著者
笹澤 吉明
出版者
高崎健康福祉大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

著者はこれまで、小中高生を対象にいじめと精神保健指標との関連を、質問紙調査で検討し、いじめる、いじめられる両経験群の自尊感情、登校意欲、希死念慮等の精神保健指標が他群(加害、被害、傍観、無関係)に比べ最もネガティブであることを明らかとした。それを踏まえ、本研究は、中学生男女を対象に、縦断的な疫学研究の手法を用い、両経験群の加害者から被害者になるパターン(加害-被害移行型)と、被害者から加害者になるパターン(被害-加害移行型)の分布を明らかにすることと、加害-被害型と被害-加害型の精神保健指標およびいじめる理由・方法に差があるのかどうかを検討することを最終目的とする。群馬県内の公立中学校7校の平成16年度の2年生男女1,533名を対象に、自記式の質問紙調査を、平成16年7月、平成17年3月、平成18年3月の3度に亘り実施した。2次調査までの結果1,329名(86.7%)の有効回答(率)を得、基礎調査時にいじめを受けておらず、2次調査時にいじめを受けた者は、男子では希死念慮、不登校気分が高くなり、女子では孤独感、不登校気分が高くなり、社会的支援が低くなることが明らかとなった。また、いじめ被害の変遷、被-無群(基礎調査時は被害群で2次調査時は被害を受けない群、以下同様)、無-被群、被-被群の無-無群を基準とした各精神保健指標への相対危険度は、男子の無-被群の希死念慮への相対危険度(13.3)、男女の無-被群の不登校気分への相対危険度(それぞれ10.9、11.0)、男子の無-被群、被-被群の孤独感への相対危険度(それぞれ10.1、10.5)であり、縦断的な解析においても、いじめは精神保健指標をネガティブにさせることが明らかとなった。3回目の調査では1,269名(82.8%)の有効回答を得、このデータをリンケージさせ、上記の最終目的につき解析を進めているところである。
著者
橋本 由利子 大谷 哲也 小山 洋 岩崎 基 笹澤 吉明 鈴木 庄亮
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.792-804, 2007 (Released:2014-07-03)
参考文献数
41
被引用文献数
1

目的 花粉症発症には花粉への曝露の他に様々な修飾要因が関わっていると考えられているが,その詳細は未だ十分に明らかにされていない。そこで「花粉症有り」の人の宿主要因を中心に花粉症の修飾要因を広範囲に調べることにした。方法 1993年に開始した群馬疫学コホート(こもいせ)調査結果およびその第 2 波として2000年に行った47-77歳の男女住民10,898人の生活と罹病・死亡リスクについての調査結果を利用した。既往歴の「花粉症有り」を目的変数として,その他の基本属性,生活習慣・行動,既往症,職業などの項目を説明変数として,ロジスティック回帰分析によって検討した。この分析では,性・地域・年齢で調整した。結果 花粉症の既往がある者は全回答者の17.1%であった。「花粉症の既往有り」は男性より女性の方が多く[調整オッズ比(aOR)=1.31, 95%信頼区間(CI):1.17-1.46],村より市の居住者の方が多かった(aOR=1.56, 95% CI:1.39-1.76)。40歳代より70歳代の方が花粉症は著しく少なく(aOR=0.19, 95% CI:0.15-0.24),花粉症の最近 1 年の寛解者は年齢が高くなるにつれ増加した(傾向検定 P 値<0.001)。 健康面では,「花粉症有り」は,寝つきが悪い・眠りが中断されること,および心臓病・高脂血症・喘息・消化性潰瘍・腰痛・うつ病有りとの間に有意な関連がみられた。糖尿病有りとは逆の関連がみられた。 生活面では,「花粉症有り」は,収入のある仕事をしている,サラリーマンである,仕事で精神的ストレスが多い,間食をよくする,お腹一杯食べる,食事が規則正しい,甘いものをよく食べる,日本酒・ワインを月 2, 3 回飲む,ビール・発泡酒を飲む,焼酎・ウイスキーをほぼ毎日飲む,よく長い距離を歩く,よく運動をする,よく家の掃除をする,芝居・映画・コンサートなどに行く,食料品・衣類などの買い物に行く,結婚経験がある,子どもが問題を抱えている,年収が1,000万円以上であることと有意な関連が見られた。農業従事者,たばこを吸っていること,パチンコやカラオケによく行くこととは有意な逆の関連がみられた。 過去の食生活では30歳代の頃パンを摂取したことと弱い関連がみられた。結論 花粉症の既往と生活習慣・行動など多くの要因との間に関連性がみられた。花粉症は,老年より比較的若年層に,農村より都市地域に,農業従事者よりサラリーマンに,ストレスの多いことや食べ過ぎあるいは洋風の食生活に,生活水準が高く近代化の進んだ生活により強く関係しているなど,宿主・環境に関る一群の修飾要因とその重みが明らかにされた。
著者
橋本 由利子 大谷 哲也 小山 洋 岩崎 基 笹澤 吉明 鈴木 庄亮
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 = JAPANESE JOURNAL OF PUBLIC HEALTH (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.792-804, 2007-11-15
被引用文献数
2

<b>目的</b> 花粉症発症には花粉への曝露の他に様々な修飾要因が関わっていると考えられているが,その詳細は未だ十分に明らかにされていない。そこで「花粉症有り」の人の宿主要因を中心に花粉症の修飾要因を広範囲に調べることにした。<br/><b>方法</b> 1993年に開始した群馬疫学コホート(こもいせ)調査結果およびその第 2 波として2000年に行った47-77歳の男女住民10,898人の生活と罹病・死亡リスクについての調査結果を利用した。既往歴の「花粉症有り」を目的変数として,その他の基本属性,生活習慣・行動,既往症,職業などの項目を説明変数として,ロジスティック回帰分析によって検討した。この分析では,性・地域・年齢で調整した。<br/><b>結果</b> 花粉症の既往がある者は全回答者の17.1%であった。「花粉症の既往有り」は男性より女性の方が多く[調整オッズ比(aOR)=1.31, 95%信頼区間(CI):1.17-1.46],村より市の居住者の方が多かった(aOR=1.56, 95% CI:1.39-1.76)。40歳代より70歳代の方が花粉症は著しく少なく(aOR=0.19, 95% CI:0.15-0.24),花粉症の最近 1 年の寛解者は年齢が高くなるにつれ増加した(傾向検定 <i>P</i> 値<0.001)。<br/> 健康面では,「花粉症有り」は,寝つきが悪い・眠りが中断されること,および心臓病・高脂血症・喘息・消化性潰瘍・腰痛・うつ病有りとの間に有意な関連がみられた。糖尿病有りとは逆の関連がみられた。<br/> 生活面では,「花粉症有り」は,収入のある仕事をしている,サラリーマンである,仕事で精神的ストレスが多い,間食をよくする,お腹一杯食べる,食事が規則正しい,甘いものをよく食べる,日本酒・ワインを月 2, 3 回飲む,ビール・発泡酒を飲む,焼酎・ウイスキーをほぼ毎日飲む,よく長い距離を歩く,よく運動をする,よく家の掃除をする,芝居・映画・コンサートなどに行く,食料品・衣類などの買い物に行く,結婚経験がある,子どもが問題を抱えている,年収が1,000万円以上であることと有意な関連が見られた。農業従事者,たばこを吸っていること,パチンコやカラオケによく行くこととは有意な逆の関連がみられた。<br/> 過去の食生活では30歳代の頃パンを摂取したことと弱い関連がみられた。<br/><b>結論</b> 花粉症の既往と生活習慣・行動など多くの要因との間に関連性がみられた。花粉症は,老年より比較的若年層に,農村より都市地域に,農業従事者よりサラリーマンに,ストレスの多いことや食べ過ぎあるいは洋風の食生活に,生活水準が高く近代化の進んだ生活により強く関係しているなど,宿主・環境に関る一群の修飾要因とその重みが明らかにされた。
著者
笹澤 吉明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小中高生の不眠症の有病率とその心理社会的要因を明らかにするため、小学生1,000名、中学生1,500名、高校生1,000名に対して3度に亘り質問紙調査を行った結果、小学生では1割程度、中高生では、2割程度が不眠症傾向であり、不眠症傾向である小中高生は共通して、抑うつ気分、登校意欲の精神保健指標と縦断的に関連があることが明らかとなった。小中高生の不眠症傾向者共通して就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向があった。また生活面では、小学生、中学生の不眠症傾向者のテレビ視聴時間との縦断的関連が明らかとなった。小中高生それぞれ6名にアクチウォッチによる睡眠-覚醒の観察を行った結果、質問紙とアクチウォッチによる睡眠時間はほぼ一致していたが、不眠症傾向者の入眠潜時、中途覚醒時間との関連はみられなかった。以上の結果から、小中高生の不眠症の予防には、テレビの視聴時間の制限と就寝時刻を早めることの徹底が効果的であることが示唆された。