著者
宮地 元彦 奥津 光晴 中原 英博 斉藤 剛
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.91-97, 1999-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

A study was conducted to determine non-invasively the effects of endurance training on the size of the inferior vena cava in humans. Twelve healthy male subjects were assigned to either an exercise-trained group (ET, n=7) or a sedentary control group (S, n=5) . The ET group underwent cycle-endurance training for 8 weeks (80%Vo2max, 40 min/day, 4 days/week) . The S group led normal lives during the 8-week period. Before and after the training period, cross-sectional areas (CSA) of the inferior vena cava and the ascending and abdominal aorta were measured by echography. The CSA of the inferior vena cava after training was significantly larger than that before training in the ET group. There was no significant difference in the S group. These results indicate that the inferior versa cava can be morphologically altered as an adaptive response to endurance training. We consider that this adaptation partly contributes to the improvement in the efficiency of venous return from exercising muscles to the heart. Although the present training also increased the CSA of the aorta, the degree of change was smaller than that seen in the inferior vena cava, implying that the factors of adaptation and adaptability to endurance training in the inferior vena cava differ from those in the aorta.
著者
宮本 忠吉 仲田 秀臣 大槻 伸吾 伊藤 剛 中原 英博
出版者
公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
雑誌
デサントスポーツ科学 (ISSN:02855739)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.233-242, 2022-06-20 (Released:2023-04-09)
参考文献数
21

本研究は,システム生理学的研究手法を用いて週一回の高強度インターバルトレーニングが呼吸化学調節系のフィードバック制御機能や心形態・心機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的と した.対象は健常男性7名.トレーニング前後で最大酸素摂取量(VO2max)及び心形態の測定評価を行った.また安静時,低強度,高強度運動時の各々の条件下にて,呼吸化学調節フィードバック系をコントローラ(制御部)とプラント(制御対象部)の2つのサブシステムに分離した後,定量化し,それぞれの機能特性をトレーニング前後で比較検討した.高強度インターバルトレーニング後のVO2max(+9.5±7.5%)及び左室後壁厚(+17.9±8.6%)はトレーニング前と比較して有意に増加した(p < 0.01).また,トレーニングによって高強度運動時のコントローラ特性曲線のリセッティングが生じ,プラント特性(双曲線)の比例定数の増加及びx軸漸近線の値の減少が認められた(p < 0.05).本研究から,週一回の高強度インターバルトレーニングは最大呼吸循環機能を向上させるだけでなく,高強度運動時における呼吸化学調節系の機能特性を特異的に変化させること,制御部特性の機能的変化が,高強度運動時の換気抑制の主たるメカニズムとして動作していることが判明した。
著者
宮本 忠吉 上田 真也 中原 英博
出版者
森ノ宮医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、高次脳機構を介した循環制御の生理学的意義を明らかにすることであった。実験の結果、運動準備期における呼吸循環応答の量的・時間的動態は、その後に実施される運動の負荷強度に依存して予測的・見込み的に変化すること、また、運動予測なく突然、運動を開始させると、予測がある場合と比較して、強度依存性に呼吸循環系応答のダイナミクスに変化が生じることが判明した。以上より、高位中枢による予測的・見込み的な呼吸循環制御は、生体へ加わる短時間高負荷運動に対する生理学的ストレスを軽減し作業効率の改善に役立っていることや、学習や記憶といった高次脳神経機構の生体恒常性に果たす役割の重要性が示された。
著者
松下 征司 上田 喜敏 宮本 忠吉 中原 英博 橋詰 努 北川 博巳 土川 忠浩 永井 利沙 竜田 庸平 直江 貢 米津 金吾 佐々木 寛和 山上 敦子 藤澤 正一郎 末田 統
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2084-A3P2084, 2009

【はじめに】<BR> 車いすは歩行困難な高齢者や障害者にとって使用頻度の高い福祉用具の一つであり,使用者のシーティングや駆動特性等については多くの報告がある.しかし,車いす駆動が身体機能に及ぼす影響についての報告は,まだ散見される程度である.本研究では,基礎的実験として車いすのタイヤ空気圧の違いによる身体負荷を酸素摂取量と駆動トルクから算出した仕事率より評価したので報告する.<BR><BR>【対象と方法】<BR> 対象は,ヘルシンキ宣言に基づき本実験に同意の得られた健常男性3名(A:体重71kg・56歳,B:63kg・32歳,C:72Kg・27歳)である.実験装置として,トルク計(共和電業製)とロータリ・エンコーダ(小野測器製)を内蔵した計測用車いすを用い,酸素摂取量の計測には携帯型呼吸代謝測定装置VO2000(S&ME社製)を使用した.なお,事前にダグラスバッグ法(以下,DB法)によるVO2000の検証を行った.心拍計はS810i(ポラール社製)を使用し,主観的運動強度はボルグ指数を用いた.実験方法に関して1回の計測はVO2000により走行開始前5分間の安静時酸素摂取量を計測した後,10分間1周60mのコースを10周走行した(時速約3.6km/h).1周回毎(1分毎)に心拍数とボルグ指数を記録した.車いすの駆動ピッチは60ピッチ/分とし,計測開始前に10周練習走行を実施した.車いす走行中の身体負荷を比較するため,タイヤの空気圧(300kPa,200kPa)をパラメータとした.<BR><BR>【結果】<BR> 車いす駆動に使われた酸素摂取量は駆動時平均酸素摂取量-安静時平均酸素摂取量より求まる.酸素摂取量より仕事率の被験者平均値を求めると 200kPaは約206[W],300kPaは約151[W]となった.また,車いすを駆動するのに必要とされる仕事率は,計測用車いすから得られる駆動トルク[Nm]と車輪の回転角より算出した.駆動トルクより,10周走行中の平均仕事率を算出すると空気圧200kpaの被験者平均値は約22.2[W],300Kpaは約14.9[W]となった.心拍数とボルグ指数においては,200kPaでの心拍数の被験者平均値は115.3[bpm],300kPaは105.3[bpm]であった.200kPaのボルグ指数平均値は約12.9,300kPaで約10.9であった.すべての計測項目において各被験者ともタイヤ空気圧の低い場合が高い場合と比較して運動負荷が高くなる傾向を示した.<BR><BR>【考察】<BR> 酸素摂取量および駆動トルクより算出される仕事率は,タイヤ空気圧の違いに対し同じような傾向を示し,身体負荷の違いを明らかにできた.被験者間の仕事率を比較すると,全体の傾向は一致しているが個人差も観察された.原因として年齢や体格,運動能力などの個人因子の影響が考えられ,今後これらを含めたより詳細な検討を行う予定である.