- 著者
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西野 英男
井手 宏
栗原 教光
丹野 宗彦
千葉 一夫
笠原 洋勇
柄澤 昭秀
長谷川 和夫
山田 英夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.138-146, 1988-03-30 (Released:2009-11-24)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
1
正常例と痴呆例の脳のCT所見を比較する場合, 老年者においては脳血管障害 (CVD) の有無により, 分けて検討しなければならない, そこで痴呆を主症状とする100名の老年痴呆患者と, 139名の健常老人ボランティアに対し, それぞれCVDの有無により二群に分類し, 年齢構成別に頭部CT所見の比較検討を行った結果, 以下のような結論が得られた.1. 健常老人ボランティアにおいても silent stroke をしめすものが約20%に見られ, これらを除くCVD (-) の健常老人のCT像を, 狭義の健常老人として, 痴呆脳のCT像の検討に際して対比することが必要と思われる.2. 狭義の健常老人においては側脳室拡大, 脳溝拡大, シルビウス溝の拡大の出現頻度は, 加齢と共に増大するが, PVL, 第三脳室拡大の頻度は加齢とともに増加せず, 80歳でも低値であった.3. 老人脳におけるPVLの出現頻度は血管障害の有無と関係が深いが, CVD (-) の痴呆患者においても, 加齢とともに増加した.4. 痴呆患者では側脳室拡大, 脳溝拡大, シルビウス溝拡大, 第三脳室拡大の頻度は, 年齢と関係なく, 脳溝拡大, 第三脳室拡大を除き一般にCVDを伴うものに高い傾向がみられた. これらの変化を健常老人と比較すると, 一般に80歳老人のそれにほぼ近かった.5. medial temporal lobe の萎縮を示す所見は50歳代のCVD (-) の痴呆例に最も高頻度に見られた. 60歳代以上の痴呆例においてはCVDの有無による差はなかった.6. 痴呆患者のCT像においては, PVL, 第三脳室拡大を除き, 加齢に伴う変化が早期より出現したり, より著明な変化を示すものが多いと言えるが, ほぼ年齢相応の変化を示すものも認められた.