著者
藤永 洋 高橋 宏三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.146-150, 2009-06-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Japanese Oriental (Kampo) medicine has been widely used to treat fibromyalgia. In Kampo medicine, the determination of therapy is based on “Sho” (diagnosis of Kampo medicine). However there have not been sufficient studies of the “Sho” in fibromyalgia. We therefore investigated the “Sho” in fibromyalgia by assessing the “Sho” in 27 patients with fibromyalgia: 20 females and 7 males, mean age 52.9±15.6 (27 to 89). The result showed 3 patients with “Jissho” (hyperfunction of body energy), 15 patients with “Kyojitsukansho” (medium of hyperfunction/hypofunction of body energy) and 9 patients with “Kyosho” (hypofunction of body energy). All patients showed “Kikyo” (deficiency of “Ki” (vital energy)), “Kiutsu” (insufficient circulation of “Ki” and “Ki” stasis in an organism)”, and “Oketsu” (insufficient blood-circulation and blood stasis). The “Oketsu” score of the 15 patients using Terasawa’s criteria were 27.0~67.0, mean score 43.5±10.1. Nine of the 15 patients showed severe “Oketsu”, which was indicated by a total score of more than 40 points. This finding indicated an intimate correlation with fibromyalgia and“Oketsu”.Several reports showed the presence of abnormal microcirculation in fibromyalgia. Abnormal microcirculation is considered to be related to “Oketsu”. Therefore, we considered that “Oketsu” is an important pathological condition to investigate and treat with fibromyalgia.
著者
塩谷 雄二 嶋田 豊 松田 治巳 高橋 宏三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.823-831, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

駆〓血生薬であるサフランの薬理学的作用を明らかにする目的で, まず投与前に性成熟期の12人の健常女性の月経期, 卵胞期, 黄体期で11-dehydro TXB2, 血小板凝集能, 血液粘度, 血液生化学の検査を行った。月経期では卵胞期または黄体期に比べ, 血液粘度, 血小板凝集能, 11-dehydro TXB2 の上昇と平均赤血球容積 (MCV) の増加を認めた。このことから血液粘度を昇させる要因としてMCVの増加による赤血球変形能の低下が考えられた。月経期では子宮内膜の PGE2 が最高値を示すことから, MCVの増加に PGE2 が関与していることが推測された。次いで6例の対照群には白湯を投与し (約4週間), 他の6例にはサフラン振り出し液を投与し (約4週間), これらの指標の変化を比較検討した。サフランは月経期においてMCVと血液粘度を明らかに低下させたことから, 血液粘度の低下の要因にはMCVの減少による赤血球変形能の改善が関与しているものと考えられた。また血中エストロゲンが低値の卵胞期において11-dehydro TXB2を低下させた。〓血病態においては全血粘度が上昇していること, 血小板のトロンボキサン合成が亢進していることが報告されているが, サフランはこれらの指標に対し明らかな作用を持つことから, 駆〓血作用を有することが健常の性成熟女性で示された。
著者
伊藤 隆 喜多 敏明 嶋田 豊 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.433-441, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

八味地黄丸が奏功した慢性喘息患者4症例を報告した。症例は63歳女, 57歳女, 41歳女, 42歳男。いずれも成人発症, 通年型である。重症度では第1例は軽症, 第2例は中等症, 第3, 4例は重症に相当した。漢方医学的には4例ともに八味地黄丸証を認めた。第1例はウチダ八味丸Mが奏功したが, 第2~4例は反応せず熟地黄を用いた自家製丸剤により始めて喘息病態の改善を認めた。4例ともに喘息病態の改善に伴い発作点数の低下, 治療点数の低下, 早朝時ピークフロー値の上昇を認めた。経口ステロイド剤は第3例と第4例に使用していたが, 第3例で離脱, 第4例で減量できた。本報告により八味地黄丸が慢性喘息患者の呼吸機能改善に対して有用であること, 丸薬として投与する場合には乾地黄よりも熟地黄を用いた方が治療効果においてより優れている可能性が示唆された。
著者
引網 宏彰 柴原 直利 村井 政史 永田 豊 井上 博喜 八木 清貴 藤本 誠 後藤 博三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.699-707, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
6

リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対して,漢方治療が奏効した5症例について報告する。さらに,これら5症例を含む当科でのPMR治療例10例について検討した。その結果,有効症例は6症例であった。そのうち,1例はステロイド剤の投与を拒否した症例であったが,他の5症例は筋痛症状や炎症反応の出現により,ステロイド剤の減量が困難な症例であった。また,1例を除いて,CRPは3.0 mg/dl以下であった。一方,無効症例では高度の炎症反応を示しており,ステロイド剤の投与が必要であった。有効症例には駆瘀血剤(疎経活血湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,腸癰湯加芍薬,薏苡附子敗醤散,当帰芍薬散)が投与されていた。以上より,PMRでステロイド剤の減量が困難な症例や炎症反応が軽度である症例には,漢方薬は治療の選択肢の一つとなりうると考えられた。さらに駆瘀血剤の積極的な使用がPMRの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
後藤 博三 嶋田 豊 引網 宏彰 小林 祥泰 山口 修平 松井 龍吉 下手 公一 三潴 忠道 新谷 卓弘 二宮 裕幸 新澤 敦 長坂 和彦 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.471-476, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

無症候性脳梗塞患者に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方薬の効果を3年間にわたり前向き研究により検討した。対象は富山大学附属病院ならびに関連病院を受診した無症候性脳梗塞患者93名で男性24名,女性69名,平均年齢70.0±0.8才である。桂枝茯苓丸エキスを1年あたり6カ月以上内服した51名をSK群,漢方薬を内服せずに経過を観察した42名をSC群とし,MRI上明らかな無症候性脳梗塞を認めない高齢者44名,平均年齢70.7±0.7才をNS群とした。3群間において,開始時と3年経過後の改訂版長谷川式痴呆スケール,やる気スコア(apathy scale),自己評価式うつ状態スコア(self-rating depression scale)を比較した。また,SK群とSC群においては自覚症状(頭重感,頭痛,めまい,肩凝り)の経過も比較検討した。その結果,3群間の比較では,自己評価式うつ状態スコアにおいて開始時のSK群とSC群は,NS群に比べて有意にスコアが高かった。しかし,3年経過後にはNS群は開始時に比較し有意に上昇したが,SK群は有意に減少した。さらに無症候性脳梗塞にしばしば合併する自覚症状の頭重感において桂枝茯苓丸は有効であった。以上の結果から,無症候性脳梗塞患者の精神症状と自覚症状に対して桂枝茯苓丸が有効である可能性が示唆された。
著者
関矢 信康 引網 宏彰 古田 一史 小尾 龍右 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.811-815, 2004-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

難治性の気管支喘息の3症例に対して咽喉不快感, 動悸, 自汗を目標として清暑益気湯を投与した。目標とした症状および所見は速やかに改善した。さらに発作の回数が著明に減少あるいは消失した。そのほか3症例に共通していた事柄は中年期であること, 発作が通年性であること, 心窩部不快感, 心下痞〓, 臍上悸を認めることであった。これまで清暑益気湯は夏やせ, 夏まけに対して用いられることが多かったが中年期の気管支喘息の長期管理薬 (コントローラー) としても認識されるべき処方であると考えられた。
著者
小暮 敏明 渡辺 実千雄 伊藤 隆 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.349-355, 1997-11-20
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

温経湯が奏効した原発性シェーグレン症候群(pSjS)の三例を報告した。症例1は, 67歳, 女性。1992年4月に目のゴロゴロ感を自覚, 11月砺波総合病院受診。抗核抗体(+), 乾燥性角結膜炎の存在, 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断。点眼薬で加療されたが無効のため1995年6月同院東洋医学科受診, 温経湯を投与したところ眼・口腔乾燥症状の軽快が得られ, 6ヶ月後乾燥性角結膜炎の改善が確認された。症例2は73歳, 女性。1987年腰痛で当科受診し和漠薬治療を受けていた。1991年胸鎖関節痛が出現し当科入院。シルマーテスト(+), 抗SS-A抗体(+), 口唇生検でリンパ球浸潤の存在より, pSjSと診断。温経湯の投与後1ヶ月で胸鎖関節痛は消失し, 赤沈などの炎症反応も正常化した。しかし, この例は乾燥症状の改善は得られなかった。症例3は39歳, 女性。1991年6月多関節痛, 口腔乾燥感を自覚し近医受診, 高γ-グロブリン血症, 抗SS-A抗体(+), 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断,非ステロイド性抗炎症剤を受けていた。和漢薬治療希望で1994年3月当科受診。多関節痛が強いため, 桂枝加苓朮附湯等を投与し関節痛は軽減。口唇乾燥と月経痛から温経湯に転方, 口腔乾燥感, 目のカサカサは軽快したが, 手関節痛の出現のため2ヶ月後, 桂枝加朮附湯加減に転方した。これらから温経湯のpSjSへの応用の可能性が示唆されるとともに, 乾燥症状だけでなく, 関節痛という腺外症状にも有効であったことから, 本方剤を運用するうえで示唆に富む症例と考えられた。
著者
長坂 和彦 土佐 寛順 巽 武司 嶋田 豊 伊藤 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.273-280, 1998-09-20
参考文献数
13
被引用文献数
7 4

西洋医学的治療に抵抗した難治性の褥瘡に帰耆建中湯加附子が奏功した4症例を経験した。症例1は82歳, 女性。繰り返す褥瘡に帰耆建中湯加附子が有効であった。帰耆建中湯加附子の内服を継続することにより、新たな褥瘡の再発はない。症例2は59歳, 女性。直径2cmの褥瘡周囲の皮下に直径10cmにわたるポケット形成があり、同部の皮膚は紫色を呈していた。帰耆建中湯加附子内服後、皮膚の色は正常になり褥瘡は治癒した。症例3は85歳, 男性。過去2回、瘻孔を伴う褥瘡の手術を受けたが治癒しなかった。帰耆建中湯加附子内服後、体交時, おむつ交換時に看護婦を大声で怒る元気がでてきた。また、創部消毒時に強い痛みを訴えるようになった。痛みの自覚は血流が改善してきたことによると考え、同方を継続。褥瘡の治癒とともに全身状態も改善した。症例4は64歳, 女性。心筋梗塞後に心停止し、脳死状態になり、仙骨部に褥瘡を形成するに至った。褥瘡は大学付属病院,総合病院で治療を受けたが改善しなかった。帰耆建中湯加附子 (黄耆30.0g, 白河附子6.0g) で治癒した。帰耆建中湯加附子は、難治性の褥瘡には一度は試みてよい方剤と考えられた。
著者
柴原 直利 嶋田 豊 伊藤 隆 新谷 卓弘 喜多 敏明 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。
著者
後藤 博三 藤本 誠 渡辺 哲郎 引網 宏彰 小尾 龍右 野上 達也 永田 豊 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.189-197, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
3 4

視床痛は視床出血や視床梗塞後に伴う難治性中枢性疼痛として知られている。しかし,薬物療法や外科的治療法が試みられているが確実な治療法がない。我々は難治性の視床痛6例に漢方治療を試み,症状の軽減した4例を経験した。症例は年齢27才から70才の男性4例,女性2例であった。診断は右視床出血3例,左視床出血1例,右視床梗塞2例で,発症後から漢方治療までの期間は6カ月から12年と幅があった。改善した4例では症状がほぼ消失から4割程度減弱した。改善例は全例,烏頭・附子含有方剤が用いられていた。抑肝散加陳皮半夏が精神症状の強い2例で有効であった。また,駆瘀血剤のみで十分改善を認めた症例もあった。症状が長期にわたる症例では,有効例でも症状は残存した。さらに難治例は症状が固定しており,強い麻痺等を伴う症例であった。
著者
後藤 博三 籠浦 正順 嶋田 豊 小暮 敏明 諸橋 正昭 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-215, 2001-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

菌状息肉症の腫瘍期の症例に対し, 電子線照射やIFN-γの局所療法などの西洋医学的治療に加え, 和漢薬治療を併用し, 長期間良好な経過を得ている症例を経験したので報告する。症例は40歳・男性・会社員。平成3年12月, 上肢を中心に紅斑が出現し全身に拡大した。平成9年7月, 体幹に皮膚腫瘤の形成を認め当院皮膚科にて皮膚生検により菌状息肉症腫瘍期と診断。同年9月に当部を初診し, 潰瘍を伴う皮膚腫瘤や皮疹を目標に, 十味敗毒湯, 托裏消毒飲, 内托散, 〓帰膠丈湯等を使用した。また, 電子線照射施行時の口渇や照射部の熱感に対して白虎加人参湯を, 併発する下痢や全身倦怠感に対して黄耆建中湯等を適時用いた。以後, 皮膚科におけるIFN-γと免疫療法を継続し, 小腫瘤の再発時に托裏消毒飲等を用い良好に経過している。今後も, 慎重な経過観察が必要であるが, 和漢薬の併用が本症例に有用であると考えられた。
著者
北原 英幸 野上 達也 渡り 英俊 金原 嘉之 藤本 誠 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.137-142, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
19

症例は42歳女性。1年前から月に1—2回,呼吸困難,恐怖感,手の硬直などを伴うパニック発作があり,多忙時や月経期間に生じやすく,他院から処方された加味逍遥散エキスと甘麦大棗湯エキスが有効であったが,自動車の接触事故後に今まで以上に強い発作が出現したため当科を受診した。血液検査,画像検査等で特記所見なくパニック症と診断。奔豚気と捉えて苓桂甘棗湯を処方し,2週間後から気分の改善と発作症状の軽減を得たが,仕事が多忙となった2ヵ月後から週1—2回発作が再発した。前駆症状として後頸部の異常感覚が生じ,同時期に頸部痛,頸部の凝りが増悪することを考慮して桂枝去桂加茯苓白朮湯に転方したところ,後頸部の異常感覚が消失し,以後,発作は出現せずに経過した。頸部の不調がパニック発作の出現と関連する場合,桂枝去桂加茯苓白朮湯が発作予防に有効な方剤と考えられた。
著者
嶋田 豊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.198-202, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

従来から知られていた過剰服用による漢方薬の副作用に、甘草の偽アルドステロン症、麻黄の交感神経刺激作用、附子の神経麻痺作用、大黄の下痢などがある。一方、ここ三十年ほどの間に明らかになったものとして、免疫・アレルギー反応による間質性肺炎、肝機能障害、アレルギー性膀胱炎があり、特に黄芩との関連が指摘されている。さらに、山梔子の長期服用により腸間膜静脈硬化症が生ずることも知られてきており注意が必要である。
著者
嶋田 豊 後藤 博三 引網 宏彰 関矢 信康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、脳虚血による神経細胞障害に対する和漢薬(漢方薬)の保護作用とその作用機構をin vivoの基礎研究によって明らかにすることである。スナネズミー過性脳虚血モデルを用いて、漢方薬の経口投与の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死に対する効果、脳虚血後の海馬及び皮質における過酸化脂質(LPO)、一酸化窒素(NO)代謝物、スーパーオキサイド(O_2^<-・>)とヒドロキシルラジカル(HO^・)消去活性、ならびに抗酸化酵素活性に及ぼす効果について検討した。漢方薬は虚血7日前から、最長で7日後まで投与した。その結果、漢方方剤・釣藤散あるいは生薬・釣藤鈎の経口投与は、虚血7日後の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死を抑制した。また両者とも、虚血後の海馬におけるLPOとNO代謝物の生成を抑制した。虚血を行わない実験で、釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は、海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強し、虚血後も海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強した。抗酸化酵素活性については、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)及びグルタチオンパーオキシダーゼ(GSH-Px)を測定した。虚血を行わない実験では、海馬及び皮質ともにCAT活性が上昇したが、SOD及びGSH-Px活性は変化がなかった。虚血後のCAT活性は、釣藤散あるいは釣藤鈎投与によって海馬及び皮質ともに増強を認めた。以上の成績より、一過性脳虚血モデルにおいて釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は遅発性神経細胞死に対して保護作用を有し、その機序の一つとして脳内のCAT活性の増強を介する抗酸化作用の関与が示唆された。
著者
塩谷 雄二 寺澤 捷年 伊藤 隆 嶋田 豊 喜多 敏明
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.615-623, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎は東洋医学的に風湿熱・血熱・血虚・〓血などと捉えられている。一般に温清飲, 治頭瘡一方, 消風散, 十味敗毒湯, 越婢加朮湯, 白虎加人参湯, 駆〓血剤などの方剤が広く用いられているが, 成人型のアトピー性皮膚炎の治療は容易ではないというのが実状である。これまでアトピー性皮膚炎の治療とされているものでは, アトピー性皮膚炎に特有の皮膚の乾燥症状 (ドライスキン) が改善されないことが多く臨床上の課題である。今回, 治療に難渋していた乾燥性紅斑型の5症例に対して加減一陰煎加亀板膠の加減方に転方したところ奏効が得られた。加減一陰煎加亀板膠は養血潤燥, 養陰生津, 養陰清熱の働きがあり, 皮膚の炎症だけでなく, ドライスキンも改善され, ステロイド外用剤の離脱が比較的容易にできた。アトピー性皮膚炎患者の皮膚はドライスキンによってバリアー機能が障害され, 汗, 衣服, 掻破などの機械的な刺激, あるいはダニなどの環境アレルゲン因子に対して敏感になっている。そのため, 治療としては消炎だけでなく, ドライスキンも改善しなければ, アトピー性皮膚炎の治療とはならない。ドライスキンは表皮角層の水分量の減少が主因であり, 治療上考慮されなければならない重要な側面であると考える。
著者
萬谷 直樹 後藤 博三 藤永 洋 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.275-280, 1999-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

慢性便秘は一般に弛緩性便秘と痙攣性便秘に分類される。 痙攣性便秘には刺激性下剤は不向きであり, 長期の使用は原則として禁忌とされている。しかし実際には, 服用しなければ排便が得られないという理由で, 刺激性下剤が連用されていることも多い。今回, 加味逍遥散が奏功した慢性便秘の4例を経験した。症例1~3は痙攣性便秘であり, 症例1, 3, 4は刺激性下剤を常用していた。いずれも刺激性下剤や大黄含有方剤で, 腹部不快感や頻尿などの症状が出現する患者であった。加味逍遥散を使用し,良好な排便が得られるとともに, いらいら, のぼせ感, 肩こり, 倦怠感, 月経痛, 頻尿などの全身症状も改善された。刺激性下剤を連用していた3例は, その離脱が可能となった。慢性便秘の薬物治療においては, 刺激性下剤の長期連用を回避するために,加味逍遥散などの漢方方剤が果たす役割は大きいと考えられた。
著者
嶋田 豊 藤永 洋 引網 宏彰 後藤 博三 伊藤 隆 古田 一史 三潴 忠道 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.437-443, 1998-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

四肢や腰の痛み・脱力感・しびれ・冷えを有する37例を対象に, 八味地黄丸の有効性及び適応病態について検討した。その結果, 4週間投与における全般改善度の改善率は55.9%であり, 痛み・脱力感・しびれ・冷えの改善率は各々44.8%, 39.3%, 59.1%, 31.8%であった。60歳以上は60歳未満に比べて, しびれの改善が有意に優っていた。また, 投与後に「髪の毛が薄い, 抜けやすい」,「目がかすむ, 疲れる」,「大便が固い」,「手が痛い」,「足がしびれる」,「手が冷える」,「足が冷える」の各症状で有意の改善がみられた。さらに, 有効群と無効群に分けて検討したところ,「聞こえが悪い」の症状において, 有効群が無効群に比べて有意に程度が強いという結果が得られた。以上の成績は, 高齢者の手足腰の痛み・脱力感・しびれ・冷えに対する腎虚を目標とした八味地黄丸による治療の有効性を示すものと考えられた。