著者
笹竹 英穂
出版者
至学館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

女子大生の性犯罪についての防犯意識の阻害要因を解明することを本研究の目的とした。阻害要因として,楽観主義バイアスを取り上げた。楽観主義バイアスは,被害にあう頻度および被害の程度の2つを設定し,それぞれ直説法と間接法で測定した。その結果,特に被害体験がある場合には,楽観主義バイアス(程度)が高いと防犯意識が低いことが明らかとなった。
著者
笹竹 英穂
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.33-44, 2014-01-31 (Released:2017-07-30)
参考文献数
22

女子大生の防犯意識は,性に関する危険な出来事の被害体験によってどのような影響を受けるのかについて,楽観主義バイアスの視点から明らかにすることを目的とした。性に関する危険な出来事の被害は,変質者に出会うということに限定した。楽観主義バイアスは,被害にあう確率を他者と比較するという楽観主義バイアス(頻度)と,被害にあった場合の結果の重大性を他者と比較するという楽観主義バイアス(程度)の2つを設定した。そしてそれぞれの楽観主義バイアスを直接法および間接法によって測定した。中部地方の女子大学生329人に対し,平成21年1月に調査を行った。その結果,被害体験がある場合には楽観主義バイアス(頻度)が低くなるが,防犯意識の形成にまでは至らないことが示された。また防犯意識を従属変数にし,被害体験と楽観主義バイアス(程度)を独立変数にした分析では,直接法では被害の有無にかかわらず,楽観主義バイアス(程度)が高いと防犯意識が低いことが示された。同様の分析において間接法では交互作用が認められ,特に被害体験がある場合には,楽観主義バイアス(程度)が高いと防犯意識が低いことが示された。
著者
笹竹 英穂
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.35-44, 2002

<p>中部地方の市立中学校の全校生徒(593人,男子323人,女子270人)に対し,犯罪及び不良行為の被害の実態を調査した.</p><p>その結果,次のことが示された.被害者数については,被調査者のうち43.5%の生徒が何らかの被害にあっていた.被害回数については,被害回数1及び2の生徒が大部分であった.被害内容については,男女合計で集計すると,最も多いのは自転車盗の36.5%,次いで変人との接触の26.2%,次いで性的被害の12.3%であった.男女別で集計したところ,自転車盗,現金や所持品の恐喝及び粗暴行為については男子の方が被害体験が多く,変人との接触,性的被害については女子の方が被害体験が多かった.被害にあった時間帯については,午後3時から5時までの時間帯が61.0%でもっとも多かった.対処方法については,男女別に集計したところ, 「親や教師に報告した」という対処方法は女子の方が多く,また「誰にも報告しなかった」という対処方法は男子の方が多かった.犯罪や不良行為に対する不安については,男女別に集計すると,男子の方が女子よりも不安を感じていなかった.被害にあった場所については,大型のスーパーマーケットやデパートが16.7%でもっとも多く,次いで住宅街の12.8%,学校付近の10.5%であった.被害にあった場所への訪問頻度については, 「ほぼ毎日」及び「週に数回」の合計は54.2%であった.被害にあった場所ごとの被害内容については,学校付近で粗暴行為や性的行為の被害が多かった.</p><p>考察として,学校付近で犯罪や不良行為の被害が多く,またその被害内容に特徴がみられること,男女によって被害にあった後の対処方法,被害に対する不安に違いが認められることなどが指摘された.</p>