著者
細木 大輔 中村 勝衛 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.474-483, 2007 (Released:2008-09-05)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

本研究では,栃木県の岩盤切土法面において周辺植生から侵入する植物体で法面を緑化する自然侵入促進工を実験的に施工した。ネットの違い,及び施肥の有無を条件として設定し,植物の侵入・定着に関して5 年間調査を行って効果を検証した。被覆率は,施工後1 年目から施肥した実験区で高く,無施肥の実験区および無施工区との差は大きかった。施工後5 年目の値は,施肥した実験区で40% 以上であるのに対して,それ以外では10% 前後であった。この結果から,施肥した実験区のみが緑化されたと言え,自然侵入促進工では施肥が必要であることが明らかとなった。最も良く被覆された区画は,目合い12.0 mm×20.0 mm のネットを張り,肥料袋を用いて施肥した区画であり,この方法が最も有効であると結論づけられた。施工後5 年目のこの実験区の被覆率は62±15%,群落高は1.0 m,出現種数は29 種/5m2,木本個体数は21.6 個体/m2であり,ススキ,リョウブ,ノキシノブなどの積算優占度が高かった。一方,シダ植物は,施肥した実験区では4~8 種が確認されたのに対して,それ以外ではまったく確認されなかったことから,緑化後初期におけるシダ植物の出現には施肥が有効であることが示唆された。
著者
細木 大輔 米村 惣太郎 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.412-422, 2004-02-28
被引用文献数
13 15

関東地方の東京都と栃木県,および山梨県において,森林表土中の土壌シードバンクの組成について調べて,緑化材料としての利用可能性について検討した。実生出現法による試験を行って土壌シードバンクの組成を調べた結果,いずれの場所の表土を緑化に用いた場合でも,自生種の優占する植物群落の形成が可能であると推察された。3地域の問で多くの共通種が確認され,自生種であるアオスゲ,オカトラノオ,ケスゲ,タチツボスミレなどの草本や,キブシ,コウゾ,コゴメウツギ,タラノキ,ヌルデなどの先駆性木本の種子が種数,個数ともに多く含まれていることが確認された。以上のことから,本研究の対象とした地域においては,森林表土を用いて緑化を行うことで,先駆性木本を多く含む種構成の類似した植物群落を形成させられることが示唆された。一方,実生出現法による試験を1年以上続けた後の表土中には,休眠状態で生存している埋土種子はほとんど存在しないことが確かめられた。また,森林の土壌シードバンクの緑化材料としての利用可能性は,野外で春先から実生出現法による試験を行うことで,短期間で調べられることが明らかとなった。
著者
柏木 亨 細木 大輔 松江 正彦
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.9-14, 2008-08-31
参考文献数
9
被引用文献数
3 3 4

クロバナエンジュ(<I>Amoerpha fruticosa</I> L.)が優占する法面を他種が優占する植生に積極的に遷移させるためには,萌芽力が旺盛であるクロバナエンジュを効率的に除去する技術が必要である。そこで本研究では,クロバナエンジュを植生管理する実験区を設けて,クロバナエンジュの枯死数や萌芽量などについて測定して,処理の効果を検証した。実験区は,1) 春期に1回伐採した区,2) 春期と夏期の2回伐採した区,3) 春期に1回伐採後に薬剤処理した区,4) 夏期に1回伐採後に薬剤処理した区,5) 春期と夏期の2回伐採後に薬剤処理した区を設置した。その結果,4) と5) の処理を行った実験区では,クロバナエンジュの個体を約6割枯死させ,他の実験区よりも萌芽量を少なくできたことから,夏期に1回伐採して薬剤処理を行う方法が効率的であることが明らかとなった。