著者
永松 秀樹 筧 龍二 平賀 聖悟 加藤 幹雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.996-1002, 1987-06-20

過去3年間に当科で経験した神経因性膀胱70症例につき治療経過を中心に検討を加えた.対象の年齢は13歳から87歳(平均58.4歳),男女比2.2:1で,発症後6ヵ月以上経過していた例が約半数を占めた.神経因性膀胱の分類は,脳膀胱16例,脊髄膀胱25例,末梢神経障害膀胱21例,その他および不明8例であり,原因疾患は骨盤内手術,脳血管障害,脊髄損傷の順に多かった.初診時の泌尿器科的合併症は,尿路感染27例,前立腺肥大症12例,腎機能障害および尿道カルンクルス各3例などで,その他61%に残尿を認めた.膀胱内圧曲線の分類は,弛緩型膀胱48例(69%),正常型7例,無抑制膀胱6例,痙性膀胱5例,いわゆる抑制膀胱と無緊張性膀胱各2例であった.治療法は保存療法単独63例(90%),手術療法併用7例(10%)で,保存療法では薬物療法を69例に施行し,残尿のみられた例では,自己導尿を主体とする間歌的導尿を30例に併用した.手術はTUR-P 5例,膀胱瘻造設2例で,うち1例にLapides' cutaneousvesicostomyを施行した.間歇的導尿例の平均残尿量は治療前205ml,治療後84ml,平均残尿率は治療前56.5%,治療後28.9%で共に有意(p<0.001)の改善を認めた.また,薬物療法と間歇的導尿法でカテーテルフリーとなったものは13例(43%)で,保存療法単独でも残尿の減少と尿路感染の消失に有効であったが,カテーテルフリーを目標とすれば十分な成績とはいえなかった.