著者
藤井 聡 米田 和也 北村 隆一 山本 俊行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.15, pp.489-497, 1998

本研究では, セミマルコフモデルを適用し個人の通勤手段の連続時間軸上での遷移過程を再現する行動モデルを構築し, このモデルの未知パラメータを, 複数の離散断面で実施されたパネル調査で得られたデータに基づいて推定した. 推定計算の結果, 通勤者が通勤手段としてCarpoo1を連続して利用し続ける期間は短い, すなわち, Carpoolを通勤手段として利用するという状態は他の交通機関を利用するという状態に比べて不安定であることが分かった. また, 機関別の移動速度が利用手段に影響を及ぼしていることも示された. 構築したモデルに基づいた集計化分析からは, 本研究で提案した動的な行動モデルを用いることで, 均衡状態の成立も含めたシステム全体の挙動についての解析が行える可能性があることが分かった. それとともに, 通勤手段シェアでさえも, 現状と均衡状態との間には大きな乖離がありうることが示された.