著者
荒木 葉子 笹原 麻希 三神 彩子 長尾 慶子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>【目的】</b>比較的水源に恵まれた我が国では、水の大切さをあまり意識することなく大量の水を使用しており、生活用水の一人当たりの使用量は297L/日(2010年)となっている。一方、水資源を活用するためには、水の揚水、浄水、下水及び汚水処理の各段階で大量のエネルギーを必要とし、我が国の上下水道事業における電力使用量は総電力使用量の1.4%、約150億kWh(2010年度)を占めている。そこで、本報告では、水使用、特に食器洗浄に着目し、実態調査などから食器洗浄に関する問題点を洗い出して、家庭への省エネルギー策の普及を目的とした節水行動を推進するための方策を検討することとした。<br><b>【方法】</b>まず、食器洗浄法に関して、小学校家庭科教科書での記述内容及び洗剤メーカーなどの情報提供の現状について調べるとともに、欧米と日本の食器洗浄法について、それぞれの特徴、節水に対する考え方や具体的な節水方法を文献調査などにより比較検討した。次に、各家庭の上下水道の家計費に占める割合を調べて、電気やガスなどの光熱費と比較した。また、新渡戸文化短期大学1年生45名に対して食器洗浄に関するアンケート及び実態調査(洗剤使用量、水使用量および残留洗剤量)を行った。<br><b>【結果】</b>小学校家庭科教科書内に食器洗浄法に関する記述はあるものの、限られた時間内での実習であることから、食器洗浄指導が十分な時間を割くことが難しい現状が考えられる。短大生のアンケート調査では、家庭における食器洗浄の機会は、約7割において小学生の段階で発生し、洗浄手法はその約9割において親あるいは家族から伝えられたものであった。また、各種洗剤のCM等の影響もあってか、現代の日本においては、直接洗剤を塗布しての洗浄及び流し洗いが好まれており、上記アンケートでも、残留洗剤に対して懸念する声が多かった。<br>&nbsp;一方、欧米諸国では、ため水洗いが主流であり、日本のような流水洗浄は習慣化されていないことが多い。省エネ及び節水を推奨するためにIFHE (国際家政学会)が作成したポスターでも、汚れを落とし、洗剤を混ぜた温水でのため水洗い後、きれいな温水でのため水すすぎ、乾燥といった手順が推奨されている。また、日本と違って温水洗浄が主流である。これらの洗浄方法の違いは、水資源を大切にしようとする節水習慣に起因していると考えられるが、衛生面からの配慮や温水洗浄による水切れの良さ、硬水での長時間流水洗浄は食器にカルキがつきやすいこと、食器の形状などにも理由があると考えられた。<br>&nbsp;我が国でも江戸時代以前はため水を使った食器洗浄が行われていたとされるが、現代においてそれが廃れてしまった背景には、流しの狭さも関係していると見られる。欧米のような2層式シンクやため水作業が行いやすいシンクのサイズは日本のシステムキッチンでは少数派である。また、電気、ガス、通信費と比較しても上下水道費が廉価であることも節水につながりにくい要因の1つだと考えられる。<br>&nbsp;食器洗浄に関する実態調査では、大半が洗剤原液を付けたスポンジでこすり洗いをした後、大量の流水によってすすぐ方法を選択しており、直径15cmのポリプロピレン製食器1点の洗浄での洗剤使用量は0.5mL~5mL、水の使用量300mL~1300mL、残留洗剤量は0.05ppm~2ppmと個人差が大きかった。一方、希釈洗剤を用いた洗浄ではすすぎ水が少なくて済む傾向が認められ、大量に食器を洗浄する際にはため水洗いによって節水できる可能性が示唆された。<br>&nbsp;食器洗浄に関して、洗剤の適量使用、適切な取扱いによって効率化を図るとともに、衛生面も担保した洗浄の方法を教育指導することは大きな改善につながると考えられた。そこで、今回の調査から明らかになった点を整理し、学生指導のための適切な食器洗浄方法を図式化した。今後、この方法を習得した学生の食器洗浄時の水使用量測定などを通して、行動変容による省エネルギー効果や行動を阻害する要因について継続して検証を行っていく予定である。
著者
三神 彩子 荒木 葉子 笹原 麻希 伊藤 貴英 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.204-208, 2012-06-05
被引用文献数
1

本研究では,家庭での使用頻度の高い野菜50種を取り上げ,家庭で通常行われている切り方およびエコ・クッキングの切り方での廃棄率を実測し,食材廃棄率の削減効果を明らかとすることを目的とした。野菜50種は旬の時期に栽培された国産のものを試料とした。通常の切り方は,家庭調理を前提とし,大学の調理実習で実施している方法とした。エコ・クッキングでは,可食部分を出来る限り生かし,ヘタや根,種を除き,丸ごと皮ごと使用することとした。これにより,45種の野菜で可食部分が増加し,平均して9.1%の廃棄率削減効果が認められた。中でも,廃棄率の削減効果が高かったものに,カブ(葉つき)33.1%,セロリー32.1%,フキ27.7%,長ネギ26.2%,ブロッコリー23.3%があげられた。ただし,いずれの野菜も料理によっては可食部全てを使うことが望ましいわけではないため,皮や固い部分はみじん切りにしたり,すりおろしたり,もしくは部位ごとに使い分け加熱操作を加える方法などの調理の工夫で上手に活用することが望ましい。