著者
箕輪 政博 形井 秀一
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.646-657, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】日本の鍼灸教育における灸療法指導の現状と課題を把握する。【方法】2004年4月現在の (財) 東洋療法研修試験財団の学校養成施設名簿に基づく、全国の鍼灸専門学校66校への郵送によるアンケート調査。【結果】有効回答は62.1% (41/66校) であった。1学年で、基礎実技として習得して、単位数は「2単位」が36.6% (15/41校) で最多、指導内容は透熱灸の時間数が最も長く、無痕灸の4倍以上であった。艾〓の大きさは米粒大以下の小艾〓が主流で、七分灸や八分灸の手法を多く用いていた。8割以上の学校で灸療法は大変有効であると答えていたが、臨床実習での施術指導は約半数に留まっていた。実技指導上の問題点は火傷が最も多かったが、9割以上の学校で学生同士の施灸指導をしていた。【まとめ】日本の鍼灸専門学校における灸療法指導の概要を明らかにした。今後は、日本の伝統的な灸療法を堅持しながらも、特に火傷問題を中心にした安全性に関する議論を早急に始める必要がある。あわせて、現代日本鍼灸臨床における灸療法の実態調査が必要であると考える。
著者
箕輪 政博 形井 秀一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.644-655, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
18

【目的】2004年時点の日本のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師を教育する学校養成施設141校の明治期以降の変遷と現状を分析する。【方法】 (財) 東洋療法研修試験財団の学校養成施設名簿、全国盲学校実態調査、 (社) 東洋療法学校協会創立10周年記念誌および郵送により入手した学校案内などから、基礎になるデータを作成・分析して考察した。【結果】141校の内訳は大学5校 (短期大学を含む) 、盲学校61校、専門・専修学校 (各種学校を含む) が66校、視力障害センターなどの養成施設が9施設であった。視覚障害者の学校養成施設はその殆どが国公立であり、晴眼者の学校はすべて私立であった。創立について、1920年代までに盲学校の創立が集中する1900年代前後、戦後のあはき法の施行に伴い比較的古い専門学校の創立が集中する1950年代前後、憩98年の福岡地裁判決以降から現在に至る新設校の創立集中時期の3期にわけることができ、それぞれについて検証した。【まとめ】141校についての創立から現在に至る変遷及び現状が明らかになった。鍼灸専門学校の急増は、現在の鍼灸界にとってかつて経験のない大変革である。鍼灸医療市場が伸び悩む現状で、今後の日本のあはき教育が問われ、新たな局面を迎えようとしている。
著者
箕輪 政博 形井 秀一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.491-494, 2008-05-20

受傷直後から整形外科治療に併せて鍼治療を行った外傷性頸部症候群の一症例を報告する。症例は軽自動車を運転中に後方より追突された38歳の女性。事故翌日より,手指のしびれ,肩背部の疼痛を自覚して,整形外科治療とともに鍼治療を開始した。鍼治療は上肢下肢の遠隔部の経穴のみに置鍼施術を行い,評価には数値的評価スケールを用いた。治療後に数値が50%以上改善するように治療した結果,治療直後の症状改善は著しく,数値的評価も経過とともに改善した。鍼治療は症状が強い時を主に合計49回行い,7カ月後に症状が緩解したので終了した。外傷性頸部症候群の難治例の患者は,治療の長期化に悩むケースがあり,本症候群に対する鍼灸治療のエビテンスの確立が望まれる。