著者
藤木 典生 中井 哲郎 金沢 弘 渡辺 稔夫 柿坂 紀武 和田 泰三 岡田 喜篤 津田 克也 細川 計明 山本 学 阿部 達生 近藤 元治 斉藤 隆治 渋谷 幸雄
出版者
日本先天異常学会
雑誌
日本先天異常学会会報 (ISSN:00372285)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.101-112, 1972

最近10年間に先天異常ことに心身障害児に対する一般の関心が大いに高まってきて、染色体分析や生化学的な代謝異常のスクリーニングの改善によって、早期診断、保因者の検索、適切た治療が進められてきた。こうした染色体異常や代謝異常でたくても、一般の人々が家系の中に発生した先天異常が遺伝性のものであるか、従って結婚や出産にあたってその再発の危険率などについて、しばしば尋ねられることが多い。我カは既に過去10年間にわたって遺伝相談を行ってきたが、今回これら二機関のデーターについて集計した結果について報告する。京都では、研究室で染色体分析や生化学的なスクリーニングことにアミノ酸分析を行っているためもあって、精薄が最も多く、近親婚の可否、精神病の遺伝性、先天性聾唖の再発率、兎唇、その他遺伝性疾患の遺伝的予後だとが主なものである。実施にあたっては、予約来院した相談者は人類遺候学の専門の知識をもったその日の担当医によって家族歴、既往歴など約2時間にわたる詳細な問診と診察の後に、その遺伝的予後についての資料が説明され、パンチカードに記入ファイルされるが、夫々臨床各科の専門医の診察の必要な場合には、その科の相談医の日が指定されて、専門的な診療指示が与えられる。愛知では、昨年末までの8ケ月間の一般外来忠児約900名について集計分類してみると、精薄が31.5%を占め、次いで脳性まひ、てんかん、自閉症、タウソ症候群、先天性奇形を含む新生児疾患、小頭症、情緒障害児、水頭症、脊椎異常、フェニールケトン尿症、脳形成異常、その他となっており、また、これらの心身障害児の合併症として骨折その他の外傷、上気道感染、胃腸障害が約30%に認められた。臨床診断にあたっては、臨床各科の医師と、理療士、心理判定士、ケースワーカーなどのパラメディカルスタッフからなる綜合診断チームが新来愚老の診察にあたって、綜合的な診断と専門的な指示が与えられるように考慮されている。心身障害児の成因分析をパイロット・スタディーとして試みたが、大半の症舳こ妊娠分娩或いは新生児期に何等かの異常を認めた。このことは、このような不幸な子供を生まないようにするためには、妊娠分娩時の母子の健康管理が遺伝の問題と共にいかに大切であるかを示すものである。今后、この方面の基礎的研究が各機関で進められると同時に、患者・保因老の早期発見、結婚出産に対する適切な指導を行うために、各地にこのような心身障害児のためのセンターが作られるように切望すると同時に、人類遺缶学が基礎医学のみでなく、臨床医学の一部としても、卒後研修の中にとり入れられることを切望する。
著者
近藤 元治 池崎 稔 今西 仁 西垣 逸郎 細川 計明 増田 正典
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.519-524,539, 1976
被引用文献数
1

慢性肝炎および肝硬変患者につき, 低温で分離した血清とヘパリン血漿の補体価を検討し, 120名中8名に血清補体の著明な低下と血漿補体は正常であるという補体の解離現象を認めた.これは患者血清を37℃で分離の後0-11℃に移すと補体の低下がみられることから, 血液凝固に際して現れた因子が, おそらくproteolyticな作用で低温で補体のclassical pathwayを活性化したと考えられた.この現象は, Gjφnnaessの報告したVII因子のcold activationと類似した現象であるが, Trasylol, SBTIが補体の活性化を防止し得なかった点で多少異なるようである.またplasminの関与は, trans-AMCHAがほとんど効果を示さないことから否定的である.vitamin Eおよびprednisoloneに効果がみられたことは, その機序は不明であるが, 今後の研究の方向づけに大いに重要であると考えられた.