著者
竹下 英毅 川上 理 立花 康次郎 平沼 俊亮 杉山 博紀 張 英軒 矢野 晶大 岡田 洋平 永松 秀樹 諸角 誠人 山田 拓己
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.233-238, 2016-10-20 (Released:2017-10-24)
参考文献数
21

(目的) 精巣捻転症は,診断治療が遅れると精巣を喪失するため,臨床的社会的に重要な救急疾患である.近年,精巣捻転と外気温との関連が指摘されているが,その詳細は明らかでない.今回,急性陰囊症手術症例を後方視的に集計し,精巣捻転発症と外気温との関係について検討を行った. (対象と方法) 対象は2004年10月から2014年10月までに精巣捻転症が否定できず,手術が行われた急性陰囊症105例.患者病歴より年齢・居住地域・発症日時・手術検査所見等の情報を収集した.発症日の外気温は,気象庁ホームページより居住地域に最も近い気象台のデータを用いた.χ2乗検定,ウィルコクソンの順位和検定,ロジスティック回帰分析で解析を行った. (結果) 年齢中央値13(1~43)歳,患側は右側46例,左側58例,両側1例であった.術中所見で67例が精巣捻転症,38例が非精巣捻転症と診断された.発症日平均外気温は捻転群で中央値10.8℃(1.8~29.4℃),非捻転群で19.4℃(1.9~29.1℃)あり,捻転群で有意に低かった(p=0.006).精巣捻転症の割合は,発症日平均外気温が15℃未満の場合45/56(80%)で同15℃以上での22/49(45%)と比べ有意に高頻度であった(p<0.001).また平均外気温15℃以上でも,最高最低気温の差(日内気温差)が10℃以上の場合に13/21(62%)で,同10℃未満の9/28(32%)と比べ精巣捻転症が高頻度であった(p=0.037).多変量解析の結果,年齢・血清CRP値・発症日外気温が急性陰囊症手術症例中から精巣捻転症を予測する有意な因子であった. (結論) 低外気温または日内気温差が大きい日の急性陰囊症は,精巣捻転症の可能性が高く,注意すべきである.
著者
道木 恭子 古谷 健一 牛山 武久 永松 秀樹 堀 達之
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-6, 2005

女性脊髄障害者81名を対象として産婦人科的問題に関する後方視的調査を実施した。結果、一般では減少傾向にある「膣感染症」が61名(75%)と最も多く、脊髄障害者において膣感染症が多いことから、膣洗浄による治療効果について検討した。洗浄は10%ポピドンヨード50倍希釈液を用い、2週間に1度の間隔で実施した。その結果5例中4例において、膣分泌物中の細菌の減少傾向が認められ、外陰部の発赤、びらん、悪臭などの自覚症状も軽減した。本研究から、膣感染症に対する洗浄の有効性および女性脊髄障害者の健康問題に関する医療者の理解と当事者に対する知識の普及の必要性が示唆された。
著者
永松 秀樹 筧 龍二 平賀 聖悟 加藤 幹雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.996-1002, 1987-06-20

過去3年間に当科で経験した神経因性膀胱70症例につき治療経過を中心に検討を加えた.対象の年齢は13歳から87歳(平均58.4歳),男女比2.2:1で,発症後6ヵ月以上経過していた例が約半数を占めた.神経因性膀胱の分類は,脳膀胱16例,脊髄膀胱25例,末梢神経障害膀胱21例,その他および不明8例であり,原因疾患は骨盤内手術,脳血管障害,脊髄損傷の順に多かった.初診時の泌尿器科的合併症は,尿路感染27例,前立腺肥大症12例,腎機能障害および尿道カルンクルス各3例などで,その他61%に残尿を認めた.膀胱内圧曲線の分類は,弛緩型膀胱48例(69%),正常型7例,無抑制膀胱6例,痙性膀胱5例,いわゆる抑制膀胱と無緊張性膀胱各2例であった.治療法は保存療法単独63例(90%),手術療法併用7例(10%)で,保存療法では薬物療法を69例に施行し,残尿のみられた例では,自己導尿を主体とする間歌的導尿を30例に併用した.手術はTUR-P 5例,膀胱瘻造設2例で,うち1例にLapides' cutaneousvesicostomyを施行した.間歇的導尿例の平均残尿量は治療前205ml,治療後84ml,平均残尿率は治療前56.5%,治療後28.9%で共に有意(p<0.001)の改善を認めた.また,薬物療法と間歇的導尿法でカテーテルフリーとなったものは13例(43%)で,保存療法単独でも残尿の減少と尿路感染の消失に有効であったが,カテーテルフリーを目標とすれば十分な成績とはいえなかった.