 笠井 俊輔 赤松 真也子 森川 暁 田子森 順子 江口 徹 税所 芳史 河合 俊英 伊藤 裕 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.336-345, 2013-01-16 (Released:2013-04-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は糖尿病患者の歯周病罹患状況,ならびにその他の合併症との相互関係を明らかにすることを目的に行われた。被験者は,2010 年 7 月から 2011 年 12 月までに内科に教育入院した 2 型糖尿病患者 105 名(平均年齢 55.4±11.3 歳)とした。評価項目として,現在歯数,プロービングポケットの深さ(PPD),プロービング時の出血(BOP),動揺度を測定した。また,背景因子として年齢・性別・体格指標(BMI)・糖尿病罹患期間・血圧・既往歴,糖尿病合併症に関する評価として網膜症の有無(SDR:単純性網膜症・PPDR:前増殖性網膜症・PDR:増殖性網膜症),腎症の有無,神経障害の有無,動脈硬化性疾患の有無,血液指標を評価し比較検討した。今回の結果から糖尿病合併症である網膜症患者での残存歯数は PDR 患者で他のステージの網膜症患者に比べ有意に少なく(p<0.01 vs SDR, p<0.05 vs PPDR),4〜6 mmPPD 率や 7mm以上 PPD 率では SDR<PPDR<PDR と PPD が深い部位の割合が高くなる傾向を示しているため,網膜症の進行が歯周病の病態悪化になんらかの関与をしている可能性が考えられる。重度の歯周病(最大ポケット深さ 7 mm 以上)を有する患者の割合は腎症以外で有意に高く,糖尿病合併症の有無と歯周病の進行度には相関があることが示された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(4):336-345, 2012