著者
後藤 博三 籠浦 正順 嶋田 豊 小暮 敏明 諸橋 正昭 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-215, 2001-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

菌状息肉症の腫瘍期の症例に対し, 電子線照射やIFN-γの局所療法などの西洋医学的治療に加え, 和漢薬治療を併用し, 長期間良好な経過を得ている症例を経験したので報告する。症例は40歳・男性・会社員。平成3年12月, 上肢を中心に紅斑が出現し全身に拡大した。平成9年7月, 体幹に皮膚腫瘤の形成を認め当院皮膚科にて皮膚生検により菌状息肉症腫瘍期と診断。同年9月に当部を初診し, 潰瘍を伴う皮膚腫瘤や皮疹を目標に, 十味敗毒湯, 托裏消毒飲, 内托散, 〓帰膠丈湯等を使用した。また, 電子線照射施行時の口渇や照射部の熱感に対して白虎加人参湯を, 併発する下痢や全身倦怠感に対して黄耆建中湯等を適時用いた。以後, 皮膚科におけるIFN-γと免疫療法を継続し, 小腫瘤の再発時に托裏消毒飲等を用い良好に経過している。今後も, 慎重な経過観察が必要であるが, 和漢薬の併用が本症例に有用であると考えられた。