著者
粕田 晴之 福田 博一 池野 重雄 清水 禮壽 林 和
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.103-108, 1997-09-10 (Released:2010-07-21)
参考文献数
26
被引用文献数
3

手術室看護婦と麻酔科医師10人 (看護婦医師群) と臨床実習生10人 (医学生群) について, 擦式アルコール消毒剤 (ウェルパス®3ml;丸石), 電解酸性水 (超酸化水®流水式500ml・1分;シオノギ) あるいは手術用滅菌手洗い水 (流水式5l・1分) を用いた衛生学的手洗いを行い, 寒天培地接触法を用いて除菌効果を比較検討した. 電解酸性水については手洗い時間 (250ml・30秒, 500ml・1分, 750ml・90秒, 1000ml・2分) と除菌効果との関係も検討した.擦式アルコール消毒剤を用いた手洗いによる除菌率は看護婦医師群, 医学生群それぞれ96.4±4.5%, 91.2±9.9%と差がなかったが, 流水式電解酸性水による手洗いではそれぞれ90.5±13.5%, 37.3±69.0%と医学生群で有意に低かった.流水式手術用滅菌手洗水による手洗いでは除菌されず, むしろ菌数の増加がみられた. 電解酸性水による手洗い時間と除菌効果との関係では, 看護婦医師群で手洗い1分から手洗い時間依存性に生菌数の有意な減少が認められたのに対し, 医学生群では30秒で菌数の増加がみられ, 1分30秒後から有意な減少が認められた.擦式アルコール消毒剤による衛生学的手洗いは, 日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群に対しても看護婦医師群同様に有効な除菌法であることが示された.日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群が流水式電解酸性水による手洗いで有効な除菌を得るためには, 看護婦医師群よりも30~60秒長い手洗い時間が必要で, 手洗い対象を考慮した手洗い時間を設定する必要のあることが示された.
著者
粕田 晴之 緑川 由紀夫 樋山 和広 堀田 訓久 村石 修 鈴木 和一 野々瀬 恵司 野々瀬 恵司
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01
参考文献数
3

〔はじめに〕自治医科大学附属病院は平成14年8月にリニューアルされたが,手術室空調の快適な運用が確立されるのに稼動開始後約2カ月を要した.〔新手術室空調の特徴〕手術室は3階で,4階が空調器械室階となっている.手術室ごとに空調機が設けられ,室内の設定器で運転/停止および室温設定ができる.外調機は4系統あり,陰陽圧可変型手術室を除く16の手術室の空調機へ処理外気を供給する.気流は,手術室天井中央のHEPAフィルタ付き吹出口から壁四隅の床レベルの吸込口に向かっている.換気回数は一般手術室が約30回/h,高清浄度手術室が約55回/hとなっている.〔問題点と対応〕問題点:新手術室の運用開始時,空調は手術室壁面の設定器の操作で自動制御されることになっていた.しかし,実際には設定通りに制御されるとは限らず,急に冷風が温風に,温風が冷風に変わったり,時に天井から蒸気が吹き出たりして,医師・看護師からクレームがついた.原因調査:自動制卸では設定温度を下げた時は冷風に,上げた時は温風に切り替わってしまうこと,設定温度に±1.5℃前後の幅があること,温度センサの反応と室温調節に時間を要すること,天井吹き出し口直下・手術台周辺と室温センサの設置されている壁面との間に約4℃の温度差があること等が判明した.対応:患者人室時は「暖房,26℃」でスター卜し,室温を変える場合は「暖房」のまま設定温度を上下させ,手術開始時は設定を「冷房」に変更してから設定温度を変える.〔結論:快適な手術室の空調〕室温制御の向上には,(1)温度幅の許容範囲をゼロに近づけて室温調節時間の短縮を図るとともに,(2)手術台周辺と壁面との間の温度差は手術室天井からの一方向流が維持されている証左であることから室温センサを天井吹き出し口直下・手術周辺に設置し,(3)湿度を外気の季節変化に応じて中央で調節する必要がある.
著者
粕田 晴之 福田 博一 林 和 相賀 美幸 島崎 則子 越智 芳江
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.132-135, 1999-05-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
28

本邦での手術時手洗いはスクラブ剤を使用したブラシングを中心に行われてきたが, この方法は皮膚を損傷するおそれのあることと手洗い時間が長いという欠点を有している.我々は, 先に看護婦を対象としグローブジュース法を用いて擦式エタノール薬を併用した短時間手洗い法の有用性について報告したが, 今回は医師を対象として検討した.手洗い前の片手当り手指生菌数が104cfu以上で, 「現行の手洗い法: 4%クロルヘキシジンを用い, 素洗いと3回のブラシングで計8分間の手洗い」と「新しい手洗い法: 4%クロルヘキシジンを用いた揉み洗い2回と爪周囲のブラシング1回, 0.2%クロルヘキシジン添加エタノール液を用いたラビング1回で計4分間の手洗い」を2回づつ実施できた外科系医師28名を対象とした.指数減少値からみた減菌効果が, 「現行の手洗い法」では手洗い直後および3時間後が1.49±0.66 (M±SD) および0.99±0.71であったのに対し, 「新しい手洗い法」ではそれぞれ1.61±0.55および1.44±0.52と高い値を示し, 3時間後では両者に有意差が認められた (p<0.05).「新しい手洗い法」は, 揉み洗い中心の短時間で簡便な方法であるにもかかわらず, 手洗い直後ばかりでなく, 手袋をして3時間後にも引き続き殺菌効果を持続する有用な手洗い法であることが示された.