著者
簗瀬 範彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-20, 2011
被引用文献数
1

本研究は19世紀に作成された地籍図の面積誤差の原因を考証したものである.現在の地籍制度は,明治期の税制革改である地租改正時の土地台帳とその付属地図を淵源としている.数%からときには10%以上に及ぶ面積誤差の原因は,当事者である農民の拙劣な測量技術,重税を逃れようとする農民の計測の誤魔化し,官側の検査の杜撰さ等によるものと一般に認識されている.しかし,いわゆる「縄伸び」と呼ばれる登記簿面積と実測面積との差は,概ね官側から提示された許容範囲内にあることを地籍図に関する測量基準の分析から明らかにした.併せて,分筆対象の筆全体を実測なしに分筆する制度が長らく行われたことや農地改革に伴う国有地解放なども地籍図における面積誤差の原因の一部であることを指摘しておきたい.
著者
藤島 博英 簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_181-I_192, 2012

平成17年,「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定された.以後,地方自治体において,総合評価方式の導入が進んでいるが,広域自治体の4割強は試行段階にあり,基礎自治体の本格的実施は,7%未満である.<br> 本研究は,すべての広域自治体を対象に公共調達実施状況,第三者委員会の運営状況および基礎自治体に対する支援状況に関するアンケート調査を実施した.アンケートの分析結果,地方自治体において総合評価の実施の大きな隘路となっている制度的要件は,第三者委員会であることを明らかにできた.しかし,職員配置状況から,小規模な広域自治体ほど,運営の負担が大きいため,第三者委員会の開催にかかる事務的負担を軽減するような制度的運用を行うことが,技術評価を伴う総合評価の導入促進に効果的であると考える.
著者
簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.53-65, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
81

我が国の代表的な都市計画ツールである土地区画整理の起源は1899年制定の「耕地整理法」から始まり,関東大震災と戦災の復興事業の経験を踏まえ,現行の「土地区画整理法」として完成を見た.その後の現場での技術的な工夫の積み上げや1975年制定の「大都市地域における住宅及び住宅地の供給に関する特別措置法」の諸規定を踏まえ,1995年制定の「被災市街地復興特別措置法」として,災害復興への制度的な対応能力を発展させて来た.本研究は土地区画整理制度の骨格をなす「換地処分」を中心に制度の形成過程を体系的に整理,考察したものである. また,制度前史として,江戸期の慣行が耕地整理法に与えた影響,先行法とされる「土地区画改良ニ係ル件」の再評価,法令用語の定着過程等において,従来の見解に幾つかの修正を求めることができたものと考える.
著者
藤島 博英 簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_239-I_250, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
12

平成22年度現在,全地方自治体の約70%が総合評価方式による入札制度を試行的に導入したが,多くの地方自治体では本格的な導入に至ってはいない.その理由は,最も簡便な特別簡易型による型式でさえも,事務量の増大や入札期間の長期化などが負担とされているからである.その背景として,入札を担当する人員の問題や総合評価方式に相応しい工事規模や工種と実際の発注案件との乖離といった実務的な問題,さらに公共調達に関する自治体職員の意識の問題があるものと推定できる. 本研究では,北関東3県の入札担当職員の配置状況と事務量,そして,職員の総合評価に対する意識等,地方中小自治体が総合評価導入に対して抱える実務上の課題を抽出した. その結果,上記の課題に対して小規模であっても,比較的総合評価方式に対応している自治体のグループの存在を確認できた.一方,体制と工事発注量の不均衡から,今以上の総合評価方式の導入に限界を感じている規模の自治体グループの存在も窺えた.
著者
藤島 博英 簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_181-I_192, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
15

平成17年,「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定された.以後,地方自治体において,総合評価方式の導入が進んでいるが,広域自治体の4割強は試行段階にあり,基礎自治体の本格的実施は,7%未満である. 本研究は,すべての広域自治体を対象に公共調達実施状況,第三者委員会の運営状況および基礎自治体に対する支援状況に関するアンケート調査を実施した.アンケートの分析結果,地方自治体において総合評価の実施の大きな隘路となっている制度的要件は,第三者委員会であることを明らかにできた.しかし,職員配置状況から,小規模な広域自治体ほど,運営の負担が大きいため,第三者委員会の開催にかかる事務的負担を軽減するような制度的運用を行うことが,技術評価を伴う総合評価の導入促進に効果的であると考える.