著者
関 泰一郎 細野 崇 増澤・尾崎 依 三浦 徳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

血栓症は、がんと並ぶわが国の死亡原因であり、動脈硬化を基盤として発症する。動脈硬化は、脂質の摂取量の増加により促進されるが、近年、腸内細菌の関与が注目されている。赤身肉、乳製品などに豊富に含まれているコリンは、腸内細菌により代謝され、生成したトリメチルアミンが肝臓のフラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)によりトリメチルアミンNオキシド(TMAO)に変換される。TMAOは動脈硬化を促進する可能性が示唆されているが、その詳細は不明である。本研究では、TMAOの生成を抑制する機能性食品成分を探索し、またこれまでに解明されていないTMAOの血栓形成促進機構を明らかにする。
著者
細野 崇
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-13, 2020 (Released:2020-02-17)
参考文献数
15

2018年の日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%であり, 2040年には35.3%になると推計されている。加齢は糖尿病, 運動機能障害, 動脈硬化, 骨粗鬆症, がん, 認知症などの様々な老化関連疾患の危険因子であること, これらの病気は発症までに長い年月がかかることから, 病気の予防法の確立が重要である。これまでに我々は, 食品因子を用いてがんと認知症の予防に関する研究を行ってきた。がん予防に関する研究では, ガーリック香気成分のジアリルトリスルフィドが大腸がん細胞の細胞周期の停止を介して細胞増殖を抑制することや, 肝臓の薬物代謝酵素の活性調節を介して発がん物質などの代謝を促進することを見出してきた。一方, 認知症予防に関する研究では, 加齢に伴って減少する多価不飽和脂肪酸の摂取が, アルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することを報告した。以上の成績から, 食品因子の利用はがんやアルツハイマー病などの老化関連疾患を予防することが可能であることを示唆しており, 健康寿命の延伸への応用が期待される。