著者
佐藤 暁子 米村 惣太郎 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.32-37, 2006-08-31
被引用文献数
4

生態的回廊に関する研究は,回廊の設置や設置直後のモニタリング事例の紹介が多いが,生育環境における効果は長期的観点から検証することが必要である。本研究では,ニホンリスの生息地において,生態的回廊としてのエコブリッジの効果を把握するために,設置から8年経つエコブリッジを対象とし,ニホンリスの生息状況と生息環境およびビデオカメラを用いたエコブリッジの利用状況を調査した。その結果,エコブリッジは8年経過後も日常的移動・季節的移動のための回廊として利用されており,生態的回廊として機能していたことが明らかとなった。また,長期にわたり利用され続けていたことから,この地域のリス個体群の消滅を回避していると推測された。
著者
石田 敢 亀山 章 高柳 敦 若生 謙二
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.19-24, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

日本人の動物観をとらえるために, 動物に対する態度の類型化を行った。 動物に対する態度は, 動物に関する職業や運動についている専門家が最も極端なものをもっていると考えられることから, 専門家に対するヒアリング調査とアンケート調査を実施することによって, 日本人の動物観の極限としての輪郭の把握を試みた。この調査はS. ケラートがアメリカ人に対して行った調査と同様の方法で行ったが, 審美的態度については日本人とアメリカ人とでは内容が異なることが明らかにされた。 また, 日本の専門家は自然主義的態度と生態学的態度を強くもっている者が多いことが明らかにされた。
著者
亀山 章
出版者
日本造園学会
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.8-9, 2011 (Released:2012-12-03)
著者
亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
緑化工技術 (ISSN:03865223)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.36-42, 1978-02-25 (Released:2011-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4
著者
高柳 敦 若生 謙二 石田 敢 亀山 章
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.25-30, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1 3

日本人の動物観をとらえるために, 動物に対する態度の類型化の調査をもとにして, アンケートによる全国調査を行った。 アンケートの設問は, S.ケラートがアメリカ人に対して行った同様な調査の設問を日本人に適するような内容に改めて用いた。日本人の動物観の特徴を動物に対する態度からみると, 審美的態度がもっとも高く, ついで宿神論的態度と倫理的度が高い。 このことから動物に対して心理的・情緒的態度が強いことがわかる。 また, 自然主義的態度や生態学的態度などの客観的・論理的態度は相対的に少なく, 実用的態度や支配者的態度などの動物を即物的に扱おうとする態度は少ないことが明らかにされた。
著者
細木 大輔 中村 勝衛 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.474-483, 2007 (Released:2008-09-05)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

本研究では,栃木県の岩盤切土法面において周辺植生から侵入する植物体で法面を緑化する自然侵入促進工を実験的に施工した。ネットの違い,及び施肥の有無を条件として設定し,植物の侵入・定着に関して5 年間調査を行って効果を検証した。被覆率は,施工後1 年目から施肥した実験区で高く,無施肥の実験区および無施工区との差は大きかった。施工後5 年目の値は,施肥した実験区で40% 以上であるのに対して,それ以外では10% 前後であった。この結果から,施肥した実験区のみが緑化されたと言え,自然侵入促進工では施肥が必要であることが明らかとなった。最も良く被覆された区画は,目合い12.0 mm×20.0 mm のネットを張り,肥料袋を用いて施肥した区画であり,この方法が最も有効であると結論づけられた。施工後5 年目のこの実験区の被覆率は62±15%,群落高は1.0 m,出現種数は29 種/5m2,木本個体数は21.6 個体/m2であり,ススキ,リョウブ,ノキシノブなどの積算優占度が高かった。一方,シダ植物は,施肥した実験区では4~8 種が確認されたのに対して,それ以外ではまったく確認されなかったことから,緑化後初期におけるシダ植物の出現には施肥が有効であることが示唆された。
著者
細木 大輔 米村 惣太郎 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.412-422, 2004-02-28
被引用文献数
13 15

関東地方の東京都と栃木県,および山梨県において,森林表土中の土壌シードバンクの組成について調べて,緑化材料としての利用可能性について検討した。実生出現法による試験を行って土壌シードバンクの組成を調べた結果,いずれの場所の表土を緑化に用いた場合でも,自生種の優占する植物群落の形成が可能であると推察された。3地域の問で多くの共通種が確認され,自生種であるアオスゲ,オカトラノオ,ケスゲ,タチツボスミレなどの草本や,キブシ,コウゾ,コゴメウツギ,タラノキ,ヌルデなどの先駆性木本の種子が種数,個数ともに多く含まれていることが確認された。以上のことから,本研究の対象とした地域においては,森林表土を用いて緑化を行うことで,先駆性木本を多く含む種構成の類似した植物群落を形成させられることが示唆された。一方,実生出現法による試験を1年以上続けた後の表土中には,休眠状態で生存している埋土種子はほとんど存在しないことが確かめられた。また,森林の土壌シードバンクの緑化材料としての利用可能性は,野外で春先から実生出現法による試験を行うことで,短期間で調べられることが明らかとなった。
著者
吉永 知恵美 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.44-49, 2001-08
被引用文献数
11 10

近年, 都市において分布拡大しているトウネズミモチ(Ligustrum lucidum)について, 東京都内を中心に分布の実態調査を行い, 分布拡大の要因になると考えられる種の生活史の調査を行った。分布の実態調査では, トウネズミモチは1960年代から都市部の都市公園を中心として大量に植栽され, さらに都市近郊でも植栽されたことと, 1970年代以降, 実生による繁殖が著しくなり, 都市部から都市近郊の各地で分布拡大したことが明らかにされた。生活史の調査では, トウネズミモチの生活史の特性が, 都市環境に適応しやすいものであることが明らかにされた。以上のことから, トウネズミモチが都市において著しく分布を拡大させた主要な要因は, 種の生活史が都市環境に対して適応しやすいものであることと, そのような適応しやすい種であるトウネズミモチを東京都内に大量に植栽したことであると考察された。