著者
箕浦 信勝
出版者
東京外国語大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度、臨地研究としては、2008年8月8日から、9月6日までマダガスカル国マハザンガ市及び、首都アンタナナリブ市に滞在しました。マハザンガ市では、4年に1回開催される、マダガスカル全国ろう者大会に参加し、マダガスカル各地から集まったろう者達と交流を深めました。また、マダガスカル全国ろう者協会の支援国であるノルウェーからのろう者とも交流を持ちました。マダガスカル手話は、1960年にアンツィラベに最初のろう学校が設立されたときに、ノルウェーから多数の教師が赴き、そのせいでノルウェー手話の手話単語を多く受け入れているようです。これは、今後の研究課題になります。アンタナナリブでは、ミティアろう学校のラウベリナ・エバ先生から聞き取り調査を行ないました。マダガスカル手話は、管見の及ぶ限り、他の言語学者によっては研究されていません。ろう者自身の語彙集編算は、マダガスカル全国ろう者協会を中心に進められています。以上のことから、マダガスカル手話の文法、語彙、テクスト・談話収集などのすべての領域において、言語学的訓練を受けた人間によるさらなる研究が俟たれており、本研究は、その一端を担っています。なお、最終年度において、予算を大幅に消化せずに終わってしまいましたが、特に2008年度後半、2008年10月辺りから、2009年4月辺りまで、持病の鬱が重篤化し、物品を注文するなどの事務処理が、全くできない状況に陥ってしまったことによります。予算を大幅に使わなかったこと、および持病の鬱が重篤化したことで、本研究最終時期の研究および、今後の研究に少しく影響があったことは否めませんが、本研究の全体的な達成度については、発表論文などを、持病の鬱の重篤化以前に提出していたこともあり、おおむね順調であったと考えます。
著者
深澤 秀夫 箕浦 信勝 飯田 卓
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国語にも指定されているマダガスカル語とマダガスカルのろう者たちが用いる手話の会話場面を臨地調査によって収集・記録し分析した結果、マダガスカル語の動詞の態の選択、語順の選択、主語の単数/複数の選択の頻度を会話場面毎に計測することによってそこに内在する行為主体の志向の強弱を判定し、マダガスカルの人びとの文化の共通性と多様性を測定することが可能であるとの見通しを得た。その一方、マダガスカル語とマダガスカル手話とでは、挨拶の定型性、同時発話の頻度、動詞の態の種類をめぐり明らかな違いが認められ、その要因についてはさらなる調査が必要である。