著者
松下 征司 上田 喜敏 宮本 忠吉 中原 英博 橋詰 努 北川 博巳 土川 忠浩 永井 利沙 竜田 庸平 直江 貢 米津 金吾 佐々木 寛和 山上 敦子 藤澤 正一郎 末田 統
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2084-A3P2084, 2009

【はじめに】<BR> 車いすは歩行困難な高齢者や障害者にとって使用頻度の高い福祉用具の一つであり,使用者のシーティングや駆動特性等については多くの報告がある.しかし,車いす駆動が身体機能に及ぼす影響についての報告は,まだ散見される程度である.本研究では,基礎的実験として車いすのタイヤ空気圧の違いによる身体負荷を酸素摂取量と駆動トルクから算出した仕事率より評価したので報告する.<BR><BR>【対象と方法】<BR> 対象は,ヘルシンキ宣言に基づき本実験に同意の得られた健常男性3名(A:体重71kg・56歳,B:63kg・32歳,C:72Kg・27歳)である.実験装置として,トルク計(共和電業製)とロータリ・エンコーダ(小野測器製)を内蔵した計測用車いすを用い,酸素摂取量の計測には携帯型呼吸代謝測定装置VO2000(S&ME社製)を使用した.なお,事前にダグラスバッグ法(以下,DB法)によるVO2000の検証を行った.心拍計はS810i(ポラール社製)を使用し,主観的運動強度はボルグ指数を用いた.実験方法に関して1回の計測はVO2000により走行開始前5分間の安静時酸素摂取量を計測した後,10分間1周60mのコースを10周走行した(時速約3.6km/h).1周回毎(1分毎)に心拍数とボルグ指数を記録した.車いすの駆動ピッチは60ピッチ/分とし,計測開始前に10周練習走行を実施した.車いす走行中の身体負荷を比較するため,タイヤの空気圧(300kPa,200kPa)をパラメータとした.<BR><BR>【結果】<BR> 車いす駆動に使われた酸素摂取量は駆動時平均酸素摂取量-安静時平均酸素摂取量より求まる.酸素摂取量より仕事率の被験者平均値を求めると 200kPaは約206[W],300kPaは約151[W]となった.また,車いすを駆動するのに必要とされる仕事率は,計測用車いすから得られる駆動トルク[Nm]と車輪の回転角より算出した.駆動トルクより,10周走行中の平均仕事率を算出すると空気圧200kpaの被験者平均値は約22.2[W],300Kpaは約14.9[W]となった.心拍数とボルグ指数においては,200kPaでの心拍数の被験者平均値は115.3[bpm],300kPaは105.3[bpm]であった.200kPaのボルグ指数平均値は約12.9,300kPaで約10.9であった.すべての計測項目において各被験者ともタイヤ空気圧の低い場合が高い場合と比較して運動負荷が高くなる傾向を示した.<BR><BR>【考察】<BR> 酸素摂取量および駆動トルクより算出される仕事率は,タイヤ空気圧の違いに対し同じような傾向を示し,身体負荷の違いを明らかにできた.被験者間の仕事率を比較すると,全体の傾向は一致しているが個人差も観察された.原因として年齢や体格,運動能力などの個人因子の影響が考えられ,今後これらを含めたより詳細な検討を行う予定である.