著者
田中 明 筑後 孝章 福岡 正博
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.483-486, 1999
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は58歳の男性で, 主訴は呼吸困難と咳。職場でガラス粉塵の曝露がある。胸部単純X線像上異常所見はなかったが, 胸部CTにて右S^6に浸潤影を認めた。気管支内視鏡所見では軽度の炎症所見を認め, 右B^6の気管支生検にてガラス粉塵の異物を認めた。1年後の再検査にても気管支組織内にガラスの異物が残存していた。気道異物は誤嚥によって発症することがほとんどであるが, 本症例のように粉末状であれば吸入によっても発症しうる。異物としてガラスは稀であり, 組織学的に異物を証明しえた点で興味ある症例であると考えられた。
著者
植田 清文 木村 雅友 筑後 孝章 土橋 千琴 上杉 忠雄 佐藤 隆夫
出版者
The Japanese Society of Clinical Cytology
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.290-294, 2012

<b>背景</b> : アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (allergic fungal rhinosinusitis : AFRS) は真菌に対するアレルギー反応が原因とされる再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である. 本邦では AFRS の存在があまり認識されておらずまれな疾患と考えられている. 今回 AFRS を経験し副鼻腔内容物を材料とする塗抹細胞診が実施されたので報告する.<br><b>症例</b> : 42 歳, 女性. 2 年前に左副鼻腔真菌症と診断され手術されたが完全な治癒にはいたらず, 今回その再発と考えられる真菌性汎副鼻腔炎となり内視鏡手術が施行された. 副鼻腔からピーナツバター様物質が採取されその組織標本に散在する菌糸を含むアレルギー性ムチンが確認された. その 1 週間後, 前頭洞から鼻腔内に漏出した同様の検体の塗抹標本で組織標本同様にアレルギー性ムチンがみられ少数の真菌が散在していた.<br><b>結論</b> : 副鼻腔炎からの検体において細胞診での背景が粘液の場合, AFRS を念頭におき, アレルギー性ムチンを確認することが重要である. 細胞診標本は組織標本より厚みがあり, 菌を見出す確率が高く, また菌糸形態の観察に有用である.