著者
籠 洋 横川 昌史 藤澤 貴弘 野間 直彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.87-96, 2013-04-05

全国各地で放棄竹林が問題になっており,地域の生物多様性の保全の観点から適切な竹林の管理方法が必要とされている.放棄竹林でのタケの伐採が地表性甲虫群集(コウチュウ目オサムシ科)に与える影響を評価するため,タケの密度を4段階に変えた実験区を設定し,無餌ピットフォールトラップを用いて地表性甲虫群集の調査を行った.落葉広葉樹とマダケが混交する滋賀県彦根市の犬上川河辺林において,タケ全稈伐採区(0本/m^2)・強間伐区(0.5本/m^2)・弱間伐区(0.7本/m^2)・放置区(1.8本/m^2)を設定し,2010年7月から12月の間で週に一度トラップの回収を行った.調査の結果,全稈伐採区で25種676個体,強間伐区で18種703個体,弱間伐区で15種829個体,放置区で12種531個体の地表性甲虫が捕獲された.統計解析の結果,地表性甲虫類の種数・多様度指数・下層植生の体積は全稈伐採区で最も高かった.2つの間伐区の地表性甲虫類の種数は放置区よりも高かった.除歪対応分析によって,地表性甲虫群集の序列化を行ったところ全稈伐採区の種組成は,他の3つの処理区と異なることが明らかになった.全稈伐採区を特徴づける種群はゴモクムシ亜科数種,コガシラアオゴミムシやアトボシアオゴミムシなどであった.ゴモクムシ亜科数種,コガシラアオゴミムシは草地性種であり,これらの草地性種が全稈伐採区に侵入した結果,全稈伐採区で種数や多様度指数が増加し,種組成が変化したと考えられた.間伐強度が異なる4つの処理区について1反復で調査を行ったため,処理の効果を明言することは難しいかもしれないが,本研究の結果は,落葉広葉樹林に侵入したタケの全稈伐採や間伐を行うことで,多様な地表性甲虫群集を維持できる可能性を示している.